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第18話(ランディス視点)
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俺は、ルーパートの問いに答えるつもりはなかった。
代わりに、俺が今一番知りたいことを、直接尋ねる。
「……ルーパート。貴様が、アドレーラを傷つけたのか?」
「んん~? なんのことだ?」
「とぼけるな。アドレーラのうなじについていた、あの傷のことだ」
「うなじ……う~ん、う・な・じ……ねぇ……どうだったかなぁ~」
「答えろ!」
「くくく、そんなに怒鳴るなよ。怖くて漏らしそうだ。もしそうなったら、お前が僕のズボンを替えてくれるのかい? くくっ、くくくっ、嬉しいだろう? 下衆な平民程度が、高貴なる僕のお召し物を履き替えさせるなんて、身に余る名誉だからな」
ルーパートは大げさに肩をすくめ、人を見下した、嫌な笑顔で言う。
この、ふざけきった態度。
俺の疑念は、確信に変わった。
間違いない。
こいつだ。
こいつがやったんだな。
もう、証拠なんて必要ない。
ぶちのめしてやる。
俺はルーパートの胸ぐらをつかみ、奴の顔面に拳を叩き込もうとした。
「おぉっと、待て待て待て待て。まさか、その大きな拳で僕を殴る気か? やめた方がいい。すぐに衛兵がやって来て、お前は牢屋行きだ」
「知ったことか! 俺は、お前が許せない! ……お前の顔面を叩き潰せるなら、俺はこの後、どうなったって構わない!」
俺の剣幕に、ルーパートは少しだけ怯んだが、すぐにまた嫌な笑みを浮かべ、ペラペラと言葉を吐き出していく。
「い、威勢の良いことだ。だがなあ、お前が問題を起こして、一番困るのは誰だと思う? くくっ、あの、ドルフレッドのおやじだよ」
「なんだと?」
「考えてもみろ。お前はドルフレッドのおやじから貰った身分証でイズリウム家に入り込んだ。それで、僕に暴力を振るったら、お前だけではなく、正式な使用人ではない者に身分証を交付したドルフレッドも、責任を負わなければならないんだよ。こういうのは、けっこう重たい罪になるんだぜ」
「そんな……」
「そしてさらに、あの底なしのお人よしは、牢屋に入ったお前を助けるために、多額の保釈金を積むだろう。お前がやめろと言っても、そうするに違いない。なんたって、馬鹿がつくほど甘いからな」
「…………」
「くくっ、くくくっ、さあ、これでわかっただろう? お前がやろうとしていることは、結局はただの憂さ晴らしで、ドルフレッドのおやじに迷惑をかけるだけなんだよ。それでもいいなら、さあどうぞ、殴れよ。僕は逃げも隠れもしない」
代わりに、俺が今一番知りたいことを、直接尋ねる。
「……ルーパート。貴様が、アドレーラを傷つけたのか?」
「んん~? なんのことだ?」
「とぼけるな。アドレーラのうなじについていた、あの傷のことだ」
「うなじ……う~ん、う・な・じ……ねぇ……どうだったかなぁ~」
「答えろ!」
「くくく、そんなに怒鳴るなよ。怖くて漏らしそうだ。もしそうなったら、お前が僕のズボンを替えてくれるのかい? くくっ、くくくっ、嬉しいだろう? 下衆な平民程度が、高貴なる僕のお召し物を履き替えさせるなんて、身に余る名誉だからな」
ルーパートは大げさに肩をすくめ、人を見下した、嫌な笑顔で言う。
この、ふざけきった態度。
俺の疑念は、確信に変わった。
間違いない。
こいつだ。
こいつがやったんだな。
もう、証拠なんて必要ない。
ぶちのめしてやる。
俺はルーパートの胸ぐらをつかみ、奴の顔面に拳を叩き込もうとした。
「おぉっと、待て待て待て待て。まさか、その大きな拳で僕を殴る気か? やめた方がいい。すぐに衛兵がやって来て、お前は牢屋行きだ」
「知ったことか! 俺は、お前が許せない! ……お前の顔面を叩き潰せるなら、俺はこの後、どうなったって構わない!」
俺の剣幕に、ルーパートは少しだけ怯んだが、すぐにまた嫌な笑みを浮かべ、ペラペラと言葉を吐き出していく。
「い、威勢の良いことだ。だがなあ、お前が問題を起こして、一番困るのは誰だと思う? くくっ、あの、ドルフレッドのおやじだよ」
「なんだと?」
「考えてもみろ。お前はドルフレッドのおやじから貰った身分証でイズリウム家に入り込んだ。それで、僕に暴力を振るったら、お前だけではなく、正式な使用人ではない者に身分証を交付したドルフレッドも、責任を負わなければならないんだよ。こういうのは、けっこう重たい罪になるんだぜ」
「そんな……」
「そしてさらに、あの底なしのお人よしは、牢屋に入ったお前を助けるために、多額の保釈金を積むだろう。お前がやめろと言っても、そうするに違いない。なんたって、馬鹿がつくほど甘いからな」
「…………」
「くくっ、くくくっ、さあ、これでわかっただろう? お前がやろうとしていることは、結局はただの憂さ晴らしで、ドルフレッドのおやじに迷惑をかけるだけなんだよ。それでもいいなら、さあどうぞ、殴れよ。僕は逃げも隠れもしない」
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