この眼の名前は!

夏派

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九章

65話 合コン

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「ふふふ、ふふふふ、ふははははははは!!!!!!!!」

 俺は天に腕を伸ばし高笑いする。

「ついに、ついに来たぞ…………」

 隣の2号も先程からずっと顔がニヤけている。ちょっとキモいくらいだ。

「「いざ!! 合コンじゃあ!!!!!!!」」

 天に腕を伸ばしたまま、俺たちはその場で輪になって踊る。

 その様子を極めて冷静に見ていた、合コン主催者の忍びが一言。

「あの、そんなのいいんで早く行きましょう」


 U分後 

 俺たちは合コン会場である『集会所』にその足を運んだ。そこに着くと、タイと名乗る先程の忍者が口を開く。彼の格好は装束でなくタキシードだ。

「えーと、ここが会場になります。一応合コンという形なのですが…………お2人…………そんな変態な格好で良いんですか?」

 俺は指を振りながら、その質問に答える。

「チッチッチッ、何も分かってないね忍びよ。タオイチにパンイチ、これが俺たちにとっての正装なのさ」

「……………………………………………………は?」

 2号が続く。

「冠婚葬祭戦闘日常、どんな時でも俺たちの格好はパンイチだぜ! むしろ、なぜ貴様は服を着ている?」

「ぇぇ?! 私がおかしいのですか?!」

「そりゃお前がおかしいだろ? 多数決の原理を知らんのか?」

「…………は」

「この場には3人。そのうち過半数である2人はパンイチが常識と言ってるんだ…………。つまり、民意は2人が優先される。よって俺たちの意見が正しいということになるだろ?」

「ナイス証明だ1号!」

 イェーイと俺たちはハイタッチをしながら、喜びを共有する。

「ダッッメダ、この人達!!!!」

 タイが叫ぶが特に気にせず、俺は2号とどうくノ一にアプローチをするかを確認する。

「いざ合コンというわけだが、こういう時に最も大切なのは初頭効果だな」

「初頭効果?」

「そうだ、人に最初に与える印象がその人の後の印象を決めるというものだな。確か、出会って10秒くらいまでがその効果の範囲内だった気がする」

「…………つまり、最初の10秒でいかに好印象を与えられるかということか。…………んー、10秒だと最初の一言目が凄く大切だな」

「その通りだ、2号。第一声がすげぇ大事だ」

「これは深く考えて行動しないとなぁ」

 最後に2号が呟くと、黙って聞いていたタイが俺たちに会話を振る。

「あ、あのー、ちなみに。ちなみに何ですが。おふたりは、どんなことを初頭効果の効果内でおっしゃるつもりなのですか?」

 その言葉を聞いて、俺は少し考え手をあげる。

「あ、はいフウタさん」

「俺ならこう言うぜ。『おぉ、なんて美しいマドンナだ。その美しさに惚れた。是非、俺と夜の忍術合戦でも』」

「アウトォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!」

 俺に力強く指を指し叫ぶタイ。

「何でだ、完璧だろ?」

「絶対ダメですって!!! 次会う時は法廷ですよ?!!」

「何を言ってんだお前」

 俺が呟くと、笑いながら2号が声を張る。

「ははは、1号。それは流石にダメだろ?」

「お前も言うのか? なら、お前ならどうする?」

「お前のは単語が多すぎるんだよ。俺ならこう言うぜ。『胸……触らせてくれ』ってな?」

「ぜっったい、ダメぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」

 タイが再び吠えた。耳元で拡声器越しに叫ばれたような感じで、耳がジーンと痛くなる。

「なんだなんだ、うるさいぞタイ。音テロやめい」

「馬鹿何ですかあなたたちは!!!」

「馬鹿とはなんだ馬鹿とは。失礼な」

「失礼もクソもあるかぁ!! え? あなたたちにとったら、今の発言は普通なんですか?!!」

「そりゃ普通だろ。初頭効果だぞ? 第一声は大事にしないと!」

「アホかぁ!!」

「さっきから、喚きすぎだぞタイ。じゃあ、お前らならどうするんだよ…………」

 2号の発言は最もだ。人の言葉を散々馬鹿にしておいて、自分は何も言わないなんて酷いものだ。

 タオイチパンイチがタイをまじまじと見つめる。すると彼は弱々しい声で発言する。

「わ、私なら……『あなたと出会えたのは運命かもしれない。まるで赤い糸で繋がってるようだ』って言いますけど…………」

「「つっっっっっっっっっっっっまんなぁ」」

 タイの言葉を聞いて、思わずその言葉とあくびが出てしまった。

「え? どこがですか?!」

「どこがって…………お前、自覚ないのかよ」

「よくそんなパンチのない発言ができるな」

「え? え?」

 自身の発言の悪い点すら意識できんのか。と俺が思っていると、鐘ッッ!! 『集会所』についてある時計の音が鳴り響いた。

「あ、18時ですね。合コンの時間ですね」

 と言って、タイは俺たちをその中へと案内する。

『集会所』の中は前日とはうってかわっていた。昨日は無駄な装飾のない質素で“The SINOBI”といった感じだったが、今日は光沢が施され、華やかなパーティーといった雰囲気である。

 綺麗なテーブル席が十数個ほど設置されていたり、中央には料理がずらりと並んでいる。

 そしてあちらこちらにドレスに身を包むくノ一やタキシード姿の忍びがチラホラといる。

「おお!! すごいなこれは!!」

 2号が思わず声を上げる。

「まぁ昨日の借りを返すためですからね。ちゃんとセッティングしましたよ」

「にしても、忍者感ないなぁ。お前らはこんな感じでいいのか?」

 俺がタイに質問すると、彼は答える。

「まぁ私たちも忍者である前に、人間ですからね。こういうこともしたくなりますよ…………。それに…………この里最強があんな感じですから…………」

 タイの呆れた眼差しの方向に目を向けると、

「なはははは!!! 合コン成功させるぞぉぉぉ!!!!」

 飲酒でもしているのだろうか、顔を真っ赤にしフラフラな足取りで料理を摘む女性が見えた。

 格好は装束でなく赤ドレス。結んでいた髪の毛はほどき、ロングヘアーをなびかせる。その色は黒。

「「………………………………あれが、最強か」」

 俺たちはこの里最強の忍者、4代目隊長ミナを見て、なんとも言えない気持ちに包まれた。

「にゃはははは!!! 酒だ! 酒を持ってこい!!」

「だ、ダメですよミナ!! 客人もいるのにそんな姿なんて!!」

 こんな場でも装束姿なのか、スズが必死になってミナを押さえる。

「にゃは? スズも呑んではっちゃけようよ!!」

「誰がしますか!! それに私には夫がいるし…………。ホントはこんなところ来たくないんですよ! だけど、隊長補佐の役目だから渋々と!! クソ!!」

「まぁまぁそうお怒りになりなさんなよ。たまにははっちゃけるのも大切だにゃ?」

 と言ってミナはスズのお胸をがっしりと掴む。

「キャ!」

「ほー、しばらく触んない間に随分と大きくなりましてね? ほーほー、夫に揉んでもらってるのかにゃ?」

「ッッ!! いつまで揉んでんだこのクソ独身がぁ!!! 変態め!!! だから婚期逃すんじゃねーのか!!!」

 キレた口調で叫ばれ、ミナは体を震わせて、

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!! スズが言っちゃいけない事言った!!!! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあん!!! 誰がゃ! わだじをもらって!!!!!!」

 しまいには泣き出すミナ。

 …………25のいい歳が何泣いてんだよ。それにしても顔だけならエナ並に可愛いのに、なんでモテないんだ?

 俺が心の中で密かに疑問を抱いていると、

「まぁ、その、彼女…………暴力的でして」

 とタイが急に言葉を挟んできた。

「ファ??!! 何お前心の中読めるの?!」

「…………まぁそこは置いといて。彼女、暴力的でなかったらモテるんですけどね」

「置いとけるか!! …………だが…………うちのアレも似た感じだな」

 と俺は一言呟き、空いているテーブルに2号と一緒に向かう。

 うし! 最初に見ちゃいけないものを見た気がするが、まぁ良いか。今日はあのぺたんこがいない、良い夜だからなぁ! 楽しむぜ!! あとはなんて最初言おうなぁ。

 と期待を膨らませて、そのテーブルの椅子に手をかけた時。

「「は」」

 反対側の椅子に、手をかけるぺたんこと目があった。
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