黒聖女の成り上がり~髪が黒いだけで国から追放されたので、隣の国で聖女やります~【完結】

小平ニコ

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第47話

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 私も時計を見る。

 えっと、出発したのが確か、朝の9時過ぎだったから、馬車での移動、洞窟内の探索、そして魔人ゴーファとの戦いも含めて、だいたい3時間くらいかかったのね。

 とにもかくにも、大きな問題もなく魔人討伐が完了してよかったわ。

「これで、街道を行く人々が襲われることもなくなるでしょうし、一件落着ですね」

「ああ。だが、最近魔物たちの動きが妙に活発でな。またいつ、ゴーファのような魔人が出没するか分からん。常に気を配り、もう二度と、我が臣民に被害が出ないようにしないとな」

「そうですね。ああ、それにしても、お腹すいたなあ」

 朝に食べたエネルギースフィアの腹持ちは抜群であり、今の今まで空腹感を覚えることもなかったが、魔人討伐が終わってホッとしたのもあり、急にお腹がすいてきた。

 物欲しげな顔でお腹をさする私の様子がおかしかったのか、エリウッドは小さく微笑んだ。

「激しい戦いだったから、俺もかなり腹が減った。お前と一緒に食事でもとりたいところだが、城に戻ったら、まずは大臣連中と、午後の定例政策会議をおこなわなければならない。マリヤよ、お前は疲れただろう。午後は自由に過ごし、心と体を休めるといい」

「はい、そうさせてもらいます。……それにしても、お腹がすいてても、食事の前に会議をしなきゃいけないなんて、王子様って、大変なんですね」

「それが、人の上に立つ者の責任というものだ」

「でも、今日は魔人討伐で疲れてるんだし、今だけは、誰かに代わってもらうとか、できないんですか?」

「もちろん、できないことはない。しかし俺は、軽々しく責任を放棄するような真似はしたくないのだ」

 ふうん。しっかりしてるなあ。
 エリウッドの責任感に感心しながら、私はちらりと窓の外を見た。

 馬車はスピードを落とし、パーミル市内の大通りをゆっくりと走っている。この調子なら、あと十分程度で王宮に到着するだろう。そろそろ降りる準備をしておかないと。

 そう思い、襟を正す私に、エリウッドはささやかなため息を漏らし、呟いた。

「……しかし、マリヤよ。敬語はやめろと何度も言ったのに、結局、言葉遣いをあらためてはくれなかったな」

「い、いや~、そう言われても、やっぱり王子様に気安い口をきくのはちょっと……」

「ほら、それだ。その『王子様』というのも気に入らん。だが、ゴーファとの戦いの最中、一度だけ『エリウッド』と呼び捨てにしたな。あれは嬉しかったぞ」
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