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第二章 貴族としての生活

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 エヴァンが控室に向かうと、ジェラルドとアイリーンが待っていてくれた。キャスティナは、髪にかかったワインが酷かったので別の部屋で湯浴みをさせて着替えているらしい。

「兄上、義姉上、キャスティナに付き添ってもらってありがとうございました」

「いや、大丈夫だよ。それより、そっちはどうなった?」

「サディアス殿下が、侯爵令嬢に対して以後、顔を見せるなと言われてたよ」

 エヴァンは、どうでもいいと顔に出しながら述べた。

「そうか……キャスティナは……いや、屋敷に戻ってからだな……」

「そうですね。兄上達は、もう戻って下さい。私達は、キャスティナが戻って来たら先に帰ります」

 それを聞いた二人は、舞踏会場へと戻って行った。その後、暫くしてキャスティナが王宮の侍女と共に控室に戻って来た。もう帰るだけなので、髪は特に何もせず下ろしたままメイクも最低限に抑えてある。

「キャスティナ、大変だったね。すぐに帰ろう」

「はい」

 キャスティナは、俯き落ち込んでいる。エヴァンは、キャスティナの手を取り歩き出そうとした。キャスティナは、侍女に向き合いお礼を言った。

「あの。お世話かけました、ありがとう。失礼するわね」

 そう言った後、二人は王宮を足早に後にした。馬車の中でキャスティナは、落ち込んでいた。あんなに派手に転ぶとは思ってなかったので、自分でも驚いた。やろうとした事は、概ね成功したはずと思ってはいるのだが……やらかした事が大それた事で、本当にあれで良かったのか不安で不安で仕方なかった。とにかく、落ち着かなくてはと思った。そう言えばその後、どうなったのか聞いてないとキャスティナは思った。

「エヴァン様、今日は初めての夜会で騒ぎを起こしてしまって申し訳ありませんでした」

 キャスティナは、恐る恐るエヴァンを窺う。エヴァンが、笑っていた。キャスティナは、予想外の笑顔にびっくりする。

「エヴァン様、何がそんなにおかしいんですか?」

「いや、キャスティナ思いっきり転んだなと思って。そう言えば、ケガはしてないの?」

「それは、大丈夫です。それより、ドレスが汚れてしまって……せっかくあんなにきれいなドレスを作ってもらったのに……。本当にごめんなさい」

 キャスティナは、しゅんとして俯く。

「そんなに落ち込まないで。母上と義姉上の入れ知恵なんだろ?」

 それを聞いたキャスティナは、驚く。エヴァン様が、気づくって事はあそこにいた他の方達も気付いたのかしら?あー、やっぱりやり過ぎたー私!

「あの……私……やり過ぎましたよね?」
 キャスティナは、おずおずとエヴァンを見る。

「そうだねー。転ばなくても良かったんじゃないかとは思ったよ。軽くかかる程度で」

 キャスティナは、顔色が青くなる。やっぱりやり過ぎたか……だが、これにはキャスティナなりの理由があった。一つは、エヴァンに言っておこうと決める。

「あの、お義母様とお義姉様にやられたら絶対に二度とやりたくないように仕向けなさい。一番始めが肝心です。と言われてて……どこまでなら大丈夫かの、尺度が難しかったです」

 キャスティナは、正直に話した。エヴァンは、笑っている。

「あはは。なるほどね。じゃー、もう誰もキャスティナには手出しはして来ないと思うよ」

「あの、あの後はどうなったんですか?」

「まぁ、あの侯爵令嬢は殿下にちょっと怒られてたよ。詳しくは、明日話すよ。きっと今日の反省会をみんなでするはずだからさっ」

 それを聞いて、キャスティナは安心した。その後どうなるかは、殿下に丸投げしたからだ。殿下が侯爵令嬢の話を聞いて、どう受けとるかでキャスティナと侯爵令嬢の立ち位置が決まるからだ。

 実はキャスティナが、派手にワインを被った理由はもう1つあった。サディアス殿下に会いたくなかったのだ。キャスティナは、王族に良い印象を持っていない。キャスティナのデビュタントの時に、王族に初めて会った。王妃から令嬢一人一人に祝福を頂くのだが、その時の王族達の態度がすこぶるよくなかった。本当に興味のなさそうな顔でつまらなそうにしていたのだ。貴族の令嬢にとったら、一生に一度の大切な行事なのに。その態度に、キャスティナは心底がっかりした。自分の国の王や王子はいったいどんなに素敵なのかと楽しみにしていたから尚更だった。

 だから、キャスティナは会わなくていいなら会いたくはなかった。赤ワインを頭から被れば、流石に会わなくていいと瞬時に考えてしまった。だから、あえて転んだ。そして、嫌がらせをした侯爵令嬢にどんな対応を取るのか確認したかったのもあり、故意に侯爵令嬢にエヴァンと共にサディアス殿下の所に行ってもらったのだ。
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