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夏派

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十四章

110話 第3種目 昼休み 鉄とわたあめ

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『第3種目は騎馬戦です』

 現在赤組対白組は1対1のドロー。お昼休憩前最後の競技が始まる。ここで勝ち越せれば、ご飯も美味しくなるだろう。

『この騎馬戦は4人1組で行うものではなく、2人1組の肩車をして、お互いの鉢巻を取り合ってもらうものになっています。鉢巻を捕らえた、または騎馬が崩れた場合は失格となります。参加者の皆様は、5分以内にペアの人間を探して頂いて、準備を完了させてください』

 そんなわけで。

「あ、あの一緒にペア……」「す、すみません、俺と一緒に……」「あ、もう組んでいらっしゃるのですか」「ペアはもう決まってる。そうですか」

 ペアが見つからない。早速のピンチである!!!

「なんでペア見つかんねぇんだよ!!!! 主人公だぞ俺!! 俺とやったらお前もフォーカスされるんだぞ!!!」

 そんな俺に声をかけてきた人間がいた。

「何? アンタも余ったの?」

 エナさんである。

「エナもか?」

「あいにくね。なんでかしらね。私と組めばフォーカスされるのに」

「それな。だが兎にも角にも虎にも丸にも、余った者同士で組むしかない」

「最悪だわ」

 と言いつつも、俺たちは今回の騎馬戦の形である肩車を組む。

 俺が上、エナが下の完璧な布陣を。

「ってなんで私が下なのよ!!!!」
「え?」
「えじゃないわよ。普通女の子を下に置くバカがいる?!!!」
「いや待て。騎馬の下になるのは、普通は体重が重い方だ! だから俺は何も間違えていない」
「はぁ? アンタ、私の方が重いって言いたいの?!」
「そりゃそうだろ。のように硬い筋肉を持つエナの方が重いだろ」

 死ね!!! カス! ゴミ野郎が!!!!! エナはそう叫ぶと、俺を頭から地面に叩きつけた。

 俺は悪くないのに。




『それでは第3種目開始です!!!』

 そんなわけで騎馬の下である。

 だがここでも問題が。

「ちょ、アンタ、今変なとこ触ったでしょ!!」
「はぁ? 何言ってんだクソ女。どこも触ってねぇ!!」
「何言ってんのよ!! アンタ今、私の生脚触ったでしょうが!!」
「触んなきゃバランス取れないでしょうが!! というかこれ生脚なの? 筋肉質で硬すぎてかと思いましたわ」
「このッ! 変態がッッ」

 女の子の生脚って、みたいなものと聞いたんですけどね。何故か僕が触っているのは、鉄の棒のようです。無念」

「アンタほんっとに最低ね!!」
「あれ? なんで心の中読めてるの?」
「最後口に出してるわよ!!」

 そんな口論をしていると、白組から雄叫びをあげてシリフルコンビが突っ込んできた。

「とりあえず今は休戦だ、鉄女!!」

「誰が鉄女だ!! アンタ休戦する気ないでしょ!!」

「うっせ! まずはあのバカアホコンビをしばくぞ!!」

 俺はそう大声をあげて、一歩力強く踏み出した。その時であった。

 背負っているものがあまりにも重すぎて、俺は前のめりになってしまった。

 となると、当然エナも前のめりになる。

 刹那、『ふにぃ』と音がした。彼女のあまりにも小さな胸が俺の背中に強く触れたのだ。

「!!!!!!」

 なんだこの感触は。集中しろ。まな板だろうと、あれはあれ。この感触を楽しめ!!!!

 まさにLucky スケベ!! と喜んだのも束の間。

「アンタ、何興奮してんの?」

「え? いや…………」

「死ねよ」

 殴ッッ!!!!!! 凄まじい爆音が開けた大地に鳴り響いた。雷ならまだ可愛かった。

 俺の体は大地から生える弱々しい一本のキノコ状態になっていた。

 第3種目 騎馬戦 失格





 E時間後 ネネ視点

 気づけば昼休みだ。第3種目や他の種目などがある程度終わり、今は一旦昼休み。そう、ご飯の時間だ。

「いやー、待ちに待ったご飯の時間ですね!」

 ボクは期待を膨らませて、パーティのところへと足を運ぶ。敵チームといえ、昼ごはんは仲良く食べるものだ。

「あらネネちゃん。今日は腕によりをかけて奮発したわよ! まずは体育祭定番のおにぎりね!」

 そんなエナの声を聞いて、さらに期待は膨れ上がる。渡されたお弁当箱を開ければ、宝石のような食べ物が入っているはずだ。

「じゃあいっただきまーす!」

 ボクは宝箱を開けた。

 はずだった。

「いやなんでモヤッシー??!!!!」

 中に入っていたガラクタは、三角形の形をしたモヤッシーであった。

「ん? おにぎりだよ」

「いやエナさんこれどういうことですか?! なんでおにぎりがモヤッシーに?!」

「いやだから、それがおにぎりだって。お米買う余裕なんて毛頭ないわよ」

「……………………………………………………は」

「なんだネネ文句あるのか? モグモグ」

「好き嫌いしてたら、超貧乳から成長しねぇぞ、モグモグ」

 変態2人の言葉などどうでもいい。楽しみにしていたお弁当の現状がアレだ。

「な、なら他のおかずとかは? 流石にモヤッシーだけってことはないですよね?」

「ん? もちろん他のも作ってきたわよ」

 はい、唐揚げ。と言ってエナはボクにお弁当箱を渡してくる。それを受け取り開けると、

「モヤッシーかよ!!!!!」

 今度もモヤッシーであった。しかも今度のは、なんか焦げている。

「何言ってんのよネネちゃん。それ唐揚げよ。ちょっとミスったけど、私の熱拳で揚げたんだから」

「それは揚げたとは言いませんよ」

 すると唐揚げモヤッシーを美味しそうに頬張る変態コンビに声をかけられた。

「ったく、さっきから文句が多いなぁネネは」

「体育祭で食べるモヤッシーは格別だぞ」

「そりゃ文句のひとつもありますよ」

 ボクはお腹が空いているので、モヤッシーを食べつつ言う。

「モグモグモグモグモグモグmgmgmgmgmg」

「「「いやなんて???」」」

「だから、運動会に体育祭のお弁当というのは格別なんですよ!! 普段食べないようなものが、お弁当箱に入っている!! そんな特別なものなのに、なんでうちはモヤッシーオンリーなんですか??」

「オンリーじゃないわよ。ほら、ゼリーもあるし」

「それゼリー入れにモヤッシー入れただけじゃないですか!!!」

「立派なゼリーよ!」

「すごい感性ですね…………」

 そんな風に会話をしていた時であった。

「1号くん、ちょっといい?」

 巨乳で有名なアヤとナナが、1号を呼んだ。

「? まさか…………モテ期?」

「いや、違うけど、ちょっといい?」

 と言われて彼はそちらに向かっていく。




 1号視点

「んで話ってなんだ? 告白ならOKだが」

「いや違って。というか、誰が1号くんみたいな、地雷踏むものですか」

「地雷ってなんだ?!!」

「(まぁ、踏む人間も1号くんの近くにいるから、なんとも言えないけど…………)」

 何か小声で聞こえたような気がした。

「それで話っていうのはね、命に気をつけてねってこと」

「……………………………………………………は?」

「ほらさっき、1号くんエナの生脚を変態みたいに堪能してたでしょ?」

「別に変態ではないけどね」

「堪能は否定しないのかい。まぁいいや、それで、その件でここら辺にいる男性参加者が殺気立ってるのよ」

「なぜ???」

 意味が分からん。別に俺がエナの生脚を堪能してもいいじゃないか、ふざけるな。硬いけどひんやりしてて、気持ちいいんだぞ。ふざけんな。

「それがね、実は…………エナって男性から人気が高いのよ」

「……………………………………………………E」

「性格はどうであれ、顔や以外のスタイルは完璧だからね。実はファンクラブがあるほどに」

 嘘だろ? アイツそんな人気だったの? 見る目ないだろ。

「それで、1号くんはただでさえ同居してるから、標的対象なのに。公然の場で生脚なんか触っちゃったからね、多分今もどこからか狙撃狙われてるよ」

「ちょ、え? は? ほ?」

 死ぬ前に一応犯人を伝えておこうと思ってね。まぁ、気をつけてね。とアヤとナナは俺に別れを告げた。その刹那。

 炎ッッ!!! 俺の股間すぐ下に、炎の玉が穿たれた。

「俺がァァ、何したって言うんだよッッ!!!!!!!!!!!」
 
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