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006 終わりを迎えた時
しおりを挟むそれから二年、アンジェラは学園での生活に耐えていた。
そしてその時がついに訪れた――――。
アンジェラが学園から帰って来ると、執務室に来るように父親から呼ばれた。アンジェラは、ドキンッと胸が大きく跳ねる。
アンジェラは、自分に言い聞かせる。まだ、確定ではないわ。落ち着くのよ、アンジェラ。
深呼吸をして、アンジェラは父親の執務室の扉をコンコンと叩く。
「アンジェラです、入ってもよろしいでしょうか?」
中から父親の声がする。
「入れ」
アンジェラは、扉を開けて中に入る。父親が、執務机に座っていつものように仕事をしていた。アンジェラは、父親の前に足を進める。
「すまんな。ゆっくり話す時間がなくて」
父親が、作業の手を止めてアンジェラを見る。
「いえ、大丈夫です」
アンジェラは、これから話されることに予想がついていたが、とにかく落ち着けと深呼吸する。
「単刀直入に言うと、アレックス殿下との婚約が解消された。アンジェラ、これからお前はどうしたい?」
父親は、アンジェラを見据えて言葉を発した。
その言葉を聞いたアンジェラの瞳から、ポタポタと涙が零れる。言葉にできない気持ちが、胸の奥からせり上がって来る。
嬉しい。やっとだ、本当にやっと。今まで頑張ってきた記憶が、何度も何度も悔しくて悲しくて泣いた記憶が、どうして私なんだと憤った記憶が、頭の中で渦を巻く。
でももう、これであの男に会わなくていいのだと思ったら、気が抜けてしまった――――。
目を開けた時は、自分の部屋のベッドの上だった。
それからが大変だった。父親と母親が、アンジェラの部屋に駆け込んで来て、そんなに婚約解消が辛かったのかと勘違いされていたから。
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