上 下
3 / 3

風化の中で:カタオカが死んだ

しおりを挟む

  風化の中で:カタオカが死んだ



  誰に聞いたのかが、思い出せない。


  
  カタオカが死んだ。
  大学の同期で年賀状だけはつづいていた。

  大学を卒業してからは、一度も会ったことはなかった。




  カタオカが死んだと、フクダが連絡してきたんだった。思い出した。

  ボクは、クルマの中で中島みゆきを聴いていた。フクダは何度も、ボクがボクかを確かめた後に、カタオカが死んだと言った。


  
  
  




  大学時代に、ボクはカタオカと神戸にいた。
  



  三の宮の大丸デパートの階段の踊り場に、ジュークボックスがあった。
ボクはカタオカとそこにいた。

  


  ピンクレディーが歌っていた。




   【♪ペパーーーけぶ♪】

  

  人影はない。
  演奏ランプがともる。

  ボクとカタオカは階段に腰掛け、ピンクレディーがおわるのを待った。
  



  ソノイさんだ。

  ようやく思い出した。


  午後七時の、鯖江市長泉寺の交差点の信号待ちで、高校二年生の時に好きだった女子の名前が思い出せない。

  ボクは、話しかけたこともないソノイさんに、福井鉄道西鯖江駅にあった映画の広告『カッコーの巣の上で』に誘おうと決断した。


  結局、話しかけることすら出来なかったのだが。



  鯖江にだって渋滞はある。

  今夜は赤信号を三度も待った。
  ずっと気にかかっていたが、ソノイさんだと今思い出した。





  ジュークボックスにコインを入れる。
  百円で三曲選べる。

  そのコインはボクのだったか、カタオカのだったか。




  タイトルをざっと見回したボクは、さだまさしの『檸檬』を選んだ。
カタオカはオフコースの『虹とスニーカーの頃』を選んだ。


  三曲目に何を選んだのかはおぼえていない。


  ボクは、数年前から取りかかった、自分データベースでカタオカを検索してみる。


  





しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

僕の父は宇宙人

パニ
エッセイ・ノンフィクション
奇っ怪な行動の父とその家族とのやりとり、不思議な家族関係など、理解できない家族との出来事や日々の理解できない行動の体験談

中学生最後の恋 完全実話

ゆうじ18
エッセイ・ノンフィクション
僕が中3でした初恋。どんな毎日だったか、最後の結末。一年間の思い出を完全実話で送ります。

40歳になるので、奥さんにたくさん抜いてもらった!

味噌村 幸太郎
エッセイ・ノンフィクション
キャッチコピー 「癖になります」  僕は今年で40歳になるおじさんだ。  とあることをずっと体験したかった。  それは多分、女性でしか、詳しくないことだった。  だから、奥さんにしてもらった。  たくさん、たくさん、抜いてもらい、気持ち良くなった。  それは正に天国だった。

(ココロン)

夏目9
エッセイ・ノンフィクション
心や頭、そしてその周りの話。 混沌としていて、フィクションとノンフィクションが入り混じってます。 それでもよければ。 投稿頻度はまだ決めてません。 お楽しみ頂けたら幸いです。

わかっている組

山本雪代
エッセイ・ノンフィクション
かなり、わかってるらしい。

フィリピン放浪記

kenta452002
エッセイ・ノンフィクション
フィリピン南洋のスラム。ジェネラルサントスで裸にひん剥かれた私の放浪の始まりです。フィリピン各地を巡りながら現地の人々とふれ合います。時には襲われ時には癒され・・・数々の試練や淡い思い出の成れの果てにホームレス生活が待ち受けています。 作中の挿絵イラストはオリジナルです。描きました。ただ画像の挿絵はお借りしたモノが殆(ほとん)どです。場面のイメージにマッチするよう選びました。 「小説家になろう」「ポケクリ」等のサイトで同作を掲載しております。

発達障害の長男と母としての私

遥彼方
エッセイ・ノンフィクション
発達障害の長男と母としての私の関わり方の記録というか、私なりの子育てについて、語ろうと思います。 ただし、私は専門家でもなんでもありません。 私は私の息子の専門家なだけです。心理学とか、医学の知識もありません。きっと正しくないことも語るでしょう。 うちの子とは症状が違うから、参考になんてならない方も沢山いらっしゃるでしょう。というよりも、症状は一人一人違うのだから、違うのは当たり前です。 ですからあなたは、あなたのお子さんなり、ご家族の方の専門家になって下さい。 願わくば、その切っ掛けになりますよう。 ※私の実際の経験と、私の主観をつらつらと書くので、あまり纏まりがないエッセイかもしれません。 2018年現在、長男は中学3年、次男小6年、三男小4年です。 発達障害だと発覚した頃は、長男3歳、次男6カ月、三男はまだ産まれていません。 本作は2017年に、小説家になろうに掲載していたものを転記しました。 こちらでは、2018年10月10日に完結。

償い〜心«イノチ»〜

sho
エッセイ・ノンフィクション
過去の出来事と私のその時の気持ちを ノンフィクションで書きます。 読みにくいかもしれませんが その時はごめんなさい。 内容は、初めての妊娠から人工中絶。 その後の事を少し書きたいと思います。 胸糞悪い思いをされる方も いらっしゃると思いますが 同じ思いをする娘が少しで 少なくなるように… それから、私の償いが少しでも 天国に届くように 書いていきたいと思っています。 少し時間がかかるかもしれませんが 暖かく見守ってください。

処理中です...