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第1章
第3話 魔王がいないならば復活させればいい
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イカつい男に紹介される形で俺は顔を真っ白にした黒髪ボブの前に座っていた。
なんて話しかけようかと迷っていたら、彼女が先に話しかけてきた。
「…………なんで、アンタまだこの世界にいるのよ……うぷっ」
「…………この世界にいる? それはどういう意味だ? 俺はついさっきこの世界に飛ばされた転生者だよ」
「…………? 魔王が討伐されたのに?」
俺の転生に疑問に思っている彼女に、どのような経緯でここに飛ばされたのかを説明した。
説明している最中には、あのハゲを思い出してイライラが止まらなくなった。
「ぷぷっ、そんなことがあるのね! キャハハハハ! あなた運が悪い!」
俺の転生話を大声で笑う彼女にもイラッとくる。
「キャハハハハ! 笑い疲れる、こんなに笑ったのは久しぶりにね。でも勘違いしないでよ、運が悪いのは私もよ」
「運が悪いだと?」
「そうよ。だって私魔王倒したのにこの世界に残ってしまっているんだもん」
「?!?! どういうことだよ。魔王を倒したのになんでこの世界に残ってる? まさかこの世界に未練があるとか?」
おねぇさん、お酒追加で! と俺の疑問に答える前に注文をしたサナという黒髪ボブは新しいジョッキを手に持つ。
「…………かったのよ」
「え?」
「いなかったのよ!! 私は魔王討伐の恩賞式に!!」
「ど、どういうことだ」
「魔王討伐の次の日、その勝利に貢献した黒髪一向は王都に召集されたわ。当然討伐の報酬授与式なわけだけど、実はそこに私たちをこの世界に転生させた例のおじいさんが現れたの」
「おじいさんってあの脂ハゲの?」
「ええアンタの想像と一緒だと思うけど。そして黒髪一向はそのおじいさんから魔王討伐の報酬を選択することができた」
たとえば、現世に戻る人、他の異世界に転生することを望んだ人、このまま世界に残ることを選んだ稀有な人がいたみたいね。まぁ9割以上はこの世界から脱したけど。と彼女は話す。
そして、ただ私は。と言葉を繋げる彼女を俺は遮る。
「その場にいなかった? なぜだ。魔王戦で大怪我したからか?」
俺の質問に彼女はジョッキを飲み干してから答える。
「二日酔いでしんでいたのよ」
「ああそうか。それは気の毒のことを聞いたn………………………………は?」
ん? 今なんて。
「二日酔いよ二日酔い。魔王討伐の日に祝勝だぁ! って人生一飲んだらね、次の日の恩賞会に出席できなかったの。それで私には討伐報酬は何もなく、この世界に取り残されたってわけ」
コイツありえないほどのバカだ。二日酔いで現世に戻るチャンスを無くした? どこまでバカなんだ。馬も鹿もコイツには勝てねぇよ。
「あーその話してきたらムカついてきた! おねぇーさん、お酒追加ー」
酒ッッ!! と目の前のアホンダラはアルコールを口に入れていく。
「…………じゃあサナ……さんはこのあとどうするんだ」
「知らないわよ。私だって困ってるんだから。魔王を倒すしかないのに魔王は倒してパーツに分けて封印してるんだから」
さっきも聞いたなパーツで封印。それはどういうことだ。
俺は飲んだくれに思った疑問をぶつけてみる。
「…………魔王はとんでもないほど強かったわ。黒髪複数名で挑んでなんとか勝てるほどの強さよ。そして魔王を撃破した時にわかったの、討伐した魔王は長い時間をかけて復活する能力があることがね。次復活した時にはいよいよ戦える人はいない」
だから。
「魔王を両手脚、頭、胴、心の7つのパーツに分けてそれぞれを強力な結界で封印することにしたの。そうすれば復活したとしてもそれぞれのパーツでしかないから、封印の外に出ることはない。こうして安心安全な状態にしてから黒髪たちは現世に戻った」
流石勇者様たちだ。自分たちが帰った後のアフターケアもできるなんて、そりゃイケメンで描かれるよな異世界主人公。
そんなことを思うと同時に俺は一つの可能性に気付いた。
「…………なぁそのパーツを全て集めれば魔王は復活させられるか?」
「ん? まぁできるでしょうね。魔王は強力だからパーツをくっつければそのエネルギーで復活すると思うけど、それがどうし……ってまさか?!」
俺はニヤリと笑う。
「ああそのまさかだ。魔王がいないならば復活させればいい。そしてそいつを討伐すれば俺たちは魔王を倒したことになり、現世への扉が開かれる」
「ッッ!!!」
これが令和の名探偵赤増か。
「どうだ? これはアリじゃないか? お前も現世に戻りたいだろ?」
「…………ふ。天才の転生者ねアンタ。いいわ乗ったその話。どうせここでお酒飲んで人生消費するくらいならアンタの話を成し遂げるのがいいわ!」
ふっ。と俺たちは笑いながらガシッとお互いの手を握った。
「赤増成和」
「神楽紗奈」
お互いの自己紹介をした。俺たちの方針は決まった。
魔王を復活させて魔王を倒す。
「さぁまずは情報収集といこうか」
俺が彼女の手を離そうとした刹那。
「うぷ。ごめん、飲み過ぎt」
ゲボォォォォと彼女の口から出た何かが俺の体に降りかかった。
「お前ェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ」
イカつい男に紹介される形で俺は顔を真っ白にした黒髪ボブの前に座っていた。
なんて話しかけようかと迷っていたら、彼女が先に話しかけてきた。
「…………なんで、アンタまだこの世界にいるのよ……うぷっ」
「…………この世界にいる? それはどういう意味だ? 俺はついさっきこの世界に飛ばされた転生者だよ」
「…………? 魔王が討伐されたのに?」
俺の転生に疑問に思っている彼女に、どのような経緯でここに飛ばされたのかを説明した。
説明している最中には、あのハゲを思い出してイライラが止まらなくなった。
「ぷぷっ、そんなことがあるのね! キャハハハハ! あなた運が悪い!」
俺の転生話を大声で笑う彼女にもイラッとくる。
「キャハハハハ! 笑い疲れる、こんなに笑ったのは久しぶりにね。でも勘違いしないでよ、運が悪いのは私もよ」
「運が悪いだと?」
「そうよ。だって私魔王倒したのにこの世界に残ってしまっているんだもん」
「?!?! どういうことだよ。魔王を倒したのになんでこの世界に残ってる? まさかこの世界に未練があるとか?」
おねぇさん、お酒追加で! と俺の疑問に答える前に注文をしたサナという黒髪ボブは新しいジョッキを手に持つ。
「…………かったのよ」
「え?」
「いなかったのよ!! 私は魔王討伐の恩賞式に!!」
「ど、どういうことだ」
「魔王討伐の次の日、その勝利に貢献した黒髪一向は王都に召集されたわ。当然討伐の報酬授与式なわけだけど、実はそこに私たちをこの世界に転生させた例のおじいさんが現れたの」
「おじいさんってあの脂ハゲの?」
「ええアンタの想像と一緒だと思うけど。そして黒髪一向はそのおじいさんから魔王討伐の報酬を選択することができた」
たとえば、現世に戻る人、他の異世界に転生することを望んだ人、このまま世界に残ることを選んだ稀有な人がいたみたいね。まぁ9割以上はこの世界から脱したけど。と彼女は話す。
そして、ただ私は。と言葉を繋げる彼女を俺は遮る。
「その場にいなかった? なぜだ。魔王戦で大怪我したからか?」
俺の質問に彼女はジョッキを飲み干してから答える。
「二日酔いでしんでいたのよ」
「ああそうか。それは気の毒のことを聞いたn………………………………は?」
ん? 今なんて。
「二日酔いよ二日酔い。魔王討伐の日に祝勝だぁ! って人生一飲んだらね、次の日の恩賞会に出席できなかったの。それで私には討伐報酬は何もなく、この世界に取り残されたってわけ」
コイツありえないほどのバカだ。二日酔いで現世に戻るチャンスを無くした? どこまでバカなんだ。馬も鹿もコイツには勝てねぇよ。
「あーその話してきたらムカついてきた! おねぇーさん、お酒追加ー」
酒ッッ!! と目の前のアホンダラはアルコールを口に入れていく。
「…………じゃあサナ……さんはこのあとどうするんだ」
「知らないわよ。私だって困ってるんだから。魔王を倒すしかないのに魔王は倒してパーツに分けて封印してるんだから」
さっきも聞いたなパーツで封印。それはどういうことだ。
俺は飲んだくれに思った疑問をぶつけてみる。
「…………魔王はとんでもないほど強かったわ。黒髪複数名で挑んでなんとか勝てるほどの強さよ。そして魔王を撃破した時にわかったの、討伐した魔王は長い時間をかけて復活する能力があることがね。次復活した時にはいよいよ戦える人はいない」
だから。
「魔王を両手脚、頭、胴、心の7つのパーツに分けてそれぞれを強力な結界で封印することにしたの。そうすれば復活したとしてもそれぞれのパーツでしかないから、封印の外に出ることはない。こうして安心安全な状態にしてから黒髪たちは現世に戻った」
流石勇者様たちだ。自分たちが帰った後のアフターケアもできるなんて、そりゃイケメンで描かれるよな異世界主人公。
そんなことを思うと同時に俺は一つの可能性に気付いた。
「…………なぁそのパーツを全て集めれば魔王は復活させられるか?」
「ん? まぁできるでしょうね。魔王は強力だからパーツをくっつければそのエネルギーで復活すると思うけど、それがどうし……ってまさか?!」
俺はニヤリと笑う。
「ああそのまさかだ。魔王がいないならば復活させればいい。そしてそいつを討伐すれば俺たちは魔王を倒したことになり、現世への扉が開かれる」
「ッッ!!!」
これが令和の名探偵赤増か。
「どうだ? これはアリじゃないか? お前も現世に戻りたいだろ?」
「…………ふ。天才の転生者ねアンタ。いいわ乗ったその話。どうせここでお酒飲んで人生消費するくらいならアンタの話を成し遂げるのがいいわ!」
ふっ。と俺たちは笑いながらガシッとお互いの手を握った。
「赤増成和」
「神楽紗奈」
お互いの自己紹介をした。俺たちの方針は決まった。
魔王を復活させて魔王を倒す。
「さぁまずは情報収集といこうか」
俺が彼女の手を離そうとした刹那。
「うぷ。ごめん、飲み過ぎt」
ゲボォォォォと彼女の口から出た何かが俺の体に降りかかった。
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