この眼の名前は!

夏派

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六章

41話 ヒャロウイィーン

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 鼻に丸めた紙を詰め込んで俺は、理性破壊兵器ブレザーエナに話しかける。

「え、エナさん? 借金半分肩代わりって……どうゆうことですか?」

 ブレザーがよく似合うエナは俺に答える。

「文字通りよ。私が抱えている負債の半分をアンタが払うのよ。アンタが私を煽らなければこうはならなかったわよ。自業自得ね」

「いや、ちょ、待ってくれよ。頼むよ。お前の借金がいくらあるのか、そもそも分からないし、怖くて聞けないし。それを半分肩代わりだ? 無理だって。クエストは俺1人じゃ勝てないし、みんなでクエストしても全部お前のポッケに入るじゃないか」

「ありゃ、私の懐に討伐金なんて入ってたかしら?」

「何がありゃ? だ!! ちょっとブレザーが似合うからって調子に乗るなよ!!」

 俺が声を上げて言うと、エナは自身のスカートの裾を持ち上げる。

「チラッ。チラチラッ」

 スカートの上げ下げで、生脚にパンツが見えそうになる。

 スッポン!! その姿を見て、俺の鼻に詰まっている紙の塊が血と一緒に飛び出た。
 
「なっ」

「……アンタ、ホントにこの行為に弱いのね」

「べ、べ、べ、ベベベベベベベベ別に??? よ、よ、よ、よよよよよよよよよよよ弱くねぇし?!?!?!!」

「チラッ、あっやべ」

 滝ッッ!!! 鼻から滝のように凄まじい量の血が流れ出た。

 なぜならエナがスカートを上げると同時に、彼女の白いパンツが目に入ってしまったからだ。

 お、俺はここまでエナに弱いのか……。

 そう思うと同時に、貧血で俺は倒れた。


 ?分後

 目が覚めると、目の前にはチアガールの格好をしたエナ父がいた。

「オゥェぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇゑゑ」

「ど、どうしたんだい1号君?!! 貧血で気持ち悪くなったのか?!!」

 そうじゃねーよ。アンタのその格好だよ。それを見て吐かない男がいたら連れてこい。ソイツは人間じゃねー。

 などという非常識なことは言葉にせずに俺は真摯に対応する。

「いやいや平気ですよ。ちょっと目の毒になるようなゲテモノを見てしまっただけですから」

 俺の言葉を聞くと、エナ父は黙り込む。

 しまった。ちょっと言い過ぎたか?

「なんだそうなのか。それが何か気になるけど、病気じゃないなら安心だ! ほら早くみんなのところに行くよ」

 脳筋の父親も脳筋。自分のことだと気付いてないのか? まぁラッキーだ。

 俺はそう思いつつ、立ち上がりみんながいるところへと移動する。

 その場には、ゴスロリネネ、バニーガールエレナ、ブレザーエナ、チアガールエナ父、パンイチ2人という奇妙な組み合わせが居合わせた。

「……んー、なんで俺と2号には衣装がないんだ?」

「なんだ1号は衣装が着たいのか?」

「そんなことは微塵も思ってはいないが、なんかハブられてる感あるじゃん」

 俺の言葉にエナが答える。

「別にハブってなんかないわよ。ただね、アンタたちにお金を使うのがどうも乗り気にならなかったのよ」

「だそうですよお二人さん。ボクは衣装を貸して貰えたので問題はないですけども」

「何が『だそうですよ』だ!! このロリ枠が!! こーゆーキャラ位置は損が少ないな!! 流石ロリ枠!!」

「だ、誰がロリ枠ダァ!!! 殺すぞ1号!!!」

「ま、まぁみんな落ち着いて!! もうヒャロウイィーンの時間だからさ!」

 ネネの驚異的な一言にビビる俺を宥めるように、エレナが言葉を切り出す。

「例年通りなら、10分後の18時からヒャロウイィーンのイベントが始まるわ」

「ん? 10分後の18時だって?」

「ええそうよ」

 え? 後10分で18時? え? エナのブレザー云々は午前中にやってたはず。俺何時間寝てたんだ?

 などと思っていると、エナが俺に言ってくる。

「あ、そういえばアンタが寝てる間に、借金半分肩代わりの手続きの紙を書いておいたわよ。ほら」

 奪ッッ!! 破ッッ!!! 

 マジシャンのように滑らかな動きで俺はその紙を奪い、シュレッダーにかけたように紙を細切れにする。

「なっ、何してんのよ!!!」

「そりゃこっちのセリフだ!!」

「私がせっかく書いたのに!!」

「誰がお前の借金なんて肩代わりするか!!! 死んでも返しきれない自信しかないね!!」

「!!!! アンタねぇ!!」

「はいはいはい終わりよ2人とも!! ぜっんぜんヒャロウイィーン戦に進めないじゃない!! 露骨に字数稼ぎしてる風に見られるわ!」

 手をパンパンと叩きながら、エレナが会話の収集に努める。

「全くだぞお前ら。それにお前たちがそう言い争いをしてると、俺のセリフ回数が減る」

「そこにはボクも賛同です」

「私も賛成だよ。愛娘が取り上げられるのは構わないけd」

「「「「「アンタは黙ってろ」」」」」

「…………ショボーン」

 その時であった。外から叫びが聞こえる。

「で、出たぞ!! 死霊だ!!!」

 その場にいる全員の意識が建物の外へと向けられる。最初に動き出したのは、エレナとエナだ。彼女たちは迅速にその場を動く。

 扉ッッ!! 勢いよく扉を開けて2人が飛び出し、その後に俺たちが続く。

 外に出てみると、

「うっわ」

 ボロ布のローブを着て地面から30cmほど浮いていて、手には大きな鎌を持つガイコツがウジャウジャといた。

「あ、あれが死霊……?」

「……そうみたいですね。ボクも初めて見ました……。なんというか不気味ですね」

 ネネの言う通り、死霊たちの雰囲気は不気味の一言だ。

 とりあえずなんか嫌な感じがする。あれ? これフラグ?

 俺がそう思うと、エナが口を開く。

「ついにきたわね!! さぁ始まりよ!!」

「え?」

 俺が驚きを漏らしたと同時に、村にいる人たちが一斉に叫んだ。

「「「ヒャロウイィーンだ!!!!」」」

 パァッン!!!! 銃声のようにクラッカーがあたりから鳴り響いた。

「は、はぁー????」

 クラッカーから飛び出した鮮やかな紙切れが地面に落ちる。死霊の鎌にすらそれは落ちる。

「え、えっと? え? どゆこと?」

 困惑である。ここから村を襲う死霊との死戦かと思いきや、まさかのクラッカー。誰が予想できたろう。

 俺が現実に困っていると、エナが後ろを向いて俺たちに声をかけてくる。

「祭りの始まりよ!! さぁ暴れるわよ!!! アンタたち!!」

「ま、祭り??」

 呟く刹那、周りの村人たちとエナたちが気合を貯め始めた。

 そして。

「「「エンハンス!!!!」」」

 それぞれが己の色の薄いオーラを纏った。

 鼓ッッ!!! それと時を同じく、村の塔の上から太鼓の音が鳴り響いた。

 そして。

「開戦だ!!!」

 チアガールのエナ父が、いつの前にか持っていた黄色のメガホンを通して、そう叫んだ。

 雄叫びを上げ、エンハンスを使った村人達が、死霊に向かって走り出した。
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