姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】

小平ニコ

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第16話

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 かくして、呪われた流刑地であったトラウゼンは、あっという間に過ごしやすい場所となった。もう地震が起こることもないので、ほとんどの人々はテント暮らしをやめ、簡素ながらも家を建築し始めた。

 厳しい環境で鍛えられたトラウゼンの住人の体力は凄まじく、彼らは朝も夜もなく働き、たったの一週間で多くの家が完成し、テントだらけだったトラウゼンの街並みは、一気に文明的なものに変化した。

 そして、地震が起こらなくなったことで、トラウゼンを訪れる行商人の数も増えた。せっかくなので、私が掘り進めた穴から採取できた地下資源を使って交易を開始すると、それらは莫大な利益を生み、トラウゼンは見る見るうちに発展していった。





 そんなこんなで、私がイルスタンを追放されてから一ヶ月が経った。

 私は今もトラウゼンにいて、相変わらずルフレンスのテントで暮らしている。トラウゼンも発展し、非常に住みやすい土地になったので、ますますもってここを出ていく理由がないからだ。

 いつものようにルフレンスと朝食を食べ、その後かたづけの最中、私は何気なくルフレンスに問いかける。

「ねえ、ルー。あなたも他の人たちみたいに、家を建てなくていいの?」

 ルフレンスは食器を洗いながら、私に微笑みかけた。

「いずれは建てるつもりですが、当分はこのままでいいと思っています。このテントはしっかりとした作りですから、基本的に住み心地は普通の家と変わりませんからね」

「それもそうね。涼しいし、給湯設備もあるし、わざわざ新しい家を作ることもないかもね」

「何より、今は、トラウゼンの皆が一斉に家を建てていますから、建材が不足しがちです。現在の住居に不満のない者は、なるべく他の者に建材を回してあげるべきでしょう。私が家を建てる番は、もっとずっと後でいいんです」

「なるほどねぇ。さすがはこの辺りの顔役。皆のこと、ちゃんと考えてるのね、すごいわ」

「私にできることは、これくらいですから。……本当にすごいのはあなたです、リーリエル様。私も、魔法の能力にはそこそこの自信がありましたが、あなたの使う魔法は、我々凡人とは比較にもならない。まさに、いにしえの伝承に語られる聖女の奇跡そのものです」

「聖女の奇跡だなんて、比喩にしたって、ちょっとおおげさね」

「いえ、あなたはこのトラウゼンにとって、比喩ではなく、本物の聖女様ですよ。皆、感謝しています。もちろん、私も」

 本物の聖女様とまで言われると、不遜な私も、さすがに少し照れてしまう。なんとなく気恥ずかしくなった私は、ルフレンスと肩を並べ、黙々とお皿を洗い続けた。
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