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夏派

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十六章

134話 vs妖術隊妖怪使い 鵺はヌエ

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「ファイナルバトルは、戦闘だァァァァ!!!!!」

 実況の声と観客の声援が大きく聞こえたかと思うと、フィールドが大自然へと変更された。

「Hi! ボクっ子。遂に最終戦ですぅ」

「たらこちゃんか。…………まぁここで勝つのはこのボクですけどね」

「Flatに行こう。不正なんかはするなよボクっ子」

「どの口が言ってるんですか」

 お互いに牽制し合っていると、その険悪な雰囲気を壊すかのように実況の声が響く。

「ファイナルバトルの戦闘について解説します! これも他のバトル同様に各々1匹ずつのモンスターを召喚して、戦闘を繰り広げてもらうものです! 先に相手を戦闘不能もしくは降参させた方が勝者です。もちろん不正は絶対NGですよ!!」

 チラッとゴーストを見た実況は、一度わざとらしく咳をしてからモンスター紹介に移る。

「それではモンスター紹介です!! チャレンジャーネネ!! モンスター召喚をお願いします!!」

「召喚 ジャカール」

 光に包まれたところから、ジャカル型モンスターのジャカールが出現し、低く唸る。

「続いて、体育館指導者ゴースト!! 妖怪召喚をお願いします!!」

「妖怪召喚術 参 ぬえ

 鵺。その妖怪の形は特徴的である。顔は猿、体は狸、手足は虎で尻尾が蛇の妖怪で、鳴き声も『ヒョーヒョー』とこれまた特徴的だ。

(ヌエですか…………。いろんな生物の特徴を合わせ持つのは、なかなかに強そうですね)

 召喚の光が明けて、その妖怪の姿が目に入って来た。

「This is my ヌエ」

 顔はブタ。体はウシ。手足はイノシシ。そして尻尾は鶏の顔。

「…………………………………………………………………………は」

「This is my pretty ヌ」

「キメラじゃねぇか!!!!!!!!!!」

 ネネはそのバケモノを見て思わず声を上げる。

「何ですかそのバケモノは!! どこにヌエの要素?!! ヌエじゃなくて、むしろキメラじゃねぇか!!!」

「わ、what do you say?!!! どっからどう見ても愛しのヌエでしょ!! ほら鳴き声だって…………」

 そう言われて耳を澄ましてみると。

「ブーモケコッコー」

「…………そうそう、ヌエと言ったらこの特徴的な鳴きごじゃねぇだろ!!! なんだその鳴き声?! しかもブタの顔からじゃ無くて、尻尾のニワトリの顔が鳴くのかよ!!」

「Anyway。これが私のヌエだ。笑っていられるのも今のうちだぞ」

「別に笑ってはないんですけどね。それにそっちこそ、ボクに負けて、ジョジョーランドに出荷されないように」

 遂に最終戦が始まった。



「行け! ジャカール!! 咬み殺せ!!」

 素早いステップを踏みながらネネの相棒ジャカールは、ジビエのヌエに噛みつきにいく。

「Command  ヌエ! 突進」

 それに対してヌエはイノシシの足をエンジンをかけてるかのように回して、こちらへと突っ込んでくる。

「ッッ!! かわせジャカール!!」

 指示を出すとジャカールは何の危なげもなくその突進を回避する。

「Stop!! 止まれヌエ!! ストーーープ!!!」

 ゴーストは指示を出しているが、かわされた側のヌエはそのまま突進を続けて、緑地と化したフィールドの木へと鈍い音を立ててぶつかる。

「「…………………………………………………………………………」」

 トレーナー同士の間に気まずい空気が生まれた。

「お、おぉーと。ゴースト選手のヌエにブレーキという単語はないのか?! 自身の攻撃で反動ダメージを受けてしまった!! しかも回避されて!!」

 微妙な空気を察した実況が何とか場を繋ごうとするが、それはむしろ悪手だ。

「あ、あのー…………ちゃんとバトルやってくれませんかね」

「……………………お、of course。しかしだな、私のヌエの技の命中率は10%だからな」

(じゃあ何故、戦闘にそのモンスターを出してきた)

 そうは思っていても戦闘は続く。

「怯んでるこの隙だ!! ジャカール噛みつけ!!」

 その指示を受けた獣のモンスターは、木にぶつかり気絶しかけているヌエに向かって、自慢の牙を突き立てる。

 しかし。

「……………………クソ」

「LOL LOL!! あまり舐めてもらっては困るな。私のヌエの皮膚の硬さは、鉄並みだ」

 次は私のターンだ。と言ってゴーストは再びヌエに指示を出す。が。

「ヌエ!!」「当てろよ!!」「また失敗!!」「ストーープ!!!」「今度はなぜつまずく?!!」

 もはや戦闘になっていなかった。あちらの攻撃は猪突猛進で真っ直ぐにしか来ないが、こちらの攻撃は相手の硬い獣皮膚に阻まれていた。

「「ハァハァ」」

 トレーナーもモンスターも疲労し切っていた。かわせるが当たらず、効かないが当たらない。そんな均衡状況がかれこれ10分は続いていた。また、その状況に飽きた観客たちは帰宅の準備を始め、実況ですら持参した本を読む始末である。

「Bad。悪い展開だ。皆がもう呆れている」

「そう…………ですね」

「このままだと色々とアレだからな。そろそろ本気で終わらせてやる!!! ヌエ、巨大化!!!」

 ヌエに闇の光が当たった。それ見た実況は急いで解説を始める。

「な、何とゴースト選手のヌエが巨大化したァァァァ?!! 大きさは家一軒分はありそうだ!!」

「LOL。ふは、全てを終わらせてしまえ!! ジビエアタック!!!」

 飛ッッ!!! その指示を受けた巨人ヌエは己の脚力だけで、空高くに跳躍する。そして最高到達点にまで行くと、ネネたち目掛けて水泳の飛び込みのように、回転しながら落ちてくる。

 簡単に言えば、家がバク転しながら落ちてくるようなものだ。

「うぉぉぉ!!! 巨大化したヌエが隕石のように落下してくるゥゥ!!! ネネ選手どうする?!!!」

「どうするって…………そりゃ迎え撃つしかないですよね」

 その言葉が聞こえたのか、ジャカールは自身の尻尾を垂直に立てる。

「Can you stop?!! 鉄のように硬く隕石の如く落ちてくるヌエをあなたたちは止められるか?!!!」

「…………たしかにボクのジャカールの牙に爪では、あなたのヌエに傷をつけることはできません」

 でもね。

「この2週間で鍛えてきたのは、磨いてきたのは、」

 新しい武器。

「見せましょうジャカール!! ボクたちの2週間を!!」

 落下してくるヌエに向かって、ジャカールは飛び立つ。その尻尾を鎌のように振るいながら。

「ファインリーテイル」

 刻ッッ!!!!! 高速で振るわれた尻尾を通り過ぎたその巨体が、全て小さなサイコロのような形に切り刻まれた。

「…………今夜はサイコロステーキですね」




「…………ぬ、ゴースト選手のヌエが戦闘不能になったため、しょ、勝者ネネ選手!!!」

 帰宅の準備をしていたはずの観客席から賛美の声が聞こえてくる。

「これでネネ選手が2勝したため、《vs妖術隊妖怪使い》の勝者もネネ選手となります!!!」

「…………Really…………。悔しいが負けは負けだ」

「まさか本当にこのバラエティみたいな3本勝負で決着がつくとは…………」

「This is real。そう契約したからな。…………あとはこれだ」

 そう言ってネネに鉄で出来た小さなヌエを渡してくる。

「This is 『体育館指導者名札』だ。私からひとつ手に入れたということは、残り7つでモンスターリーグへ参加できるぞ。Fight!!」

「…………………………………………………………………………」

 無言でそのバッヂを受け取ったネネは、足早にその体育館から出ていく。



 妖術隊妖怪使いゴーストvsネネ。

 勝者 超ぺたんこ。
 
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