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第6話(ヴァネッサ視点)
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妹の婚約者を、奪ってしまった。
自暴自棄になって、ほとんどヤケクソで、公爵様がお休みになっている寝室に押し掛けただけなのに、まさか、これほど簡単に、彼が私のものになってしまうなんて。
驚きと共に、強烈な愉悦が胸に湧いてくる。
ざまあみろ、イザベル。
あんたの愛しい婚約者さんは、私に夢中みたいよ。
イザベル、あんた、自分は特別だと思ってるでしょ?
どんなことでも、すべて、思い通りになると思ってるでしょ?
残念でした!
この世はあんたを中心に回ってるわけじゃないのよ!
ざまあみろ。
ざまあみろ。
ざまあみろ。
イザベル。
ざまあみろ。
・
・
・
私には、妹が一人いる。
三歳年下で、名前はイザベル。
私たち二人は、表面上は仲の良い姉妹だったが、私はイザベルのことが大嫌いだった。
だって、癇に障るのよ、あの子。
顔はいいし、痩せてて、スタイルもいいし。
おまけに、何をやらせてもそつなくこなす、天性の器用さがある。
ピアノもそう。
ダンスもそう。
ちょっと練習しただけで、前からやっていた私より上手になって、イラつくったらありゃしないわ。それで、勝ち誇るならまだしも、『私なんて、まだまだお姉様にはかないません』なんてお世辞を言うから、さらにイラつくのよ。
そう。
イラつく。
本当にイラつくのよ、あの子の性格。
イザベルは、優しく、思いやりがあり、決して身分で人を差別したりはせず、どんな相手であっても真摯に対応する、いわゆる『良い子』である。お父様も、お母様も、使用人たちも、皆、そんなイザベルのことが大好きだった。
特に使用人たちは、イザベルの信奉者と言ってもいい。ちょっとした用事を申し付けられただけで、嬉々としてイザベルのために働く姿は、ほとんど犬同然である。
彼らは時々、私とイザベルをちらちらと見比べている。きっと陰で、『何故同じ姉妹なのに、これほど違うのだろう。妹のイザベル様は天使だが、姉のヴァネッサ様は悪魔だ』……そんなことを囁き合ってるに違いない。
ふん。
私の性格が悪くなったのは、イザベルのせいよ。
あんたたちみたいな下等な使用人には、わからないでしょうね。
華やかで優秀な妹と比較され続ける姉の苦しみなんて。
イザベルのことが大好きな使用人を、私はいつも、適当な濡れ衣を着せてクビにする。しかし、新しくやって来た使用人も、すぐにまた、イザベルに心酔してしまう。まるで、終わりのない害虫駆除だ。それもこれも、イザベルがいるせいよ。ああ、本当に、イラつく。
自暴自棄になって、ほとんどヤケクソで、公爵様がお休みになっている寝室に押し掛けただけなのに、まさか、これほど簡単に、彼が私のものになってしまうなんて。
驚きと共に、強烈な愉悦が胸に湧いてくる。
ざまあみろ、イザベル。
あんたの愛しい婚約者さんは、私に夢中みたいよ。
イザベル、あんた、自分は特別だと思ってるでしょ?
どんなことでも、すべて、思い通りになると思ってるでしょ?
残念でした!
この世はあんたを中心に回ってるわけじゃないのよ!
ざまあみろ。
ざまあみろ。
ざまあみろ。
イザベル。
ざまあみろ。
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私には、妹が一人いる。
三歳年下で、名前はイザベル。
私たち二人は、表面上は仲の良い姉妹だったが、私はイザベルのことが大嫌いだった。
だって、癇に障るのよ、あの子。
顔はいいし、痩せてて、スタイルもいいし。
おまけに、何をやらせてもそつなくこなす、天性の器用さがある。
ピアノもそう。
ダンスもそう。
ちょっと練習しただけで、前からやっていた私より上手になって、イラつくったらありゃしないわ。それで、勝ち誇るならまだしも、『私なんて、まだまだお姉様にはかないません』なんてお世辞を言うから、さらにイラつくのよ。
そう。
イラつく。
本当にイラつくのよ、あの子の性格。
イザベルは、優しく、思いやりがあり、決して身分で人を差別したりはせず、どんな相手であっても真摯に対応する、いわゆる『良い子』である。お父様も、お母様も、使用人たちも、皆、そんなイザベルのことが大好きだった。
特に使用人たちは、イザベルの信奉者と言ってもいい。ちょっとした用事を申し付けられただけで、嬉々としてイザベルのために働く姿は、ほとんど犬同然である。
彼らは時々、私とイザベルをちらちらと見比べている。きっと陰で、『何故同じ姉妹なのに、これほど違うのだろう。妹のイザベル様は天使だが、姉のヴァネッサ様は悪魔だ』……そんなことを囁き合ってるに違いない。
ふん。
私の性格が悪くなったのは、イザベルのせいよ。
あんたたちみたいな下等な使用人には、わからないでしょうね。
華やかで優秀な妹と比較され続ける姉の苦しみなんて。
イザベルのことが大好きな使用人を、私はいつも、適当な濡れ衣を着せてクビにする。しかし、新しくやって来た使用人も、すぐにまた、イザベルに心酔してしまう。まるで、終わりのない害虫駆除だ。それもこれも、イザベルがいるせいよ。ああ、本当に、イラつく。
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