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第15話

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 その後、第二時限の数学、第三時限の国語と、特に問題もなく授業は進んでいき、その合間合間の休み時間で、少しずつルディに話しかける子も出てきた。

 ルディはさっき私が考えた『マカイの貴族の子供』という設定を元に完璧なコミュニケーションをとり、ごく自然にクラスに溶け込んでいった。この世界の学校で授業を受けるのは初めてのはずだったが、中学一年生レベルの数学や国語ならまったく苦戦するようなこともなく、ルディの生来の頭の良さに、私は素直に感心した。

 それよりも圧巻だったのは、第四時限の体育である。

 本日の男子の種目は、グラウンドで試合形式のサッカーをすることだった。うちのクラスにはサッカー部に所属している男子が6人もいるので、サッカーが種目の日はいつも、その6人の独壇場になってしまうのに、今日は違った。

 ルディが、テレビで繰り広げられるプロの試合でしか見たことのないような華麗な動きで、サッカー部の6人を抜き去り、軽々とシュートを決めてしまったのである。皆、驚きのあまりあんぐりと口を開け、体育の担当である佐川先生は、わが目を疑い眼科の予約をとり始めた。

 ……と、そこまでは良かったけど、その後が少し……いや、かなりまずかった。サッカー部の6人のうちの一人で、リーダー格の勝木くんが「お前、向こうの国でクラブチームか何かに入ってるのか?」と聞いてきて、ルディは平然とこう言ってしまったのだ。

「いや、『さっかー』とやらをやるのは今日が初めてだ。思ったより面白いな」

 これは、本当にまずい回答だった。魔界人であるルディがサッカーをやるのが初めてなのは普通のことだし、ルディにはもちろん悪気なんてない。しかし、勝木くんからしてみれば、あれだけ見事なプレイをされて、それなのに『サッカーやるのは今日が初めて』だなんて言われたら、馬鹿にされてると思うのが当然だ。

 他の皆がルディの超人的な活躍を褒め称えるなか、勝木くんだけが、どこか暗い眼差しでルディを見ているのに、私は気づいてしまった。

 言葉でこの気持ちを説明するのはとても難しいけど、誰かにルディを悪く思われるのは凄く嫌だったので、いっそのこと、ルディがこの世界の人間じゃないことを話してしまおうかとも思った。でもすぐに、ルディが『余はこれでも、魔界の者に補足されぬようひっそりと生きておる』と言っていたことを思い出し、どうするか真剣に悩む。

 私が不用意に発した言葉が原因で、ルディが魔界の人に補足――つまり、見つかったらどうなるんだろう? そう思うと、やっぱり軽々しい行動をとるべきじゃないと思い、結局、何も言わないことにした。
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