この眼の名前は!

夏派

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十二章

92話 地下闘技場

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「なんだ貧民共。俺たちと戦う気か?」

 騎士長なる金髪の騎士が言葉を発する。

「……………………………………………………」

 それに対して2号は無言で、ただ刀を押し込む力を込める。 

「そっちの赤髪女も私とやり合う気?」

 ピンク髪のスーツ戦士長に対して、エナは左の拳を無言で繰り出す。

「…………騎士長に戦士長。その2人の貧民を処しておけ。方法は任せる」

「「ハッ」」 

「私は変革のために…………行動してくる」

「お、お兄様!!! 一体何を!!」

「なんだアンドゥートロワ・キャットルサンクスィス・セプトユイットヌフディス。家出娘は俺様を止めるな」

「し、しかし!」

 フォンセの言葉には答えずに、領主は奥の部屋へと歩いていく。

「おい1号」

 刀と剣をかち合わせている2号が俺に声をかけてきた。

「お前はネネ背負って、フォンセと一緒にあのクソッタレの領主を追いかけて、変革を止めてこい!」

「お、お前はって…………2号たちはどうするんだ?!!」

「俺は」
「私は」

 エナと2号の気配が変わった。

「「この雑魚たちを掃除してから向かう!!!!!」」
 
 その言葉を受けて、俺はフォンセと顔を見合わせる。その間に騎士長たちは、敵である2号たちに語る。

「お前たちが俺たちを処理するだと? 笑わせてくれるな。王国一の騎士と」
「王国一の戦士に」

 その2人の気色も変わる。

「「勝てるとでも?」」

「……………………勝てるさ。だから、お前たちは先に行け!! 1号!!」

 強い言葉に俺は背中を押された。

「分かった!! お前らあとで会おう!!!!」

 俺は気絶しているネネを背負い、フォンセの手を引いて走るという器用なことをしながら、領主を追う。

 しかし。

 パチンと指を鳴らす音がなった。

 と思ったら、目の前に5人の人間が現れた。

「弟様の警備で警備隊が割かれて、領家に警備隊がいないと思ったか? 残念だが、俺や彼女のような部隊の『長』クラスに、その直近の部下はこの場に残ったままだ」

 3人はそれぞれ、棍棒・ハンマー・大楯と超近接武器を、残りの2人は銀色の剣をこちらに向けてくる。

 俺が最強能力の転生者チーターならば、この場面は問題なく切り抜けれるのだろうが、生憎俺は眼の力しかない人間だ。なんもできない。

「あなたたち、やってしまいな!!」

 ピンク髪のスーツがそんなことを言った刹那。

 倒ッッ!! 倒れる音が聞こえ、5人の警備隊は膝からその場に崩れ落ちた。

「「「なっ」」」

 俺と戦士長ら2人が驚きの声を上げた。

「今のうちだ1号!!!!!」

 大声を上げる2号は、いつの間にか警備隊の方に体を向けて刀を構えていた。

「ほう…………貴様があの一瞬で斬ったのか…………」

 そんな声を聞きながら、俺はフォンセの手を引きネネを担いで走り抜けた。




 エナ視点

 2号のおかげで1号たちを逃したのを確認すると同時に、騎士長が2号に話しかける。

「…………どうやら貴様は本気でやらないといけない相手らしいな」

「…………そりゃどうも」

「ふ、本気でやり合うため、場所を変えよう」

 と言い、2号と騎士長は一瞬でその場から消えた。

 残った私は相手の戦士長を見据える。

「私たちはどうする?」

「あの青髪の剣士の仲間であるあなたも、中々やるように感じるわ…………私たちも場所を変えましょう」

 そう言って、戦士長は一瞬で消えた。





 ここからは第三者視点。

 2号と騎士長の金髪は巨大な空間に来ていた。広さよりも気になることがある。

「おい…………ここは…………どこだ?」

「ここは…………地下闘技場だ。領主様のお屋敷の地下は3層に分かれていて、ここはその2層目にあたる」

「地下だと?! どういうことだ! 地下なのに何故周囲が荒野なんだよ」





 一方エナはピンク髪のスーツ女こと戦士長と共に、これまた特殊な空間に来ていた。

「な、なによ…………ここ」

 目の前に広がるのは、未開拓のジャングルを思わせる大自然だ。高い木々に背の高い草が生茂る自然の中の自然。

「ここは領主様邸の地下第1層にある闘技場よ。実際には縦横20メートルほどの地下室だけど、『魔法長』によって創設された魔法的空間で広さは一キロ四方よ」





「魔法長だ?」

 荒れ果てた大地、登山が困難なのは間違い無いほど尖った山脈、隕石を想像させるほど巨大な岩々。西部劇に出てくる荒野といえばイメージしやすい場所で、2号は言葉を発する。

「無垢な貧民である貴様に教えてやる。我々領主家警備隊は、大きく分けて4つに分類される。1つは通常の『警備隊』。王都のパトロールが基本的な仕事で、門番などがそうだ。服装は良くある青服だな」

 そして。と彼は続ける。

「2つ目は我ら『騎士隊』。通常は遠征などの時に駆り出せることが多く、馬を使い己の剣を使って相手を駆逐する部隊だ。今回も弟様の出張には、我らの部隊のほとんどが費やされている。また服装は、基本的に銀色の甲冑を体に纏っている」






「3つ目は私たち、『戦士隊』ね。騎士隊が基本馬を使って索敵接敵をするのに対して、私たちはゲリラ戦のように超近接から出現して、それで敵を倒す精鋭部隊ね。一騎当千とはいかないけど、1人で何十人も相手できるほどの力があるわ」

 最後に。と彼女は続ける。

「4つ目は『魔法隊』。これは純粋に魔法を使って支援攻撃防御を行うエキスパートね。そこの隊長がこの特殊な空間を精製したのよ」

 



「とまぁ、作品的にちょっと大事な知識を無理矢理入れたところで、そろそろ戦闘に移るか?」

 自身の黄金に光る剣を抜き、2号に矛先を向ける戦士長。

「あーあーあー、話長くて読者飽きちゃうんじゃないの? 騎士長様よぉ~」

 2号は2号で鞘に入り袴につけた刀の柄を力強く握る。

「お互い剣使いなみてぇだし。名でも名乗っておくか」

 重心を低くしながら2号は言う。

「俺の名は、2ごじゃなくて、ヒロト。ライト一の刀使いだ」

 その言葉を聞いて、騎士長は名を答える。




「だァァァァァァァ!!! アンタの話長いのよ!!!!」

 とエナはイライラしながら、自身の拳を握りしめる。

「私の名は、可憐な美女。通称エナ!!!」

 うわ自分のこと美女とか言ってる。コイツ、地雷だ。と戦士長は心の中で思いながら言う。






「俺は名は相対する者アフロンターレ
「私の名は適応する者レアジーレ
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