黒聖女の成り上がり~髪が黒いだけで国から追放されたので、隣の国で聖女やります~【完結】

小平ニコ

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第57話

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 しかし、『気高い』とまで言われて、なんだか無性に恥ずかしくなった私は、あえてからかうような言葉を返してしまう。

「ジェロームさん、あなた、初めて会ったときは寡黙な人だと思ったけど、意外とお喋りなのね」

「これが素です。あの時は、私以上にお喋りなグラディス姉上を諫めるため、これでも気を張っていたんですよ。その努力も虚しく、姉上はあなたにあれこれと喋り、あっという間に素顔まで晒してしまいましたが」

「そういえば、今日はグラディスさんは?」

「近衛騎士団の団長として、任務を果たしています」

「任務って? 具体的には?」

「王太子殿下の警護、魔物の探索と討伐、そして新米騎士たちの訓練、この三つでしょうか。ああ見えて、忙しい方なのですよ」

「そうなんだ……ふふっ」

「何か面白かったですか?」

「ううん、ごめんなさい。今日は本当に、聞いたことを全部、素直に話してくれるんだなと思って。あなたって、もっと冷たい人だと思ってた」

「今さっき『これが素』だと言ったでしょう。私はもともと素直な人間ですよ。それに、これからのことも考えて、あなたと積極的にコミュニケーションをとっておいた方がいいと思いまして」

「これからのことって? どういうこと?」

 話しながらも歩き続ける私たち。
 いつの間にか、王宮の敷地に入っていた。

 美しく整備された前庭の先には、正門がそびえ立っており、二人の屈強な門番が槍を持って、直立不動の姿勢をとっていた。ジェロームが彼らに向かって片手をあげると、二人の門番は頭を下げ、正門を開く。

 正門をくぐりながら、ジェロームは黒いフードをはずして、話を続けた。

「あなたはこのパーミルにとって、王族に次いで重要な人物となります。それ故に、これからは常に警護がつくことになります。いかにあなたの破壊の力が強力でも、寝込みを襲われてはどうしようもありませんからね」

「はぁ、なるほど……」

「そして、あなたの警護を担当するのは恐らく、近衛騎士団副団長の私でしょう。ですからこうして、親睦を深めようとしているのです」

「えっ、ちょっと待って。こういうのって、普通は同性の人が警護につくんじゃないの? ほら、夜とか、寝室を守ってもらうわけになるんだから……」

「おっしゃることはわかりますが、そういうわけにはまいりません。近衛騎士団に女性は数えるほどしかいませんし、皆、まだ半人前です。とてもではありませんが、あなたの警護を任せられはしない」
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