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第12話(シャノーラ視点)
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その願いが天に届いたのか、三日後の夜、捜索隊が、隣の国で食べ歩きグルメツアーに参加しているお姉様を発見した。
お姉様は最初、何度『聖女様ですよね?』と尋ねられても、カタコトで『ヒトチガイデス』と言い張っていたが、私がヘロヘロのフラフラで、もうギブアップ寸前であることを伝えられると、すぐにこの国まで戻って来てくれた。
そしてお姉様は、聖女になってから、たったの五日間でやせ細ってしまった私を見て、心配そうに目を細めた。
「シャノーラ、大丈夫? あなた、魔力の使い方のペース配分、昔から苦手だったものね。いくら強固な結界を作るためとはいえ、一気に力を放出しちゃ、駄目なのよ? こう、グ~ッと溜まってるやつを、カチッと固めるイメージで、それから、ジワ~ッってやってくのよ。わかる?」
さっぱりわかんない。
天才の説明は、感覚的すぎる。『グ~ッ』とか、『カチッ』とか、そんなあやふやな言葉で、すべてを理解し、天才と同じ事ができたなら、誰も苦労しない。
しかし、嬉しい。
お姉様が帰って来てくれて、本当に嬉しい。
安堵感から、意識がふっと遠くなる。
倒れかけた私を、お姉様は優しく抱き留めた。
「おっとっと、危ない危ない。シャノーラ、あなた、ほとんど寝てないんじゃない? もしかして、起きっぱなしで結界を維持してたの? 駄目よ、ちゃんと寝なきゃ。睡眠不足はお肌に悪いんだから。えっとね、寝ながら結界を維持するコツは、こう、夢の中で、フワフワ~ってなってる魔力を、モワッと広げてくって言うか……」
「お、お姉様、もう、『フワフワ~』とか、『モワッ』とか、そういうのいいから、わ、私の代わりに、結界を張って……今、意識が飛んじゃったから、結界が消えて、国が、無防備に……また、魔物が来て……国が、ほろんじゃう……」
必死な私とは正反対に、お姉様は、ケロッとした様子で言う。
「こんな、聖女に頼りきりで、自衛のための軍隊すらないしょぼい国なんて、別にほろんじゃってもよくない?」
近くで私たちの話を聞いていた侍女が、お姉様に同調して、笑った。
「あははっ! ですよね~! 私もこの国、色々おかしいと思ってたんですよ~! 一回きれいさっぱり無くなっちゃった方が、スッキリしていいかもしれませんね~」
「でしょでしょ? 破壊なくして、創造なし……古き国がほろぶとき……その残骸の中から、新たなる国が生まれる……これもまた、運命なのよ……」
「わあ、さすが聖女様、詩人ですね~。だいたい58点くらいの出来の詩です~」
お姉様は最初、何度『聖女様ですよね?』と尋ねられても、カタコトで『ヒトチガイデス』と言い張っていたが、私がヘロヘロのフラフラで、もうギブアップ寸前であることを伝えられると、すぐにこの国まで戻って来てくれた。
そしてお姉様は、聖女になってから、たったの五日間でやせ細ってしまった私を見て、心配そうに目を細めた。
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しかし、嬉しい。
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必死な私とは正反対に、お姉様は、ケロッとした様子で言う。
「こんな、聖女に頼りきりで、自衛のための軍隊すらないしょぼい国なんて、別にほろんじゃってもよくない?」
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「あははっ! ですよね~! 私もこの国、色々おかしいと思ってたんですよ~! 一回きれいさっぱり無くなっちゃった方が、スッキリしていいかもしれませんね~」
「でしょでしょ? 破壊なくして、創造なし……古き国がほろぶとき……その残骸の中から、新たなる国が生まれる……これもまた、運命なのよ……」
「わあ、さすが聖女様、詩人ですね~。だいたい58点くらいの出来の詩です~」
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