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八章
60話 忍の里
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夜が明けて、俺たちは砂漠から歩き抜け出すことができた。
大技を打ってすっかり疲れ切っている2号を肩で支えながら、俺たちは残りの距離を歩いた。
そして着いた。
「ここが……忍者が住む村。忍の里よ」
エナが目の前の建造物を見て、特に質問してないが言う。
「これが……」
俺たちの目の前に広がるのは、巨大な壁である。
「壁じゃね!!!!!」
思わずツッコミを入れてしまった。
「いや壁やん、ただの壁やん、だから壁やん」
「耳元でうるせぇぞ1号。お前はなんも感じないのか」
「はぁ?」
2号の言葉は意外性なものであった。だって、目の前に見えるのは壁じゃないか。壁を見せられて、ここが里です。と言われるコッチの気持ちにもなれよ。
俺が不貞腐れ、そんなことを考えているとネネが言う。
「1号さん、ほんとに感じませんか? この膨大な魔力が」
「………………………………ほ?」
え? 感じないの? といったいった表情でネネが見てくる。
「あ、あーね! その……ことね? まりょくね! マリョク! MARYOKUのことね! も、もちろん気づいてるぞ?!」
「このバカに何言っても無駄よ。無職だから、この魔力すら感じることできないのよ…………むしろ、可哀想ね」
エナが呆れた感じで言ってくるが、本当に魔力を感じない。
「魔力を感じれないのが1号らしいな。……お前は気付かねーかもしれないが、この壁中にはとんでもなく強力な結界が張られている。触れれば、即死するレベルのな」
「………………………………………………………………Is that true ?」
「…………何を言ってんのか分からんが、とりあえず絶対に触れるなよ」
「それは俺のいた世界では、触れろという意味だぞ」
「……………………言葉が伝わらない世界に住んでいたんだな」
高さ30メートルほどの壁を見上げて、その『即死』という単語に若干の恐怖を感じる。
その時。
「貴様ら、誰だ」
男性の声であった。
……どこからだ?
あたりを見渡すがその姿を捉えることはできない。
「上だ、タオルの男よ」
その言葉を聞いて、俺は頭上を見る。30メートルの高さを持つ壁のてっぺんに、人の姿が見えた。
と思った瞬間、音もなくその男は俺たちと同じ高さまで落下してきた。
「「「「!!!!」」」」
その洗練された行動に俺たちは息を呑む。
紺色の装束で全身を包み込んでいる。よくイメージする忍者の姿そのものといったところだろうか。その一方で、口元は隠しておらず、また頭巾も付けておらず、灰色の髪の毛が見える。
その男は言葉を発する。
「もう一度問う。貴様らは何者だ」
低く冷たい口調である。それでいて、いつの間にか、手にはクナイ—忍者が使うナイフのようなもの—が握られていた。
お、おっかねぇ。
その様子を観察して、俺はあることを思い出す。具体的には57話でエナが言った一言。
『配達員を殺すことがあるらしいとかうんぬん』
うんぬんについては置いておくとして、忍者は配達員を殺すことがあるらしいのだ。
そして俺たちは冒険者であるわけだが、クエスト上配達員。
つまり。
それを考えた瞬間、背筋が凍りつく。そしてあるがままに俺は行動する。
その間にエナは忍者に向かって、状況説明をしようとしている。
彼女も多少忍者を怖がっているのか、恐れながら言う。
「わ、私たちはライトから来た配達員で…………」
「お命だけはお勘弁を!!!!」
エナがあたふた説明している時に、俺は膝を地面に、頭も地面についた。
いわゆる。
ジャパニーズDOGEZA。
「「「「は」」」」
その様子を見て全員が固まった。
C分後 里
「よし、確かにライトからの手紙は預かりました!! 長旅、ご苦労様です」
くノ一と呼ばれるものなのか、女性の忍びが俺たちの手紙を受け取って、そう答える。
その彼女はこちらを見て困惑する。
「え、えーと、そちらのタオイチさんは平気ですか? それとなぜタオイチ?」
「…………反省のつもりですので、問題ありません!! タオイチなのは彼の趣味嗜好であり、私たちは一切の関係はありません!!!」
俺は持ってきていた全ての荷物(約30キロ)に押しつぶされないように、必死に担ぐ。
いじめ。では…………ない。
「で、でも……」
「いえいえ、ご心配はいりませんよ。このバカが悪いので……」
エナは作り笑いをしながら、くノ一に対応する。その一方で俺の方を見る時は、残虐非道な顔をしてくる。
あー怖い。彼女にしたくないランキング1位だなこれ。
俺がこの罰ゲームのようなことをしている理由は一つ。もちろん、土下座の件だ。
殺されるのが嫌で土下座をしたわけだが、逆にそれはその場の空気を悪くするものであった。
それに対して恥ずかしい思いをしたエナが、俺に荷物を全て押し付けるという非淑女的対応をとったのだ。
「しかしあれですね。私たちが配達員を殺害するという変な噂があったのですね」
くノ一は困ったように語り出す。
「ええ、ライトではそんな噂が充満していて、このクエストは不人気なんですよ……」
「うーん、そんな噂が立つようなことはしたつもりはないですけどね」
その時、後ろから声がかけられた。
「モンスターにやられた配達員の死体を回収したのを見られて、勘違いされたんじゃないか」
後ろを振り返るとそこには、
「…………く、黒髪」
黒と赤の混じりあった装束、スラッとしたスタイルの良い体だが胸は小さく、ポニーテールである黒髪の美女が目の前にいた。
「お帰りですか、ミナ」
「うん、ただいま! そちらはお客さん?」
「ライトの街からの配達員ですよ。これが預かった手紙です」
それを受け取った黒髪美女は中身を確認して、一瞬怪訝な顔になるが、すぐに笑顔になりこちらに話を振る。
「確かに預かったわ、わざわざありがとね!」
「いえ…………クエストですし…………」
「エナ?」
なぜか不安そうな顔をするエナに俺は声をかける。
「ん? べ、別に何もないわよ。そ、それより、アンタは誰?」
「あにゃ、スズったら私の紹介してなかったの?」
「え、えぇ」
「ったく、私の名前はミナ。この里の防衛隊の隊長をやってるわ。まぁつまりトップってこと?」
「「「「!!!!」」」」
流石は黒髪転生者。戦闘能力ならずば抜けて高いということか。
「驚いた? まぁそれもそうよね。私なんてまだピチピチの25歳だからね。こんなに若いのに隊長よ、隊長。笑っちゃうわよね」
「…………まぁこの里の成人年齢は15なので、若いかと言われるとうんぬん」
「スズ、聞こえてるわよ」
「で、でも、ミナは私と違って婚期を逃し…………」
「あーあーあーあーあーあーあーあ、出会いないかしらァァ?」
ミナという隊長と、俺たちの対応をしていたスズというくノ一の会話を聞いて、俺たちは名前などを伝える。
それが終わると、2号が疑問を投げかけた。
「……アンタらさっき、配達員の死体の回収が殺害と勘違いされてるとか言ってたが、どういうことだ?」
その質問にミナは答える。
「あー、それね。昔、君たちと同じように手紙の配達のために、コチラの里へ向かっていた冒険者がいたのよ。だけど、その道中にモンスター……いや私たちの忍獣に殺されてしまったのよ。その死体を回収しているところを見られてね、それが噂の尾を引いてるみたいね。私たちは断固として冒険者の殺害とかはしないけど」
「…………忍獣?」
「忍術によって召喚されるモンスターのことよ。この里の目の前で警護しているわ。あなたたちも倒したから、ここまで来れたんでしょ? それにここに来ていいのはその忍獣を倒すだけのスペックがあるやつ限定と、ライトには伝えているのにね」
「…………里の目の前? ああ、オアシスだゾウのことですか?」
ネネが思い出したかのように答える。
「えぇそうよ。他にもいろんなモンスターを召喚できるんだけどね」
他にどんなのがいるんですか? とネネは興奮気味にミナに質問する。
俺たちはその様子を眺めながら、スズに里内の宿泊施設の場所などを聞く。
すると彼女が、この里を案内しますよ。と言ってくるので、俺たちは付いていくことにした。
それにしても、エナは何かを悩んでいる感じがする。
大技を打ってすっかり疲れ切っている2号を肩で支えながら、俺たちは残りの距離を歩いた。
そして着いた。
「ここが……忍者が住む村。忍の里よ」
エナが目の前の建造物を見て、特に質問してないが言う。
「これが……」
俺たちの目の前に広がるのは、巨大な壁である。
「壁じゃね!!!!!」
思わずツッコミを入れてしまった。
「いや壁やん、ただの壁やん、だから壁やん」
「耳元でうるせぇぞ1号。お前はなんも感じないのか」
「はぁ?」
2号の言葉は意外性なものであった。だって、目の前に見えるのは壁じゃないか。壁を見せられて、ここが里です。と言われるコッチの気持ちにもなれよ。
俺が不貞腐れ、そんなことを考えているとネネが言う。
「1号さん、ほんとに感じませんか? この膨大な魔力が」
「………………………………ほ?」
え? 感じないの? といったいった表情でネネが見てくる。
「あ、あーね! その……ことね? まりょくね! マリョク! MARYOKUのことね! も、もちろん気づいてるぞ?!」
「このバカに何言っても無駄よ。無職だから、この魔力すら感じることできないのよ…………むしろ、可哀想ね」
エナが呆れた感じで言ってくるが、本当に魔力を感じない。
「魔力を感じれないのが1号らしいな。……お前は気付かねーかもしれないが、この壁中にはとんでもなく強力な結界が張られている。触れれば、即死するレベルのな」
「………………………………………………………………Is that true ?」
「…………何を言ってんのか分からんが、とりあえず絶対に触れるなよ」
「それは俺のいた世界では、触れろという意味だぞ」
「……………………言葉が伝わらない世界に住んでいたんだな」
高さ30メートルほどの壁を見上げて、その『即死』という単語に若干の恐怖を感じる。
その時。
「貴様ら、誰だ」
男性の声であった。
……どこからだ?
あたりを見渡すがその姿を捉えることはできない。
「上だ、タオルの男よ」
その言葉を聞いて、俺は頭上を見る。30メートルの高さを持つ壁のてっぺんに、人の姿が見えた。
と思った瞬間、音もなくその男は俺たちと同じ高さまで落下してきた。
「「「「!!!!」」」」
その洗練された行動に俺たちは息を呑む。
紺色の装束で全身を包み込んでいる。よくイメージする忍者の姿そのものといったところだろうか。その一方で、口元は隠しておらず、また頭巾も付けておらず、灰色の髪の毛が見える。
その男は言葉を発する。
「もう一度問う。貴様らは何者だ」
低く冷たい口調である。それでいて、いつの間にか、手にはクナイ—忍者が使うナイフのようなもの—が握られていた。
お、おっかねぇ。
その様子を観察して、俺はあることを思い出す。具体的には57話でエナが言った一言。
『配達員を殺すことがあるらしいとかうんぬん』
うんぬんについては置いておくとして、忍者は配達員を殺すことがあるらしいのだ。
そして俺たちは冒険者であるわけだが、クエスト上配達員。
つまり。
それを考えた瞬間、背筋が凍りつく。そしてあるがままに俺は行動する。
その間にエナは忍者に向かって、状況説明をしようとしている。
彼女も多少忍者を怖がっているのか、恐れながら言う。
「わ、私たちはライトから来た配達員で…………」
「お命だけはお勘弁を!!!!」
エナがあたふた説明している時に、俺は膝を地面に、頭も地面についた。
いわゆる。
ジャパニーズDOGEZA。
「「「「は」」」」
その様子を見て全員が固まった。
C分後 里
「よし、確かにライトからの手紙は預かりました!! 長旅、ご苦労様です」
くノ一と呼ばれるものなのか、女性の忍びが俺たちの手紙を受け取って、そう答える。
その彼女はこちらを見て困惑する。
「え、えーと、そちらのタオイチさんは平気ですか? それとなぜタオイチ?」
「…………反省のつもりですので、問題ありません!! タオイチなのは彼の趣味嗜好であり、私たちは一切の関係はありません!!!」
俺は持ってきていた全ての荷物(約30キロ)に押しつぶされないように、必死に担ぐ。
いじめ。では…………ない。
「で、でも……」
「いえいえ、ご心配はいりませんよ。このバカが悪いので……」
エナは作り笑いをしながら、くノ一に対応する。その一方で俺の方を見る時は、残虐非道な顔をしてくる。
あー怖い。彼女にしたくないランキング1位だなこれ。
俺がこの罰ゲームのようなことをしている理由は一つ。もちろん、土下座の件だ。
殺されるのが嫌で土下座をしたわけだが、逆にそれはその場の空気を悪くするものであった。
それに対して恥ずかしい思いをしたエナが、俺に荷物を全て押し付けるという非淑女的対応をとったのだ。
「しかしあれですね。私たちが配達員を殺害するという変な噂があったのですね」
くノ一は困ったように語り出す。
「ええ、ライトではそんな噂が充満していて、このクエストは不人気なんですよ……」
「うーん、そんな噂が立つようなことはしたつもりはないですけどね」
その時、後ろから声がかけられた。
「モンスターにやられた配達員の死体を回収したのを見られて、勘違いされたんじゃないか」
後ろを振り返るとそこには、
「…………く、黒髪」
黒と赤の混じりあった装束、スラッとしたスタイルの良い体だが胸は小さく、ポニーテールである黒髪の美女が目の前にいた。
「お帰りですか、ミナ」
「うん、ただいま! そちらはお客さん?」
「ライトの街からの配達員ですよ。これが預かった手紙です」
それを受け取った黒髪美女は中身を確認して、一瞬怪訝な顔になるが、すぐに笑顔になりこちらに話を振る。
「確かに預かったわ、わざわざありがとね!」
「いえ…………クエストですし…………」
「エナ?」
なぜか不安そうな顔をするエナに俺は声をかける。
「ん? べ、別に何もないわよ。そ、それより、アンタは誰?」
「あにゃ、スズったら私の紹介してなかったの?」
「え、えぇ」
「ったく、私の名前はミナ。この里の防衛隊の隊長をやってるわ。まぁつまりトップってこと?」
「「「「!!!!」」」」
流石は黒髪転生者。戦闘能力ならずば抜けて高いということか。
「驚いた? まぁそれもそうよね。私なんてまだピチピチの25歳だからね。こんなに若いのに隊長よ、隊長。笑っちゃうわよね」
「…………まぁこの里の成人年齢は15なので、若いかと言われるとうんぬん」
「スズ、聞こえてるわよ」
「で、でも、ミナは私と違って婚期を逃し…………」
「あーあーあーあーあーあーあーあ、出会いないかしらァァ?」
ミナという隊長と、俺たちの対応をしていたスズというくノ一の会話を聞いて、俺たちは名前などを伝える。
それが終わると、2号が疑問を投げかけた。
「……アンタらさっき、配達員の死体の回収が殺害と勘違いされてるとか言ってたが、どういうことだ?」
その質問にミナは答える。
「あー、それね。昔、君たちと同じように手紙の配達のために、コチラの里へ向かっていた冒険者がいたのよ。だけど、その道中にモンスター……いや私たちの忍獣に殺されてしまったのよ。その死体を回収しているところを見られてね、それが噂の尾を引いてるみたいね。私たちは断固として冒険者の殺害とかはしないけど」
「…………忍獣?」
「忍術によって召喚されるモンスターのことよ。この里の目の前で警護しているわ。あなたたちも倒したから、ここまで来れたんでしょ? それにここに来ていいのはその忍獣を倒すだけのスペックがあるやつ限定と、ライトには伝えているのにね」
「…………里の目の前? ああ、オアシスだゾウのことですか?」
ネネが思い出したかのように答える。
「えぇそうよ。他にもいろんなモンスターを召喚できるんだけどね」
他にどんなのがいるんですか? とネネは興奮気味にミナに質問する。
俺たちはその様子を眺めながら、スズに里内の宿泊施設の場所などを聞く。
すると彼女が、この里を案内しますよ。と言ってくるので、俺たちは付いていくことにした。
それにしても、エナは何かを悩んでいる感じがする。
応援ありがとうございます!
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