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第75話
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私の感情は、表情にありありと出ているはずだが、オルソン聖王国の王子はそれに気が付いていないのか、それとも気が付いていてもどうでもいいのか、意気揚々と語り続ける。
「あなたを追い出してから、何度か聖女召喚の儀をおこなったのですが、いや、やはり異世界から人間を連れてくるというのはなかなか難しいものでしてね。どうにも上手くいかないんですよ。まあ、前々回に成功したのも十年前ですからね。その時は、あなたのおぞましい黒髪と違い、輝くような金髪の美しい聖女が……」
「おい、いい加減に黙れ、おしゃべり野郎」
ドスの利いた声で、オルソン聖王国の王子の戯言は制止された。
声の主は、エリウッドだった。
彼の顔を見て、驚く。
赤い。
ビックリするくらい、赤い。
色的には、ほとんどトマトに近い赤さだ。そういえば、さっきから侍女につがれたワインをもの凄いペースで飲んでたけど、この人もしかして、あんまりお酒に強くないんじゃ……
私はエリウッドの肩に触れ、おずおずと言う。
「あの、エリウッド様……? ちょっと飲みすぎなんじゃ……? かなり酔っぱらってるみたいですし……」
「酔ってない。俺は今絶好調だ。ひっく」
「確かにテンションが上がってて、絶好調と言えなくもないですけど。とにかくこれ以上の飲酒は……」
「わかっている。こんな胸糞悪い国で出される酒も料理も、もうひとかけらだって口にするものか。ひっく」
そう言ってエリウッドは、なんと、テーブルの上に乗りあがった。唖然とする私や、他の人たちをよそに、のしのしと歩いて、オルソン聖王国の王子の眼前まで行く。オルソン聖王国の王子は、最初は呆気に取られていたものの、これ以上ない侮蔑の視線でエリウッドを見て、冷笑を浮かべた。
「ふふ、これはこれは……参りましたね。国王は病弱で、その後を継ぐことになっている王子が酒乱とは。遠縁の親戚ということで、今まではなんとかつきあいを続けてきましたが、これからはそのつきあい方を、少し考え直したほうががいいかもしれませんね」
侮蔑の視線を向けているのは、エリウッドも同じだった。彼はテーブルの上からオルソン聖王国の王子を見下ろし、酔っている割には淀みのない口調で言葉を紡いでいく。
「それはこっちの台詞だ。俺はパーミルを属国扱いするお前たちのことが、前々から気に入らなかった。だがそれでも、オルソンとつきあいを続けることが、パーミル王国のためになると思い、頭を垂れ続けてきた。……しかしお前は、大国の権威を笠に着て、今やパーミルの守護の象徴であるマリヤを奪い取ろうとしている」
「あなたを追い出してから、何度か聖女召喚の儀をおこなったのですが、いや、やはり異世界から人間を連れてくるというのはなかなか難しいものでしてね。どうにも上手くいかないんですよ。まあ、前々回に成功したのも十年前ですからね。その時は、あなたのおぞましい黒髪と違い、輝くような金髪の美しい聖女が……」
「おい、いい加減に黙れ、おしゃべり野郎」
ドスの利いた声で、オルソン聖王国の王子の戯言は制止された。
声の主は、エリウッドだった。
彼の顔を見て、驚く。
赤い。
ビックリするくらい、赤い。
色的には、ほとんどトマトに近い赤さだ。そういえば、さっきから侍女につがれたワインをもの凄いペースで飲んでたけど、この人もしかして、あんまりお酒に強くないんじゃ……
私はエリウッドの肩に触れ、おずおずと言う。
「あの、エリウッド様……? ちょっと飲みすぎなんじゃ……? かなり酔っぱらってるみたいですし……」
「酔ってない。俺は今絶好調だ。ひっく」
「確かにテンションが上がってて、絶好調と言えなくもないですけど。とにかくこれ以上の飲酒は……」
「わかっている。こんな胸糞悪い国で出される酒も料理も、もうひとかけらだって口にするものか。ひっく」
そう言ってエリウッドは、なんと、テーブルの上に乗りあがった。唖然とする私や、他の人たちをよそに、のしのしと歩いて、オルソン聖王国の王子の眼前まで行く。オルソン聖王国の王子は、最初は呆気に取られていたものの、これ以上ない侮蔑の視線でエリウッドを見て、冷笑を浮かべた。
「ふふ、これはこれは……参りましたね。国王は病弱で、その後を継ぐことになっている王子が酒乱とは。遠縁の親戚ということで、今まではなんとかつきあいを続けてきましたが、これからはそのつきあい方を、少し考え直したほうががいいかもしれませんね」
侮蔑の視線を向けているのは、エリウッドも同じだった。彼はテーブルの上からオルソン聖王国の王子を見下ろし、酔っている割には淀みのない口調で言葉を紡いでいく。
「それはこっちの台詞だ。俺はパーミルを属国扱いするお前たちのことが、前々から気に入らなかった。だがそれでも、オルソンとつきあいを続けることが、パーミル王国のためになると思い、頭を垂れ続けてきた。……しかしお前は、大国の権威を笠に着て、今やパーミルの守護の象徴であるマリヤを奪い取ろうとしている」
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