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第4話

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 真剣な私とは真逆に、ルディはあっけらかんとした様子で言う。

「稲葉史郎は、娘の稲葉加奈が何かに悩み、以前の明るさをなくしているが、その理由を話してくれないと言っていたぞ。仕事で海外に行ってばかりで信頼されなくなったのか、娘に悩みも打ち明けてもらえないほど疎遠になってしまったのかもしれないと嘆いてもいたな」

「べ、別に、お父さんのことを信頼してないわけじゃないよ。でも、親子だからって、なんでも打ち明けられるものじゃないでしょ」

「まあ、それもそうだな」

「それより、お父さんが私を心配してるからって、なんであなたがうちに来るわけ?」

「話せば長くなるが、長い話は正直面倒だな」

「えぇ……」

「よし、要点だけを話そう。魔界から人間界に来ていた余は、ちょっとしたきっかけで稲葉史郎と仲良くなり、悩みを相談し合う友となった。そして今、稲葉史郎の頼みで、そなたの抱える苦しみを取り除くためにここに来たというわけだ。ふふふ、どうだ? 簡潔でわかりやすい良い説明だろう。自分で言うのもなんだが」

 本当に、自分で言っちゃうのはどうかと思うけど、確かに簡潔でわかりやすい説明ではあった。でも……

「理屈は分かったけど、お母さんはその説明で納得したの? 普通、魔界がどうとか人間界がどうとか言われて、大人は『はい、そうですか』って、すんなり受け入れたりしないと思うんだけど。いや、子供だってそう素直には受け入れられないけどさ」

「うむ。そなたの言うとおりだ。懇切丁寧に説明したのだが、稲葉美咲の反応は『は?』という感じだった。それでも一応、稲葉史郎に連絡を取って確認しようとしていたが、あやつは『すまほ』も『ぱそこん』も嫌いで、持ち歩いていないからな。連絡が取れず、ますます疑わしい目で見られて、余はちょっと傷ついたぞ」

「で、どうなったの?」

「最後の手段として、魔法を使った。余の言っていることを素直に信じさせる『心浸透の術』だ。それで稲葉美咲はすべてを受け入れたというわけだ」

「言っていることを素直に信じさせる魔法って……もしかして洗脳!?」

「人聞きの悪いことを申すな。『心浸透の術』は強引な洗脳とは違う。理解しがたいことを理解する助けとなる魔法だ。術の対象者が、本気で拒絶していたら術にかかることはない。稲葉美咲は余を疑いつつも、余が稲葉史郎の名を出し、そなたのために来たと言っていたことから、心の底では余を信じたかったのだろう」

 そこで私は、今朝感じた『頭の中のスイッチがじわじわと切り替えられるような変な感覚』を思い出していた。そして、これ以上ないほどの疑いの眼差しで、ルディに問いかける。

「……ねえ。その『心浸透の術』、もしかして私にも使った?」

「それよりも、この『てれびどらま』は面白いな。ははは」

「話をそらさないで!」

「正直に言っても、怒らぬか?」

「私にも洗脳みたいな術を使ってたなら怒る」

「だから、洗脳ではないと言っているではないか。これだから人間界の者は魔法に対する理解が迷信じみていて困る。一度の説明ですべてを理解したのは純真で柔軟な思考を持つ稲葉史郎くらいだ」

「で、使ったの? 使ってないの?」
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