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第104話
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「ジェロームが心を許し、参謀総長となった今も警護を続けている女性。つまり、あなたのことよ、マリヤちゃん。二人きりの時に、あなたが破壊の力を使えば、たやすくジェロームを……」
「やめてください、そんな話!」
私は耳を塞いで叫んでいた。
悲しかった。
ジェロームがエリウッドに反旗を翻そうとしていることも。
ジェロームを止めるために、彼を殺すことができるのが私だけであることも。
……恐らくはリザベルトが、ジェロームを殺す『手段』にするために、私に実の母親のように接し、優しくしていたのであろうことも。
リザベルトは小さく息を吐き、優しく、諭すように言う。
「ごめんなさいね、嫌な話をして。でも、誤解しないでほしいんだけど、あなたと親しくしたのは、単に暗殺の手駒にするためじゃないわよ。パーミルの聖女と祭り上げられている異世界からの来訪者が、どんな人格で、どのくらいこの国のことを思ってくれているか、それを見極めたかったのもあるの」
「…………」
「少なくない時間を一緒に過ごした結果、あなたは心優しく誠実で、エリウッドにも好意を持っていて、何より、自分を受け入れてくれたこのパーミル王国を大切に思ってくれていることがよく分かったわ。だから、誤魔化したりせずにすべてを話そうと思ったの。あなたならきっと、正しい決断をしてくれると思うから」
「……正しい決断って、ジェロームを暗殺するってことですか?」
「そうよ」
「嫌です。私、殺し屋じゃない」
「そうね。でも、わたくしだって殺し屋じゃないけど、大切な国を守るため、多くの人を殺してきたわ。人の上に立つ者には、冷酷な決断をしなければならない責任があるから」
「大切な国を守る……人の上に立つ者の責任……」
「少し、わたくし自身の話をしましょうか。そして、思いを巡らせてほしい。自分が今いる立場と、その責任について」
「…………」
「前に言ったでしょ? 『わたくし、家柄があまり良くない』って。あれ、別にあなたの気を引くための嘘じゃなくってよ。わたくしはね、あのオルソン聖王国の最下級貴族の生まれなの。マリヤちゃん、あなたも、あの国の差別意識の強さは、よく知ってるわよね?」
私は小さく頷いた。
「わたくしの髪、少し色が濃いでしょう? オルソンでは、色素の薄い金髪こそが高貴な色であるとされ、色素の濃い金髪は下品な色として蔑まれるの。わたくしはこの髪色のせいで、子供の頃から徹底的に罵倒されてきたわ。父や母までわたくしの髪を汚い汚いと言うので、わたくしは自分のことを価値のないゴミだと思うようになった」
「やめてください、そんな話!」
私は耳を塞いで叫んでいた。
悲しかった。
ジェロームがエリウッドに反旗を翻そうとしていることも。
ジェロームを止めるために、彼を殺すことができるのが私だけであることも。
……恐らくはリザベルトが、ジェロームを殺す『手段』にするために、私に実の母親のように接し、優しくしていたのであろうことも。
リザベルトは小さく息を吐き、優しく、諭すように言う。
「ごめんなさいね、嫌な話をして。でも、誤解しないでほしいんだけど、あなたと親しくしたのは、単に暗殺の手駒にするためじゃないわよ。パーミルの聖女と祭り上げられている異世界からの来訪者が、どんな人格で、どのくらいこの国のことを思ってくれているか、それを見極めたかったのもあるの」
「…………」
「少なくない時間を一緒に過ごした結果、あなたは心優しく誠実で、エリウッドにも好意を持っていて、何より、自分を受け入れてくれたこのパーミル王国を大切に思ってくれていることがよく分かったわ。だから、誤魔化したりせずにすべてを話そうと思ったの。あなたならきっと、正しい決断をしてくれると思うから」
「……正しい決断って、ジェロームを暗殺するってことですか?」
「そうよ」
「嫌です。私、殺し屋じゃない」
「そうね。でも、わたくしだって殺し屋じゃないけど、大切な国を守るため、多くの人を殺してきたわ。人の上に立つ者には、冷酷な決断をしなければならない責任があるから」
「大切な国を守る……人の上に立つ者の責任……」
「少し、わたくし自身の話をしましょうか。そして、思いを巡らせてほしい。自分が今いる立場と、その責任について」
「…………」
「前に言ったでしょ? 『わたくし、家柄があまり良くない』って。あれ、別にあなたの気を引くための嘘じゃなくってよ。わたくしはね、あのオルソン聖王国の最下級貴族の生まれなの。マリヤちゃん、あなたも、あの国の差別意識の強さは、よく知ってるわよね?」
私は小さく頷いた。
「わたくしの髪、少し色が濃いでしょう? オルソンでは、色素の薄い金髪こそが高貴な色であるとされ、色素の濃い金髪は下品な色として蔑まれるの。わたくしはこの髪色のせいで、子供の頃から徹底的に罵倒されてきたわ。父や母までわたくしの髪を汚い汚いと言うので、わたくしは自分のことを価値のないゴミだと思うようになった」
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