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009 看病
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リリーとバーバラは、交代で男性の看病をした。助けた日の夜は、熱が上がってしまってとても辛そうだった。
医者に見せてあげたいが、リリーたちはグレンの従者を通じてしか他者と接触することができない。
今まで、大きな病気一つしてこなかったので薬もそんなに持っていなかった。バーバラと相談して、今夜一晩は様子を見て朝も熱が引かないようなら熱さましを飲ませようということになっている。
リリーは、男性が横たわるソファーの近くに椅子を置いて様子を見ていた。時折、額に乗せたタオルを水で濡らして変えてあげる。できることは少なかったが一生懸命看病をした。
椅子に座りながら男性を見ていると、ふとグレン以外の人と接するのがとても久しぶりなことに気がつく。グレンと出会って、自分が生まれ育ったフローレス家を出てから五年半が経とうとしている。
お父様もお母様もみんな元気にしているのかしら? グレンとの生活を選んでから、手紙一つ家族に送ることはなかった。
どこからライラの耳に入るかわからない為、極力外部との接触を禁止されていた。あまり考えることはなかったが、この五年半でリリーが手放したものは数えきれない。
グレンと一緒にいれば幸せで、その気持ちに嘘はないのだが……。最近のリリーは、こうやって一人でいると無性に寂しくなる。
アレンの成長を隣で見守っていると、ずっとこのままの生活でいいのか不安になってくるのだ。こんな森の中でだけ、誰とも会わずに生活するなんて良い訳がない。
自分だけのことなら仕方ないと割り切れるが、アレンのことは別だ。それにグレンが、今後アレンの教育をどうするのか意見を聞いていない。
いつか、別々に暮らすことになるのかと思うと、グレンに答えを聞くのが怖かった。アレンの未来を考えると、何とも言えない不安が襲ってくる。
自分は、母親なのだからしっかりしなくてはと思うのだが……。
「うっ……う……ん」
リリーが物思いにふけっていたら男性が目を覚ます。薄暗い部屋の中、自分がどこにいるのかわかっていないような表情だった。
「目が覚めましたか?」
リリーは、安心させようとできるだけ優しく声をかけた。
「ああ。そうか、君に助けてもらったんだね」
男性は、首をリリーの方に向けて言った。
「気分はどうですか? まだ熱が高くて、なかなか下がらないんですが……」
リリーは、椅子から立ち上がって男性が横になっているソファーの前にしゃがんだ。目線を合わせて顔を見る。
「ああ、昨日ケガをして丸一日ぐらいあそこにいたから、疲れもあったのかもしれない」
男性は、ケガをしていない方の腕を頭に置いて態勢を変えた。狭いソファーの上に寝ているから窮屈そうだ。
「お腹は空いてないですか? 食べられそうなら、パンがゆか野菜のスープならあります」
リリーは、さっきバーバラが作ってくれた料理を思い出す。起きた時にお腹が空いているようなら食べさせて下さいと言付かったのだ。
「お腹は空いてないんだが……。何か飲み物を貰えるかな?」
男性が、遠慮気味に答える。
「ちょっと待ってて下さいね」
リリーは、台所に行ってお水を持ってくる。男性のところに戻ると、水の入ったグラスをテーブルの上に置いて男性を起こしてあげた。
「お水です。どうぞ」
リリーは、テーブルの上のグラスを取って男性の手に持たせてあげた。男性は、ゆっくり水を飲む。グラスの中の水を全部飲み干してしまった。
「ありがとう」
男性が、グラスをリリーに返す。リリーは、グラスを受け取るとずっと気になっていたことを聞いた。
「あの……、お名前を聞いてもいいですか?」
熱はあるものの、意識はしっかりしているしここに連れて来た時よりも幾分かは良くなっている気がした。
「名前も名乗らずにすまない。私は、ダニエル。隣国グヴィネズ国から来た者だ」
名前だけしか名乗らないということは、貴族ではなく平民なのだと察する。でも、人を引き付けるような青い目がとても魅力的だ。平民にしては、存在感が強いような気がした。
「そうなんですね。私は、リリーと言います。さっき手当をしたのがバーバラ。男の子が私の息子でアレンです」
リリーは、ダニエルに合わせて名前だけを名乗った。貴族だと知ったら、居づらく思うだろうと敢えてそうした。
「突然、何も知らない俺なんかを助けてくれて本当にありがとう。このお礼はきちんとするから」
ダニエルは、リリーに頭を下げてお礼を言った。
「そんな、大したことしていませんから。それより、今はまだ夜中です。まだ眠れるようなら眠った方がいいですよ。朝になったら少しは、熱が下がっているといいのですか……」
リリーは、首を振ってダニエルに気にしないように促す。
「そうだね。リリーも、俺はもう大丈夫だから寝てくれ」
ダニエルが、ソファーにゆっくりと横になる。リリーは、グレン以外の男性に名前を呼ばれてビクッとしてしまう。なぜだかとても悪いことをしているような気分なのだ。
きっとグレンに知られたら、よく思われないことをしている自覚はある。だけど、これは人助けなのだから仕方がないのだと自分に言い訳をする。
「でも、何かあっても私、二階で寝ているから気づかないかもです……」
リリーは、本当に大丈夫なのか心配になる。
「いや、本当に見た目よりもだいぶましになっているから大丈夫だよ。腕も足もしっかり手当してもらったから。足も、固定して貰えたから痛みもそれ程ひどくないよ」
ダニエルは、リリーを心配させないようにか笑顔でそう言った。
「では、何かあったら大きな声で呼んで下さいね」
リリーはそれだけ言うと、リビングを出て自分の部屋に戻った。ベッドに入っても寝付けずに、ダニエルのことを考えていた。
隣国から来たと言っていたけれど、一体何のためにリリーが暮らすヴォリック国に来ていたのだろう?
馬から落ちたと言っていたが、どうしてそんなことになっていたのか……。たった一人で、この国に来たのか。沢山の疑問が頭に浮かんでくる。
さっきはまだ、熱もあったから聞けなかったけれど………。明日は、色々話を聞いてみたい。それに、足が治らないとグヴィネズ国に帰ることだってできない。
丁度、グレンが一カ月ほどこの家に来ることがないタイミングで良かったのか……。グレンのことを考えると罪悪感が沸く。
グレンは、リリーに執着が激しく他の男性としゃべることを快く思わない。だから、この五年半はグレンの従者以外の異性と話したことがなかった。
グレンだって、妻のライラから束縛が激しくて嫌な思いをしているはずなのに、リリーにはそれを求めている。
そのことに対して、グレン自身も悪いと思っていた。だけどこんな自分勝手な自分を、許して欲しいとリリーにいつも縋りつく。「リリーを愛しているから、誰にも渡したくないんだ」そう言って、グレンはリリーに許しを請う。
リリーもグレンに対して理不尽だと思う瞬間がある。だけどそこまで自分を求めてくれることに喜びも感じる。
リリーはずっと、幸せと不幸せの真ん中に立っているみたい。今日のこの新たな出会いが、リリーの中でどんな変化をもたらすのか、自分でもよくわからない胸のざわめきがあった。
医者に見せてあげたいが、リリーたちはグレンの従者を通じてしか他者と接触することができない。
今まで、大きな病気一つしてこなかったので薬もそんなに持っていなかった。バーバラと相談して、今夜一晩は様子を見て朝も熱が引かないようなら熱さましを飲ませようということになっている。
リリーは、男性が横たわるソファーの近くに椅子を置いて様子を見ていた。時折、額に乗せたタオルを水で濡らして変えてあげる。できることは少なかったが一生懸命看病をした。
椅子に座りながら男性を見ていると、ふとグレン以外の人と接するのがとても久しぶりなことに気がつく。グレンと出会って、自分が生まれ育ったフローレス家を出てから五年半が経とうとしている。
お父様もお母様もみんな元気にしているのかしら? グレンとの生活を選んでから、手紙一つ家族に送ることはなかった。
どこからライラの耳に入るかわからない為、極力外部との接触を禁止されていた。あまり考えることはなかったが、この五年半でリリーが手放したものは数えきれない。
グレンと一緒にいれば幸せで、その気持ちに嘘はないのだが……。最近のリリーは、こうやって一人でいると無性に寂しくなる。
アレンの成長を隣で見守っていると、ずっとこのままの生活でいいのか不安になってくるのだ。こんな森の中でだけ、誰とも会わずに生活するなんて良い訳がない。
自分だけのことなら仕方ないと割り切れるが、アレンのことは別だ。それにグレンが、今後アレンの教育をどうするのか意見を聞いていない。
いつか、別々に暮らすことになるのかと思うと、グレンに答えを聞くのが怖かった。アレンの未来を考えると、何とも言えない不安が襲ってくる。
自分は、母親なのだからしっかりしなくてはと思うのだが……。
「うっ……う……ん」
リリーが物思いにふけっていたら男性が目を覚ます。薄暗い部屋の中、自分がどこにいるのかわかっていないような表情だった。
「目が覚めましたか?」
リリーは、安心させようとできるだけ優しく声をかけた。
「ああ。そうか、君に助けてもらったんだね」
男性は、首をリリーの方に向けて言った。
「気分はどうですか? まだ熱が高くて、なかなか下がらないんですが……」
リリーは、椅子から立ち上がって男性が横になっているソファーの前にしゃがんだ。目線を合わせて顔を見る。
「ああ、昨日ケガをして丸一日ぐらいあそこにいたから、疲れもあったのかもしれない」
男性は、ケガをしていない方の腕を頭に置いて態勢を変えた。狭いソファーの上に寝ているから窮屈そうだ。
「お腹は空いてないですか? 食べられそうなら、パンがゆか野菜のスープならあります」
リリーは、さっきバーバラが作ってくれた料理を思い出す。起きた時にお腹が空いているようなら食べさせて下さいと言付かったのだ。
「お腹は空いてないんだが……。何か飲み物を貰えるかな?」
男性が、遠慮気味に答える。
「ちょっと待ってて下さいね」
リリーは、台所に行ってお水を持ってくる。男性のところに戻ると、水の入ったグラスをテーブルの上に置いて男性を起こしてあげた。
「お水です。どうぞ」
リリーは、テーブルの上のグラスを取って男性の手に持たせてあげた。男性は、ゆっくり水を飲む。グラスの中の水を全部飲み干してしまった。
「ありがとう」
男性が、グラスをリリーに返す。リリーは、グラスを受け取るとずっと気になっていたことを聞いた。
「あの……、お名前を聞いてもいいですか?」
熱はあるものの、意識はしっかりしているしここに連れて来た時よりも幾分かは良くなっている気がした。
「名前も名乗らずにすまない。私は、ダニエル。隣国グヴィネズ国から来た者だ」
名前だけしか名乗らないということは、貴族ではなく平民なのだと察する。でも、人を引き付けるような青い目がとても魅力的だ。平民にしては、存在感が強いような気がした。
「そうなんですね。私は、リリーと言います。さっき手当をしたのがバーバラ。男の子が私の息子でアレンです」
リリーは、ダニエルに合わせて名前だけを名乗った。貴族だと知ったら、居づらく思うだろうと敢えてそうした。
「突然、何も知らない俺なんかを助けてくれて本当にありがとう。このお礼はきちんとするから」
ダニエルは、リリーに頭を下げてお礼を言った。
「そんな、大したことしていませんから。それより、今はまだ夜中です。まだ眠れるようなら眠った方がいいですよ。朝になったら少しは、熱が下がっているといいのですか……」
リリーは、首を振ってダニエルに気にしないように促す。
「そうだね。リリーも、俺はもう大丈夫だから寝てくれ」
ダニエルが、ソファーにゆっくりと横になる。リリーは、グレン以外の男性に名前を呼ばれてビクッとしてしまう。なぜだかとても悪いことをしているような気分なのだ。
きっとグレンに知られたら、よく思われないことをしている自覚はある。だけど、これは人助けなのだから仕方がないのだと自分に言い訳をする。
「でも、何かあっても私、二階で寝ているから気づかないかもです……」
リリーは、本当に大丈夫なのか心配になる。
「いや、本当に見た目よりもだいぶましになっているから大丈夫だよ。腕も足もしっかり手当してもらったから。足も、固定して貰えたから痛みもそれ程ひどくないよ」
ダニエルは、リリーを心配させないようにか笑顔でそう言った。
「では、何かあったら大きな声で呼んで下さいね」
リリーはそれだけ言うと、リビングを出て自分の部屋に戻った。ベッドに入っても寝付けずに、ダニエルのことを考えていた。
隣国から来たと言っていたけれど、一体何のためにリリーが暮らすヴォリック国に来ていたのだろう?
馬から落ちたと言っていたが、どうしてそんなことになっていたのか……。たった一人で、この国に来たのか。沢山の疑問が頭に浮かんでくる。
さっきはまだ、熱もあったから聞けなかったけれど………。明日は、色々話を聞いてみたい。それに、足が治らないとグヴィネズ国に帰ることだってできない。
丁度、グレンが一カ月ほどこの家に来ることがないタイミングで良かったのか……。グレンのことを考えると罪悪感が沸く。
グレンは、リリーに執着が激しく他の男性としゃべることを快く思わない。だから、この五年半はグレンの従者以外の異性と話したことがなかった。
グレンだって、妻のライラから束縛が激しくて嫌な思いをしているはずなのに、リリーにはそれを求めている。
そのことに対して、グレン自身も悪いと思っていた。だけどこんな自分勝手な自分を、許して欲しいとリリーにいつも縋りつく。「リリーを愛しているから、誰にも渡したくないんだ」そう言って、グレンはリリーに許しを請う。
リリーもグレンに対して理不尽だと思う瞬間がある。だけどそこまで自分を求めてくれることに喜びも感じる。
リリーはずっと、幸せと不幸せの真ん中に立っているみたい。今日のこの新たな出会いが、リリーの中でどんな変化をもたらすのか、自分でもよくわからない胸のざわめきがあった。
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