25 / 51
025 同僚との挨拶
しおりを挟む
リリーのいる部屋に、ノックの音が響き渡る。
「はい」
リリーが返事をすると、扉が開いてメイド服を着た女性が姿を現す。
「失礼します。ブルーノさんから言われて来ました。メイドのカティです」
カティは、扉の前でペコリと頭を下げた。緑の髪色で、笑うとえくぼができて可愛い。それに、リリーと同じくらいの年齢の女性だった。
「初めまして、リリーです。今日からこちらでお世話になることになりました。宜しくお願いします」
リリーも、ベッドから立ち上がってカティに挨拶をする。
「リリーって呼んでも大丈夫なのかな?」
カティは、人懐っこそうな顔で気軽にしゃべってくれた。変に畏まられるよりも心地よくて、リリーも笑顔になる。
「もちろんよ。私もカティって呼んでもいい?」
カティの人柄なのか、リリーも自然と敬語ではなく普通に話してしまう。
「うん。私、後輩って初めてだから嬉しい。何でも聞いてね」
カティが、にこにこ笑顔でとても嬉しそうだった。
「あの、そしたらお風呂を使ってもいいって言われたのだけど……。いきなりで申し訳ないのだけど、使わせてもらってもいいかな?」
リリーは、ブルーノの好意に素直に甘えさせてもらうことにした。二日間の間に、ゆっくりお風呂に入るということがなく、ダニエルと夕食を共にするのならできればすっきりしときたかった。
「ブルーノさんから聞いてる。本当は、使用人は仕事が終わった後なんだけど今日は特別にいいって。そのチェストの中に、メイド用の下着とか一式入っているから使っても大丈夫だよ。私、廊下にいるから準備できたら出て来て」
カティは、ドアを開けて部屋から出て行った。お風呂の準備をするのに、見られるのは嫌だろうと気を遣ったのだろう。
ブルーノもカティも、人柄が良くてでホッとする。使用人の人柄が良いのは、きっと屋敷の主人を始めとするマーティン一家が素敵な人なのだろう。
ここに来られて良かったと、心の底からそう思った。
準備をして扉を開けると、廊下に佇むカティがいた。
「ごめんね、お待たせ」
リリーは、チェストの中から自分のサイズと同じ下着やタオル類、それと自分が持って来た服を手に持っている。
「大丈夫。じゃー、行こう。お風呂は一番奥にあるんだ」
カティが、廊下を突き当りに向かって歩き始める。それについてリリーも歩く。リリーの部屋は、最上階の中程に位置していたのでお風呂はそう遠くなさそうだ。
案内された場所は、廊下の突き当りのドアで扉に掛札がかかっている。使用人は、一日の仕事を終わらせた人から、順番にお風呂に入っていいらしい。
リリーの部屋から、左奥が女性用で右奥が男性用。間違えないようにとカティに釘を差された。
「入る時は、この掛札を裏にしてね。大体一人30分が目安。今日は、後ろがいないからゆっくり入って大丈夫。私は、仕事に戻るけどお風呂から上がったら部屋に戻って夕飯まではゆっくりしてって言っていたよ。夕飯の時に、また呼びにくるから」
カティは、そう言うと最後に「ごゆっくりー」と言って仕事に戻っていった。リリーは、カティを見送ると掛札を裏にしてドキドキしながら扉を開く。
中に入るととても綺麗な脱衣所だった。扉の鍵を閉めて、脱衣所の奥に進む。奥にはもう一つ扉があって、そこを開けるとお風呂になっていた。
白くて大きなバスタブが中央にあって、並々とお湯が注がれていた。使用人用だというのにとても豪華で感動してしまう。
リリーは、遠慮なくゆっくりお風呂に入らせてもらってやっと一息つくことができた。あの森を出てから、5日ほどしか経っていないはずなのにもう何日も経ってしまった気分だ。
この数日で、ありえないくらい色々なことがあった。ちゃんとダニエルと再会できるか心配だったが、一人でも辿り着くことができて本当に良かった。
明日から新しい生活が始まる。気を引き締めて頑張ろうと心の中で誓った。
部屋に戻ったリリーは、旅の疲れも相まってうとうとと眠ってしまっていた。気づいたら、カティに優しく肩を叩かれて起こされる。
「リリー、起きて。夕飯の時間」
リリーは、ゆっくりと目を開けるとカティの顔がすぐ近くにあり驚く。
「ごめん。私、寝ちゃった……」
リリーは、ベッドに横になっていた体を起こす。
「平気。起こすの可哀想だったけど、ご飯は食べた方がいいと思って」
カティが、起こしたことを申し訳なさそうにしている。むしろ、起こしてもらって良かった。
「ありがとう。すぐ行くよね」
リリーは、ベッドから立ち上がって扉の方に向かおうとした。
「ちょっと待って。せめて髪くらいは、整えた方がいいって」
カティは、リリーの腕をとって書き物机の椅子に座らせる。机の引き出しを開けると、櫛と鏡が出て来た。
「凄い。何でもあるのね」
リリーは、素直に驚く。使用人といえど、きちんと大切にされているのだと感心するばかりだ。
「そうなの。ここのお屋敷、好待遇・好条件で人気なのよ」
カティが、嬉しそうに笑う。そして、櫛をもってリリーの髪を梳かしてくれた。
「私、あまり上手じゃないけど。簡単なのはできるから」
カティは、髪をアップにまとめてくれた。サイドにおくれ毛を少しだして、可愛くしてくれる。リリーは、いつも髪は下しているだけだったので久しぶりにアップにして新鮮な気持ちだ。
ダニエルと食事をするのに、寝起きのまま行くなんて失礼だったと反省する。
「ありがとう。少しは、マシになったかな?」
リリーは、カティに訊ねる。
「うん。可愛い。リリーは、アップにした方が似合うよ」
カティが褒めてくれて嬉しい。リリーには、同年代の友人がいなかったのでこんな風に褒められたのは初めてでドキドキする。
「さっ。行こう。ダニエル様と食事なんだってね。羨ましー」
カティが、隠さずに素直な気持ちを口にする。裏表のない子で、リリーはとても感心する。貴族令嬢というものは、ネガティブな感情は表に出さないものだ。
「えっと、あのね……」
リリーは、何て言っていいのかわからない。明日から使用人として働くのに、仕える住人と食事をするなんて普通なら考えられないことだから。
「別に、怒っている訳じゃないよ。聞いたよ、ダニエル様の恩人なんでしょ? そのお礼なんだってね」
カティは、屈託ない笑顔を向けてくれる。全く、リリーに対して負の感情を抱いているように感じない。
こういうことは、嫉妬や妬みになりやすい。でも、カティからは全くそんなことは感じなかった。
「うん。そうなの……。ここで働かせて貰えるだけで有難いんだけどね……」
リリーは、ダニエルの自分に対する扱いが大袈裟で分不相応に思えてしまう。
「いいじゃん。好意は、素直に受け取っておくもんだよ。私だったら、ラッキーって自慢しちゃう」
カティは、明るい笑顔でそう溢す。気持ちがいいくらいはっきりしていて何だか眩しく感じた。
リリーは、この五年間本当の気持ちを押し隠して生きてきたから尚更そう感じたのかもしれない。
これからは、カティみたいに自分の気持ちに真っすぐでありたいと彼女を見ていて感じた。
「はい」
リリーが返事をすると、扉が開いてメイド服を着た女性が姿を現す。
「失礼します。ブルーノさんから言われて来ました。メイドのカティです」
カティは、扉の前でペコリと頭を下げた。緑の髪色で、笑うとえくぼができて可愛い。それに、リリーと同じくらいの年齢の女性だった。
「初めまして、リリーです。今日からこちらでお世話になることになりました。宜しくお願いします」
リリーも、ベッドから立ち上がってカティに挨拶をする。
「リリーって呼んでも大丈夫なのかな?」
カティは、人懐っこそうな顔で気軽にしゃべってくれた。変に畏まられるよりも心地よくて、リリーも笑顔になる。
「もちろんよ。私もカティって呼んでもいい?」
カティの人柄なのか、リリーも自然と敬語ではなく普通に話してしまう。
「うん。私、後輩って初めてだから嬉しい。何でも聞いてね」
カティが、にこにこ笑顔でとても嬉しそうだった。
「あの、そしたらお風呂を使ってもいいって言われたのだけど……。いきなりで申し訳ないのだけど、使わせてもらってもいいかな?」
リリーは、ブルーノの好意に素直に甘えさせてもらうことにした。二日間の間に、ゆっくりお風呂に入るということがなく、ダニエルと夕食を共にするのならできればすっきりしときたかった。
「ブルーノさんから聞いてる。本当は、使用人は仕事が終わった後なんだけど今日は特別にいいって。そのチェストの中に、メイド用の下着とか一式入っているから使っても大丈夫だよ。私、廊下にいるから準備できたら出て来て」
カティは、ドアを開けて部屋から出て行った。お風呂の準備をするのに、見られるのは嫌だろうと気を遣ったのだろう。
ブルーノもカティも、人柄が良くてでホッとする。使用人の人柄が良いのは、きっと屋敷の主人を始めとするマーティン一家が素敵な人なのだろう。
ここに来られて良かったと、心の底からそう思った。
準備をして扉を開けると、廊下に佇むカティがいた。
「ごめんね、お待たせ」
リリーは、チェストの中から自分のサイズと同じ下着やタオル類、それと自分が持って来た服を手に持っている。
「大丈夫。じゃー、行こう。お風呂は一番奥にあるんだ」
カティが、廊下を突き当りに向かって歩き始める。それについてリリーも歩く。リリーの部屋は、最上階の中程に位置していたのでお風呂はそう遠くなさそうだ。
案内された場所は、廊下の突き当りのドアで扉に掛札がかかっている。使用人は、一日の仕事を終わらせた人から、順番にお風呂に入っていいらしい。
リリーの部屋から、左奥が女性用で右奥が男性用。間違えないようにとカティに釘を差された。
「入る時は、この掛札を裏にしてね。大体一人30分が目安。今日は、後ろがいないからゆっくり入って大丈夫。私は、仕事に戻るけどお風呂から上がったら部屋に戻って夕飯まではゆっくりしてって言っていたよ。夕飯の時に、また呼びにくるから」
カティは、そう言うと最後に「ごゆっくりー」と言って仕事に戻っていった。リリーは、カティを見送ると掛札を裏にしてドキドキしながら扉を開く。
中に入るととても綺麗な脱衣所だった。扉の鍵を閉めて、脱衣所の奥に進む。奥にはもう一つ扉があって、そこを開けるとお風呂になっていた。
白くて大きなバスタブが中央にあって、並々とお湯が注がれていた。使用人用だというのにとても豪華で感動してしまう。
リリーは、遠慮なくゆっくりお風呂に入らせてもらってやっと一息つくことができた。あの森を出てから、5日ほどしか経っていないはずなのにもう何日も経ってしまった気分だ。
この数日で、ありえないくらい色々なことがあった。ちゃんとダニエルと再会できるか心配だったが、一人でも辿り着くことができて本当に良かった。
明日から新しい生活が始まる。気を引き締めて頑張ろうと心の中で誓った。
部屋に戻ったリリーは、旅の疲れも相まってうとうとと眠ってしまっていた。気づいたら、カティに優しく肩を叩かれて起こされる。
「リリー、起きて。夕飯の時間」
リリーは、ゆっくりと目を開けるとカティの顔がすぐ近くにあり驚く。
「ごめん。私、寝ちゃった……」
リリーは、ベッドに横になっていた体を起こす。
「平気。起こすの可哀想だったけど、ご飯は食べた方がいいと思って」
カティが、起こしたことを申し訳なさそうにしている。むしろ、起こしてもらって良かった。
「ありがとう。すぐ行くよね」
リリーは、ベッドから立ち上がって扉の方に向かおうとした。
「ちょっと待って。せめて髪くらいは、整えた方がいいって」
カティは、リリーの腕をとって書き物机の椅子に座らせる。机の引き出しを開けると、櫛と鏡が出て来た。
「凄い。何でもあるのね」
リリーは、素直に驚く。使用人といえど、きちんと大切にされているのだと感心するばかりだ。
「そうなの。ここのお屋敷、好待遇・好条件で人気なのよ」
カティが、嬉しそうに笑う。そして、櫛をもってリリーの髪を梳かしてくれた。
「私、あまり上手じゃないけど。簡単なのはできるから」
カティは、髪をアップにまとめてくれた。サイドにおくれ毛を少しだして、可愛くしてくれる。リリーは、いつも髪は下しているだけだったので久しぶりにアップにして新鮮な気持ちだ。
ダニエルと食事をするのに、寝起きのまま行くなんて失礼だったと反省する。
「ありがとう。少しは、マシになったかな?」
リリーは、カティに訊ねる。
「うん。可愛い。リリーは、アップにした方が似合うよ」
カティが褒めてくれて嬉しい。リリーには、同年代の友人がいなかったのでこんな風に褒められたのは初めてでドキドキする。
「さっ。行こう。ダニエル様と食事なんだってね。羨ましー」
カティが、隠さずに素直な気持ちを口にする。裏表のない子で、リリーはとても感心する。貴族令嬢というものは、ネガティブな感情は表に出さないものだ。
「えっと、あのね……」
リリーは、何て言っていいのかわからない。明日から使用人として働くのに、仕える住人と食事をするなんて普通なら考えられないことだから。
「別に、怒っている訳じゃないよ。聞いたよ、ダニエル様の恩人なんでしょ? そのお礼なんだってね」
カティは、屈託ない笑顔を向けてくれる。全く、リリーに対して負の感情を抱いているように感じない。
こういうことは、嫉妬や妬みになりやすい。でも、カティからは全くそんなことは感じなかった。
「うん。そうなの……。ここで働かせて貰えるだけで有難いんだけどね……」
リリーは、ダニエルの自分に対する扱いが大袈裟で分不相応に思えてしまう。
「いいじゃん。好意は、素直に受け取っておくもんだよ。私だったら、ラッキーって自慢しちゃう」
カティは、明るい笑顔でそう溢す。気持ちがいいくらいはっきりしていて何だか眩しく感じた。
リリーは、この五年間本当の気持ちを押し隠して生きてきたから尚更そう感じたのかもしれない。
これからは、カティみたいに自分の気持ちに真っすぐでありたいと彼女を見ていて感じた。
880
お気に入りに追加
2,008
あなたにおすすめの小説
牢で死ぬはずだった公爵令嬢
鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。
表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。
小説家になろうさんにも投稿しています。
どうして私にこだわるんですか!?
風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。
それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから!
婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。
え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!?
おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。
※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。
デブスの伯爵令嬢と冷酷将軍が両思いになるまで~痩せたら死ぬと刷り込まれてました~
バナナマヨネーズ
恋愛
伯爵令嬢のアンリエットは、死なないために必死だった。
幼い頃、姉のジェシカに言われたのだ。
「アンリエット、よく聞いて。あなたは、普通の人よりも体の中のマナが少ないの。このままでは、すぐマナが枯渇して……。死んでしまうわ」
その言葉を信じたアンリエットは、日々死なないために努力を重ねた。
そんなある日のことだった。アンリエットは、とあるパーティーで国の英雄である将軍の気を引く行動を取ったのだ。
これは、デブスの伯爵令嬢と冷酷将軍が両思いになるまでの物語。
全14話
※小説家になろう様にも掲載しています。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──
もう一度あなたと?
キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として
働くわたしに、ある日王命が下った。
かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、
ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。
「え?もう一度あなたと?」
国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への
救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。
だって魅了に掛けられなくても、
あの人はわたしになんて興味はなかったもの。
しかもわたしは聞いてしまった。
とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。
OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。
どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。
完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
小説家になろうさんの方でも投稿しています。
ごめんなさい、お姉様の旦那様と結婚します
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
しがない伯爵令嬢のエーファには、三つ歳の離れた姉がいる。姉のブリュンヒルデは、女神と比喩される程美しく完璧な女性だった。端麗な顔立ちに陶器の様に白い肌。ミルクティー色のふわふわな長い髪。立ち居振る舞い、勉学、ダンスから演奏と全てが完璧で、非の打ち所がない。正に淑女の鑑と呼ぶに相応しく誰もが憧れ一目置くそんな人だ。
一方で妹のエーファは、一言で言えば普通。容姿も頭も、芸術的センスもなく秀でたものはない。無論両親は、エーファが物心ついた時から姉を溺愛しエーファには全く関心はなかった。周囲も姉とエーファを比較しては笑いの種にしていた。
そんな姉は公爵令息であるマンフレットと結婚をした。彼もまた姉と同様眉目秀麗、文武両道と完璧な人物だった。また周囲からは冷笑の貴公子などとも呼ばれているが、令嬢等からはかなり人気がある。かく言うエーファも彼が初恋の人だった。ただ姉と婚約し結婚した事で彼への想いは断念をした。だが、姉が結婚して二年後。姉が事故に遭い急死をした。社交界ではおしどり夫婦、愛妻家として有名だった夫のマンフレットは憔悴しているらしくーーその僅か半年後、何故か妹のエーファが後妻としてマンフレットに嫁ぐ事が決まってしまう。そして迎えた初夜、彼からは「私は君を愛さない」と冷たく突き放され、彼が家督を継ぐ一年後に離縁すると告げられた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる