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第23話

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 お姉様は相変わらずふらつき、何度か『ひっく』『ひっく』としゃっくりをしながら、愉快そうに笑った。……それは、楽しげでありながら、寂しげでもある、不思議な笑みだった。

「どう? これでやる気になった? 言っておくけど、今のはただのあいさつ代わりよ。ふふ、他の魔法じゃあんたにかなわないけど、攻撃魔法に関してだけなら、私はあんたと互角以上にやり合うことができる。わかったら、ゴチャゴチャと余計なことを言ってないで、戦いに集中しなさい」

「そうした方がいいみたいね」

 私は短くそう言うと、もう、お姉様を説得することを諦めた。お姉様の言う通り、戦いに集中しなければ、本当にやられてしまうと思ったからだ。

 そして、本格的な戦いが始まった。

 強力な攻撃魔法が玉座の間を飛び交い、床が燃え、柱には亀裂が走り、窓ガラスは全て粉々に砕け散った。これほどの戦いが、あと数十分続けば、王宮そのものが倒壊してしまうだろう。

 だが、戦いはそれほど長い時間は続かなかった。

 やはりと言うべきか、深酒のせいで、お姉様にはスタミナがない。疲れてきたお姉様の隙を突き、私は最高の攻撃魔法を食らわせることに成功した。……それで、案外あっけなく、戦いは終わった。

 お姉様は、致命傷を負っていた。

 手加減をする余裕は、まったく無かった。お姉様の攻撃魔法は、恐るべき冴えだったからだ。少なくとも、私がこれまで戦った中では、最強の相手である。下手に力を抜いていたら、やられていたのはこっちの方だったに違いない。

 私は、せめてお姉様の最後の言葉を聞いてあげようと思い、倒れ伏したお姉様のそばに膝をついた。

 しかし、お姉様の虚ろな瞳には、もはや私の姿など映っていないようだった。お姉様はここではないどこかを見るような目で、一人、自分自身に言い聞かせるみたいに、途切れ途切れに言葉を紡いでいる。

「ああ……これでやっと、退屈な人生が終わる……大好きなルーがいなくなって……そして、大好きなお父様もいなくなって……こんな世界で、生きてたってしょうがないもの……」

 それだけ言うと、お姉様は、こと切れた。

 ……お姉様は、何が言いたかったのだろう? そして、何がしたかったのだろう? 私には結局、最後までランセリアお姉様の気持ちを理解することができなかった。
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