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夏派

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十四章

115話 ジジイ

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「な、何やってるんですかエナさん!!!!」
「その人が今回の外交相手の村長さんですよ!!!」
「ナウローディングで死にかけじゃないですか!!!」

 コイツが村長かよッッ!!!!!!!!


 今までのーあらすじ。
 フォンセに課せられた借金帳消しとして、妖魔島での護衛を任されたエナ一行。その島の神社で盗みを働く人を発見し、殴ったところそれは今回の外交相手であった。さてどうする? とまぁ、たったの数行で2.5話分を振り返る。中身空っぽを2.5話もかけた作者に拍手喝采。




 どうしよ!!!! 今回のキーパーソン、私の殴りで三途の川をダイビング中だよ!!!

 いきなりのピンチである。

 私のパンチを喰らったジジイは頭部を木に激突させ、永眠してしまったのかと思わせるくらい黙っている。

「お、おーい。おじいさんー」

 完全に気絶しているジジイを私は優しく平手打ちする。もちろん気絶から目を覚まさせるためだ。

 撃ッッ!!!!! 優しく触れたその平手と頬から、激音が鳴り響いた。

「エナさァァァん?!!! 何やってんの?!!!」

 ネネが絶叫した。

「お、おじいさん起こそうと思って、平手打ちしただけなのに…………」

 私の平手打ちを受けたジジイの左頬は、パンをかじられた後の顔になっていた。

「ど、ど、ど、Doしよう?!! どーすればいいの?」

 焦った。ともかく焦った。キーパーソンを殺しかけただけでなく、頬を無くすとかいう悲劇まで生んでしまった。

 その時であった。

「おじぃーちゃん!!!!」

 石段を駆け上がる音とともに、少年の明るい声が聞こえてきた。

「こ、この声は…………ゴン君!」

 誰? と私はフォンセに問う。

「ゴン君とは、村長さんのお孫さんです。両親を早くに亡くしたゴン君にとっては、村長さんはお爺ちゃんというより、お父さんのような感じでしたね」

 ってことは…………私が殺ったやった人物を大切に思う孫がここに来るってこと?!!! ナニソレ、笑いがでるくらいヤバいじゃん。

「くっ、ともかく! ゴン君が来る前に村長殿をなんとかせねばいかんぞ!! 護衛共!!」

 魔法長アムールの言葉を聞いて、私は筋肉に侵食された脳をフル回転させる。

「と、とりあえず、スコップ持ってきて!! 兎にも角にもまずは埋めましょう!」

「アホかァァァ!!!! 埋めたら罪増えるだろうが!!!」

 2号が私にツッコミを入れる。

「そ、そっか」

「いやエナさん。何納得してるんですか? 埋めちゃダメでしょ普通」

 ネネにそう言われて、私はまた頭を回す。

「あーも!! とりあえず私とフォンセとかでその子供の対応するから、ネネちゃんと刀変態でジジイ蘇らせといて!!」

「「なんで俺[ボク]たちが蘇生サイド??!!!!!」」

 そんな声が聞こえたと同時に、少年の姿が目に入ってきた。

 真っ赤な帽子を被り、真っ白な半袖に真っ黒な短パンというシンプルイズベストな格好だ。目元は優しさに溢れて純粋無垢な様子が伺える。しかしそれでいて目を引くのは、左腕の肩付近に巻かれた包帯だ。

「ひ、久しぶりですね、ゴン君」

「あ、フォンセ姉じゃん!! おひさー」

 フォンセがジジイを隠すように立ち位置を変える。

「フォンセ姉に王女溺愛の家臣アムールは何しに来たの?」

「おいコラクソガキ。誰が王女溺愛の家臣だ。我輩は王女という大海原にもう既に溺死している」

「アムール? 何キモいこと言ってるのかしら」

 魔法長の変態性が理解できたところで、ゴンは新しいものを見つけた少年のように、私たちパーティをまじまじと見つめる。まぁ少年なんだけどね。

「んでフォンセ姉、そっちの人たちは? あとおじいちゃん、どこ行った?」

「…………こ、この人達はね、私の護衛でわざわざ来てくれた人たちだよ」

「へぇ!!! じゃあすげーんだ!! かっこいいんだ!!!!」

「(まぁ、邪魔しかされてないですけどね)」

「それで、おじいちゃんはどこ?」

「そ、そういえば 大きくなりましたねゴン君!!」

「まぁね! せーちょーき? ってやつかな。それでおじいちゃんは?」

「…………み、ミコちゃんは元気?」

「ミコ姉も元気だよ! 今は山菜取りに行ってるよ。それでおじいちゃんは?」

「……………………………………………………」

 流石にフォンセは黙り込んでしまった。ここは万事休すか。そう思った時であった。

『ゴン! あんまりフォンセさんを困らせるんじゃない』

 後ろ、特にフォンセの影からそんな声が聞こえた。

 ま、まさか…………おじいさんの蘇生に成功した? いやでも、この声は…………。

「おじいちゃん居たなら早く言ってよー」

『わははは、それはすまんのぉ』

 どこかで聞いたことのある声に耳と目を向ける。

「………………………………………………………………」

 声が出なかった。まず2号が丸くうずくまる。その上にジジイを覆い被さるように配置。もちろん、顔は反対の方向に向けている。その先にはネネがさらに小さく丸くなり、顔の頬をなんとかしようとしている。そしてジジイの声優はもちろん、2号。

 いや絶対バレるってぇぇ!!!!!!! 声真似でなんとかできるレベルじゃないでしょ!! というか私ら普段のジジイの喋り方知らないのに!!!!

 そんな私の緊張をよそに、ゴンという少年はジジイに声をかける。

「ん? でもなんでおじいちゃんはそっち向いたまま?」

「「「……………………………………………………」」」

「こっち向いてよおじいちゃん!」

『い、いやあれじゃ、ゴンよ。ちょいとアリを見ていてな』

 騙せるわけないでしょが!!!!!! 何アリ? どんな嘘よ!

「あ、アリか。おじいちゃんはアリのことが本当に好きだね」

 こんな展開??!!!!!

「んーでもこっち振り向かない理由にはならないかな。ねぇなんで振り向かないの?」

 …………このクソガキ!! 別に振り向かなくてもいいでしょうが! アンタは顔パック中の女性にも同じことを言うのか?!

「うーん。ここまで頑なに振り向かないとはね。もしかしてニセモノ?」

「「「!!!!!!!」」」

だけど、おじいちゃんがお賽銭箱からお金を回収してる様子を見て、悪者だと判断した誰かがおじいちゃんを気絶させた。すると僕が来るのがわかったから、なんとか騙さそうと演技してるって感じかな?」

 多分って何ッッ???!!! それ多分どころか、要約だよ! 前回のあらすじレベルだよ!!

「黙ってるってことはそうなんだな? よーし分かった。僕のおじいちゃんなら、ダディプリ🤍を全員言えるはずだ!! 言ってみろ!!」

 なんだその展開?!!!

 ちなみにだが、ダディプリ🤍というのは毎週日曜日朝に放送されている、子供も大きいお友達も大好きなアニメである。あらすじは、普通の高校生が悪の組織と戦う際に、ダディプリに変身する。顔はダンディな男なのに服はメイド服のヒーローになるというものだ。

 確かそのヒーロー数は30近くいたはず。そんなのを全て言えるなんてあり得ない。

 くっ、今度こそ万事休すか。

『ベッドダディ、デスクダディ、トイレットダディが1期だな』

「「……………………………………………………え」」

『バキュームダディ、キッチンダディが2期。コップダディ、マグカップダディ、ステンレスカップダディが———』

「い、言えちゃうのかよッッ!!!!!!!!!!」

 思わずに声にでたツッコミ。いや言えるのかよ!!

「す、すごい。全問正解だ。あ、あり得ない。ダディプリを全て答えられるなんて、付け焼き刃ではないのは確かだ!! 少なくとも、毎週リアタイで見てるレベルだぞ…………」

『そうじゃよ。だってヒロトおじいちゃん、ダディプリ大好きじゃもん』

「「「……………………………………………………」」」

 私とネネにフォンセが、白い目をした。あーうん、刀変態そっち側だったのね。

「こ、これはおじいちゃんと認めざるを得ない!!! よし! ふー、じゃあ、ただいま! おじいちゃん!!」

『お、おかえりじゃ』

 おじいちゃんと認めるってどういうことよ。しかも今、認めるために深呼吸したわよね?! 

 しかしこれで兎にも角にも羊にも綿にも、ジジイ喪失はなんとかなった。





 妖魔島編 登場人物
 file 3
 ゴン。妖魔島に住む1人の少年。肉親は村長だけである。神主も兼任しているため、神主の孫とも言える。半袖短パンの元気っ子であるが、左腕には包帯が巻かれている。ダディプリの問題を出し、正解と言えるあたりから、また彼もダディプリの熱心なファンと言える。





 いや、いい感じにまとめてるけど、1話で全然話進まないじゃない。
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