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夏派

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十八章

148話 vs妖術隊隊長 敵も覚醒しないと不公平

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「…………なっ、なんですか、この炎の剣の雨は!!!!!!」

 妖術隊隊長アートが突如として空に現出させたのは、星の数ほどある炎の剣であった。

「流石に私もこの数の落下地点を予測することはできませんよ?!」

 新キャラ警備隊隊長マンジャレが露骨に息を呑み込んで呟く。

「我輩自身、枯渇している魔力を振り絞ったものはに使っているから、これに対応はできん!!」

 嘆いていても事態は一切好転しない。とその時、最前線にいた3人の伝説たちから声がかかった。

「ネネちゃん! ここはお姉さんたちに任せて、この技の後すぐにあのバケモノに攻撃してちょうだい!!」

「任せてって、シャムルさんたちはアレに対抗できるんですか?!」

 ネネの疑問に彼女らは行動で答えた。

「ふぅー、久しぶりやな完全獣フルブルートするのー。ウチあれ四足歩行になるから嫌やねん」

「ミューはまだ四足歩行だからいいだろ。俺はこの長い杖を自分のオデコにぶっ刺さなきゃいけねぇんだからよ」

 そう言うと、シマウマの妖魔ゼブレータは持っていた長い杖を自分のオデコに刺した。

「黒と白よひとつになれ! 染まれ縞馬ゼブラ

「根性を見せろや! 高まれ山猫」

 1匹はグレビーシマウマ。他のシマウマよりも巨大で、シマシマの線が細いのが特徴だ。

 もう1匹はオオヤマネコ。夜間に行動が盛んで、基本的運動能力が著しく高い。

 完全獣フルブルートになっていると、キツネが叫び声を上げて空から炎の剣を降らせた。

「抱擁の翼」 

 まず最初にインドクジャクのシャムルはその翼を広げて羽根を飛ばす。全長1000メートルほどの幅に均等に飛ぶ羽根は網の形を象り、炎の剣の進行を止める。

「ブラックスペル カオス」  

 その隙に詠唱を終えて頭に刺さった杖に黒魔法を溜めたシマウマの妖魔が、シャムルの壁を突き破り始めた炎の剣たちに向かってその魔法を穿つ。真っ黒な波動が全ての炎の剣を消滅させる。

「今よ! ネネちゃん!!」

 シャムルの指示を聞いてネネはすぐに己の召喚獣へ命令を下す。

「宝石獣!! パール」

 体中に宝石が埋め込まれた大蛇の口から、薄ピンク色の破壊光線が放たれた。その光線は一直線に炎の剣を消されて困惑しているバケモノへと襲う。

 悲鳴をあげるキツネだが、それでやられ続けるわけではない。

「あと3秒後に霊化するぞ!!!」 最も早く気づいたのは、デブじゃなくて警備長。そしてそれに最も早く反応したのはネコの妖魔であった。

 アートの体が霊化し、宝石獣の攻撃がすり抜けたのと同時に、四足歩行になったミューは空中を蹴りながら空高く飛び上がり右前足を構えていた。

「たこ焼きみたいなお腹のおっさん、ナイスや!!!」

 殴ッッ!!!! 霊体を捉える肉球の拳がクリーンヒットした。そしてそのまま巨大のアートは膝から崩れ落ちる。

「今、ミューさん、空中を蹴っていたような…………」

「どうやら彼女の後ろ足は空中を壁のように蹴ることができるようですね」

 警備長がそう呟くと、膝から崩れ落ちていた巨大な体が動いた。

「許さん許さんぞォォォォ!!!! 凝縮」

 縮ッッ!!! その巨大な体が一瞬で大人の人間ほどの大きさまで縮んだ。

「ふふふ、どうやら巨体だったから幾多の攻撃を受けていたようだ。ならば話は簡単だ。先程の巨大な力を維持しつつ、攻撃を受けにくいように体を縮めればいい」

 ここからの私は止められないぞ。妖術隊隊長アートが一歩足を踏み出した刹那。警備隊隊長マンジャレの顔が歪んだ。

「まず1人目」 ミキッッと炎の左腕に顔を掴まれたマンジャレが近くの木に勢よくぶつかった。

「お前は私の動きを予測できるからな。最優先始末標的だ」

 炎に包まれたマンジャレからは悲鳴が上がる。

「…………し、シカイフク!! マンジャレさんを!!!!」

 4匹目の召喚獣である回復担当に声をかけた刹那。蹴ッッ!!!! 炎の右足の攻撃を受けたシカイフクが岩岩を貫通しながら200メートルほど飛ばされる。

「2体目。回復担当も真っ先に潰す必要がある」

 続いて3人目。

「私の霊化に触れるお前だ、褐色ネコ」

 殴ッッ!!! 炎の右腕がネコの妖魔ミューを捉える。が。

「ホワイトスペル エンジェル」

 その拳を構えていたアートを吹き飛ばすほどの雲の旋風が虚空を切った。

「こちらとしてもミューを失うわけにはいかないからな」

「フン、褐色ネコを倒すことには失敗したが、構わないさ。小さくなったこの私に対応できるはずもないさ」

「ダイヤモンド」 無色透明の光沢を持つ破壊光線が大人サイズの9本の尾を持つモンスターへとぶつかった。

「グバ!! チッ、霊化」

「ボクのシカイフクを飛ばした件は許しませんよ?」

「その光線もなかなかに厄介だな。圧倒的守備力を持つクジャクに、黒と白の魔法を放つシマウマ、霊化に対応するネコ、そして凄まじい破壊力を持つ宝石の獣か。面白い、一気に倒してやるよ」

 彼女の体からバチバチと燃え上がる炎の音が聞こえてきた。しかし体は霊化のまま。

「九尾 中日なかび 精神炎悪インジュアルヘル

 それは幽霊が出てくるような透明性あふれる紫色の炎であった。人魂のような幾多のその炎が彼女の周囲を浮遊すると、獲物を見つけたチーターのように素早い動きでこちらへ向かってくる。

「ッッ?!! ジャカール!!」

 ジャカル型モンスターに乗るとネネは一目散にその場から逃れる。直感であれに触れてはいけないと思えた。ジャカールの機動力に元からその炎から離れていたということが彼女を無傷にさせた原因であった。

 しかしその一方でその炎を喰らってしまった人物たちが。

 その攻撃を受けた者たちは無気力にただ立ち尽くしている。まるで魂でも燃やされたように。

「しゃ、シャムルさん!! ゼブレータさんにミューさんまで!!!」

「キャハハハハハハ!! これで大きな邪魔は全て消えたわね」

「な、何をした?!!」

「精神を燃やした」

「…………………………………………」

「簡単に言えば植物状態にさせたって感じね。私を倒さないと彼らは永遠に立ち尽くすマネキンよ」

「お、お前ェェェェェェェ!!!!!!」

 ネネの周りには、ジャカール、フライハアト、アルマジーロ、宝石獣が出現していた。

「許さないですからね」
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