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第一章 人生って何が起こるかわからない
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エーファが侍女に戻って1日目。朝からドレスを着て、昔使っていたマナー本を出してひたすら練習。お辞儀の仕方、座り方、歩き方、手の使い方、貴族令嬢としての所作をひたすら繰り返す。一番頭を悩ませたのが、ヒールの高い靴。今まで長い事、動きやすいぺったんこ靴を履いていたのでヒールだと安定感がない。一日中履いていたら、靴擦れしてしまった。
あー、平民としての生活が楽し過ぎたわ。着るものも食べるものも動き方も、楽だったのよね……。馴染み過ぎちゃったわ。これは、反省……もうちょっと体が覚えてるかと思ったんだけどな……。
「エーファ。私、平民的暮らしに馴染みすぎたよ……泣きそう」
「お嬢様。まだ始めてから、1日目ですよ。そんなにすぐに、結果は出ません。やらないより、絶対やった方がいいはずです。明日も頑張りましょう‼」
「うん。ありがとう。エーファ。そうよね。まだ1日目だったわ。明日も明後日も頑張る。今日は、このくらいにしておくね。そろそろ夕飯の時間よね?」
「はい。そうですね」
キャスティナは、まだまだ安定感のない足取りでダイニングに向かった。ダイニングの扉を開けると、ルイスが待っていた。
「今日も、ルイスが先だったわね。お待たせ」
「いえ、大丈夫ですお姉様……」
ルイスが恥ずかしそうに、お姉様と呼んでくれた。
「では、頂きましょう」
その日の夕飯は、キャスティナがルイスに積極的に話しかけた。たわいもない話だったが、いつもと違って楽しい夕食となった。夕食を終えると、二人で居間に移動した。控えていたダンにお茶をお願いする。暖炉の前にあるソファに隣り合って座った。二人が緊張しているのがわかる。キャスティナは、お茶を一口飲んだ。
「ルイス、突然ごめんね。話したい事って、私の婚約の事なの」
キャスティナは、ルイスの顔を見て話し出した。半月前に行った王宮の夜会で、一人の男性に会った事。なぜだか気に入られ、プロポーズされて10日後に正式にお父様に婚約の許しをもらいに来た事。そこから一週間後に、相手方のお屋敷に行って正式な婚約の取り決めをして、そのまま花嫁修業の為に相手のお屋敷に住む事になったと言う事を駆け足で説明した。それを聞いた、ルイスは驚きのあまり絶句している。
「ルイス大丈夫?急いで説明したけど、理解できた?」
「はっはい……お姉様、色々びっくりです」
「そうだと思うわ。私もそうなんだから。ちなみに、お父様は、お義母様にこの話してないからまだ秘密よ」
「えっ⁉」
「多分、話した後の事を考えるとめんどうで言えないのよ。きっとお義母様怒り狂うから……。ごめんね、ルイスのお母様なのに……」
「いえ。そこはもう割り切ってますので、お姉様が言う分には僕は何も思いません。ところで、相手のお名前は聞いてもいいですか?」
「コーンフォレス侯爵家の次男で、エヴァン・ウィリアーズ・コーンフォレスよ」
ルイスが目を丸くして、びっくりした。
「こっ侯爵家?しかもあの名家の?お姉様それ本当なんですか?騙されてる訳じゃなく?」
「本当のはず。お父様も言ってたし。別邸だけど、お屋敷にも行ったのよ。別邸なのに、凄いお屋敷で王宮から一番近い一等地だったもの」
「お姉様、大丈夫なんですか?そうか、だからお母様に知られるとまずいのか……お母様にしたら面白くないよね……」
「全然、大丈夫じゃないわよ。貴族として私じゃ足りなすぎる事ばかりなのよ。それに、お義母様の事はお父様に何とかしてもらうわよ。いい加減、あの二人は向き合う必要があるのよ。あの二人の長い長い夫婦喧嘩のトバっちりを、私達二人が受けてるもんなんだから!」
「そうですね……お姉様がいなくなったら、あの二人はどうなるんでしょうか?」
「お義母様にとって目障りな私がいなくなれば、平和な家庭になるかもね。ルイスには、迷惑ばかりかけたよね」
「そんな……僕は恵まれてました。迷惑なんて、きっとお互い様です」
「ルイス、私良いお姉ちゃんじゃなくてごめんね。でもこれだけは、言っておきたくて。自分の人生は、面白くするのもつまらなくするのも自分次第なのよ。もし、これからつまらなかったら、自分で楽しい事を見つけてね。きっと、キラキラした毎日が送れるから」
「はい。お姉様。お姉様は、大丈夫ですか?不安ではないですか?」
「ふふふ。ルイス。ルイスのお姉様は、わりと凄いのよ。きっと、大変だけれど自分で楽しくするから大丈夫よ。そうだ。ルイスに手紙を書くから、返事を頂戴。両親には秘密でお手紙のやり取りをしましょう」
「はい。お姉様に手紙を書けるなんてうれしいです。楽しみです」
「ほら。楽しい事、一つ出来た‼」
キャスティナは、ソファから立ち上がる。
「じゃー、そろそろ部屋に戻るね。時間を取ってくれてありがとう」
ルイスも立ち上がる。
「お姉様。色々話せて良かったです。これからも、よろしくお願いします」
ルイスがぺこりと頭を下げた。
「ルイス、ハグしてもいい?」
ルイスは、恥ずかしそうにコクンと首を縦に振った。キャスティナは、ルイスを抱きしめた。
「いつのまにか、こんなに大きくなっちゃったね。素敵な大人になるんだよ。困った事があったら、相談してね。ずっとルイスのお姉ちゃんだからね」
「はい」
ルイスは、小さな声で返事をした。
あー、平民としての生活が楽し過ぎたわ。着るものも食べるものも動き方も、楽だったのよね……。馴染み過ぎちゃったわ。これは、反省……もうちょっと体が覚えてるかと思ったんだけどな……。
「エーファ。私、平民的暮らしに馴染みすぎたよ……泣きそう」
「お嬢様。まだ始めてから、1日目ですよ。そんなにすぐに、結果は出ません。やらないより、絶対やった方がいいはずです。明日も頑張りましょう‼」
「うん。ありがとう。エーファ。そうよね。まだ1日目だったわ。明日も明後日も頑張る。今日は、このくらいにしておくね。そろそろ夕飯の時間よね?」
「はい。そうですね」
キャスティナは、まだまだ安定感のない足取りでダイニングに向かった。ダイニングの扉を開けると、ルイスが待っていた。
「今日も、ルイスが先だったわね。お待たせ」
「いえ、大丈夫ですお姉様……」
ルイスが恥ずかしそうに、お姉様と呼んでくれた。
「では、頂きましょう」
その日の夕飯は、キャスティナがルイスに積極的に話しかけた。たわいもない話だったが、いつもと違って楽しい夕食となった。夕食を終えると、二人で居間に移動した。控えていたダンにお茶をお願いする。暖炉の前にあるソファに隣り合って座った。二人が緊張しているのがわかる。キャスティナは、お茶を一口飲んだ。
「ルイス、突然ごめんね。話したい事って、私の婚約の事なの」
キャスティナは、ルイスの顔を見て話し出した。半月前に行った王宮の夜会で、一人の男性に会った事。なぜだか気に入られ、プロポーズされて10日後に正式にお父様に婚約の許しをもらいに来た事。そこから一週間後に、相手方のお屋敷に行って正式な婚約の取り決めをして、そのまま花嫁修業の為に相手のお屋敷に住む事になったと言う事を駆け足で説明した。それを聞いた、ルイスは驚きのあまり絶句している。
「ルイス大丈夫?急いで説明したけど、理解できた?」
「はっはい……お姉様、色々びっくりです」
「そうだと思うわ。私もそうなんだから。ちなみに、お父様は、お義母様にこの話してないからまだ秘密よ」
「えっ⁉」
「多分、話した後の事を考えるとめんどうで言えないのよ。きっとお義母様怒り狂うから……。ごめんね、ルイスのお母様なのに……」
「いえ。そこはもう割り切ってますので、お姉様が言う分には僕は何も思いません。ところで、相手のお名前は聞いてもいいですか?」
「コーンフォレス侯爵家の次男で、エヴァン・ウィリアーズ・コーンフォレスよ」
ルイスが目を丸くして、びっくりした。
「こっ侯爵家?しかもあの名家の?お姉様それ本当なんですか?騙されてる訳じゃなく?」
「本当のはず。お父様も言ってたし。別邸だけど、お屋敷にも行ったのよ。別邸なのに、凄いお屋敷で王宮から一番近い一等地だったもの」
「お姉様、大丈夫なんですか?そうか、だからお母様に知られるとまずいのか……お母様にしたら面白くないよね……」
「全然、大丈夫じゃないわよ。貴族として私じゃ足りなすぎる事ばかりなのよ。それに、お義母様の事はお父様に何とかしてもらうわよ。いい加減、あの二人は向き合う必要があるのよ。あの二人の長い長い夫婦喧嘩のトバっちりを、私達二人が受けてるもんなんだから!」
「そうですね……お姉様がいなくなったら、あの二人はどうなるんでしょうか?」
「お義母様にとって目障りな私がいなくなれば、平和な家庭になるかもね。ルイスには、迷惑ばかりかけたよね」
「そんな……僕は恵まれてました。迷惑なんて、きっとお互い様です」
「ルイス、私良いお姉ちゃんじゃなくてごめんね。でもこれだけは、言っておきたくて。自分の人生は、面白くするのもつまらなくするのも自分次第なのよ。もし、これからつまらなかったら、自分で楽しい事を見つけてね。きっと、キラキラした毎日が送れるから」
「はい。お姉様。お姉様は、大丈夫ですか?不安ではないですか?」
「ふふふ。ルイス。ルイスのお姉様は、わりと凄いのよ。きっと、大変だけれど自分で楽しくするから大丈夫よ。そうだ。ルイスに手紙を書くから、返事を頂戴。両親には秘密でお手紙のやり取りをしましょう」
「はい。お姉様に手紙を書けるなんてうれしいです。楽しみです」
「ほら。楽しい事、一つ出来た‼」
キャスティナは、ソファから立ち上がる。
「じゃー、そろそろ部屋に戻るね。時間を取ってくれてありがとう」
ルイスも立ち上がる。
「お姉様。色々話せて良かったです。これからも、よろしくお願いします」
ルイスがぺこりと頭を下げた。
「ルイス、ハグしてもいい?」
ルイスは、恥ずかしそうにコクンと首を縦に振った。キャスティナは、ルイスを抱きしめた。
「いつのまにか、こんなに大きくなっちゃったね。素敵な大人になるんだよ。困った事があったら、相談してね。ずっとルイスのお姉ちゃんだからね」
「はい」
ルイスは、小さな声で返事をした。
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