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四章
20話 占い
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俺はギルドの扉の前に立っていた。ヒュドラ云々から早2週間。ここに来るのは、手を取られギルドを飛び出した日以来だ。この書き方だと、悲劇のヒロインがヒーローに救出されたような雰囲気が出るが、実際は裸の男に裸の男の手が取られたという悲しきものだ。
なぜ入るのを躊躇しているかというと、エナに告白云々の件があったからだ。それでギルドどころか、新聞すら書かれそうになったレベル。それほどのことがまるまる2週間で、収まっている自信がなかった。
しかし俺は心を決めて、その扉を開ける。中に一歩入ると、いつもの活気ある声が聞こえてくる。俺は挨拶をする。
「よ、よぉ。久しぶ……ブゥォオ??!!」
刹那、俺は頬の骨が砕けんばかりの強打を受ける。本来イケメンの顔が壮絶にブサイクになり、ツバと血を吐き出しつつ、何メートルも飛ばされる。
ドン! と俺は道の向こう側にある、簡易ゴミ箱へと頭から突っ込む。
「……う、ああ?? なんで……コウナッタ?」
俺はゴミ箱から脱出して、ギルドの扉を見る。そこには、あら息を立て興奮気味のフルがいた。
「ふ、フル! テメー! いきなり何してくんだ!!」
俺が叫ぶと彼は、
「……遺言はそれで良いか? 死ね変態!!」
そう言って俺に向かって駆け出してくる。
「…………は? へ? え? ほ?」
いきなりのことすぎて俺は対応ができなかった。
フルの目は本気であった。本気で俺を殺そうしている。
「??? 何があった?! 説明しやがれこのくそバカ!!!!」
俺は地面に手をついて、そこから逃げ出す。しかし冒険者のフルから逃れるはずもなく、すぐに後ろからタックルされて、拘束される。
フルは完全優位な状態になってから言う。
「ふーふー、テメー……あの白髪の女の子と、一緒に住んでいるとは……どういうことだ? 説明しろ」
「……へ? は、白髪ってネネのことか? それは最近パーティに入った影響で」
「それ以上喋るな。喋ったら俺は貴様を手にかけなきゃいけない」
いや、お前が説明しろ言うから喋ったんですけど。という言葉を俺は飲み込む。
「いや、お前が説明しろ言うから喋ったんですけど」
失礼、その言葉は飲み込めず吐き出してしまいました。
「喋るなと言ったよな? 俺はお前みたいな歩く変質者のことが許せない。なぜか分かるか?」
「…………………………」
俺は喋るなと言われたから、黙り込む。喋ったら殺されるらしいからだ。
「き、貴様ッ!! 何黙ってやがる!?」
「まてまてまてまてまてま、お前が喋んなと言ったんだろうが?」
「うるさいぞぉ!! いいか? 俺はあんな可愛くて大人しそうな女の子と、貴様が一緒に住んでいることが許せんのだ!!」
「………………………………は?」
カレガナニヲイッテイルノカ俺には理解できなかった。
「貴様のような変質者と住んでいたら、あの子にとって有害だ!!! 貴様の代わりに俺が一緒にいるべきなのだ!!」
フルは声をより大きく荒げて俺に説明してくる。ずっと鼻から、ふーふーと息を出すな、気持ち悪い。
ああ理解した。コイツはロリコンだ。年齢15くらいのネネに発情しているのか……え? それって。
「お前……は、犯罪者予備軍か? しかも自覚なしの」
その言葉でフルは熱くなる。
「なんだと?!! 俺はネネちゃんが無事に生活できるかを見守る事しかしないぞ!!」
「それを変態って言うんだよぉ!!!」
俺は体を反転させて、フルを思いっきり殴る。
その瞬間だけは、ギャグ系補正でパワーが数十倍になった。
なんだよギャグ系補正って。ヒーロー補正かよ。
H分後 ギルド
エッチ分後ではないからな。俺はそんなことを考えつつ、殴れ気絶したフルをビンタして目を覚まさせようとしていた。俺の周りにはパーティメンバーがいる。
「しっかしな、こんな貧乳オブ貧乳に発情するバカがいるとな」
「2号さん?? それボクのこと言ってますよね? コロシマスよ」
「ほっんとね、この美人でスタイルの良い『私』にそういう気持ちを抱くのは分かるけど、こんな貧相な子に発情するなんて。ねぇ? パンイチ」
「いいかぺたんこ。お前に邪な気持ちを抱くやつなんていないし、貧相なのはお前もだr……バッハァ!!」
割ッッ!!! エナが瓦を割るように俺をチョップしてくる。それで舌を噛み、血が大量に流れ出る。
「このへひゃんこめ、ゆるひゃない」
ジンジンと痛む舌を気にしながら、俺はそう言う。
「あ、えーと、け、喧嘩はよくないですよ?!」
ネネが声を張ってエナに言う。しかし彼女は動じず、
「安心して、これは…………そうね、ジャレ合いよ」
ンなわけあるか。考えてる間長いんだよ。
「今はそんなこといいだろ。とりあえずこの犯罪者の処分が先だ」
2号がそう冷たい言葉をかける。だが俺も賛同する。
「そうだな、とりあえず警察にでも」
そう言った時、後ろから声がかけられた。
「あらあらそこの4人目を手に入れたはいいけど、犯罪予備軍の出現とパンツマンとぺたんこちゃんの付き合いの件を気にしている、パーティさん? お話いいかしら?」
振り返ると、そこにはいかにも魔女っぽい格好をした紫色の長髪で、ドクロマークがあるローブを着た女性がいた。
しかし俺と2号はその特徴的な格好や言動など気にせずある一点を見る。そして感想を漏らす。
「「胸……デカ……」」
「ッ! アンタらホント殺すわよ?!」
エナが俺たちに言ってくる。言われた俺らはエナを見る。そして、
「はーーーー。天と地」
「はーーーー。月とスッポン」
そんな言葉を吐く。
エナが顔を真っ赤にしてるが、それを気にせず目の前のパープル色の長髪が話出す。
「私の名前は、ピープル。予知者よ」
パープルじゃないのかよ。人々かよ。
「予知者?」
俺の問いにピープルは答える。
「ええ、この水晶玉を使えば対象の人の未来がぼんやりと分かるのよ。まぁ調べるのに時間がかかるから、戦闘向きではないんだけどね」
「んでその予知者とやらが、俺たちになんのようだ? 詐欺か?」
2号がピープルにそう伝える。
「……まぁ初対面だから怪しんでるのはわかるけど、いきなり詐欺師呼びは……」
「そうだぞ2号。詐欺師ならどう考えてもエナの方だr」
殴ッッ!! エナの拳が俺の耳すぐ隣を通過する。
俺はそれに怯えつつ考える。というかネタがワンパターンすぎんだよ。他に考えろ作者。
「まぁまぁ、落ち着きましょうよ。皆さん」
「私がやってきたのは、落ち着いてと指示を促しているこの白髪の子が、困ってそうだから助けにきたのよ」
「え? ボクですか?」
「ええそうよ。可愛いあなたの……はぁ」
え? コイツ……今最後はぁって興奮している息吐いたか?
ピープルという女性は、ネネを見据える。
「しかし、いきなりはやはり信じられんな。とりあえず俺のことでも見てくれよ」
俺はピープルに声をかける。すると彼女は、
「……まぁそれもそうですよね。じゃあ、あなたから見てあげますよ(早くネネちゃんを見たいのに……この男ったら)」
「なんか小声で言ったか?」
「いえ何も。じゃあパンイチマントさんから見ますね」
そう言って彼女は椅子に座る。俺は今の今まで放置されていたフルを一発ビンタしてから、その向こう側に腰をかける。
「ではいきます」
その言葉とともに、水晶が紫色に光りだす。30秒くらい経ったその時、ピープルが俺に言う。
「はい見させていただきました。大変興味深い結果が出ました」
「ほう、聞かせてくれ」
「えーとですね、具体的には分からないのですが、この先災難だらけの相が出てます。金運も最悪ですね。恋愛の相は……なんかちょっと特殊ですね。はい」
「不幸ばっかりじゃないか。それに恋愛は特殊ってどういうことだよ!」
「ハハハ!! 貴様はとことん主人公らしくないな!! じゃあ次は俺を見てもらおうか」
そう2号が椅子に座ってくる。俺はそのため椅子からどく。
「早くネネちゃんを見たいのに……この変態ときたら(ええ分かりましたよ)」
「おい、本音と建前が逆になってるぞアホ」
そんな2号のツッコミを無視しつつ、水晶玉は光出す。また30秒ほど過ぎると彼女は口を開ける。
「はい見させていただきました。そうですね、アナタの特徴としては恋愛の相が非常に強いものです。まるでハーレム主人公のような相です。」
その言葉を聞いて、ニタァと気持ち悪い笑顔を浮かべ2号は俺を見てくる。
べ、別にそ、そんなの気にしてないからね?!
「しかしその一方で金運は最悪ですし、アイドル運も底辺ですね」
「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ちょっと急に叫ばないでよ、恥ずかしい」
エナが控えめにそう言う。
「だってぇ、だってぇ、アイドル運が悪いってことは……俺はキカ様と……」
椅子から転げ落ち、床をどんどんと叩く2号。俺はその様子を見て、彼の肩に手を当てる。
「安心しろ2号……お前は大丈夫だ」
「……ぅっう、1号……お前……」
「そんなこと占う前から分かっていただろ?」
俺のニコリとした笑顔を見て、我を忘れた2号が飛びかかってくる。しかし、
「アンタらは私にどれだけの恥をかかせる気かしら?!!」
2号を蹴り、俺を殴ったエナは先ほどの椅子に座る。
なんで……俺まで殴るんだ?
「じゃあ次は私ね! 頼むわ」
「……はぁー。分かりました」
「今アンタ露骨にため息ついたわね?」
「いえいえとんでもない」
そんな感じでピープルは水晶玉を見る。俺たちより時間が少しかかって、彼女はエナに言う。
「結果が出ました。お伝えしても?」
「ええ。もちろんよ」
「ではいきます。まずエナさんで一番酷いのは金運です。こんな最悪な金運はないですね。はい。周りの人にも伝染するレベルですよ。おそらくパンイチのおふたりが金運悪いのもアナタのせいかと。前から巨額の借金がありますよね? それだけでは終わりません。近いうちに得るはずだった大金は無くなり、さらに借金は増えていく一方です。さらに言えば……」
「もうやめて!!!」
エナが泣き目になりながらピープルにそう言い放つ。
確かにこの内容はひどい。しかも未来とぼんやりとしか分からないはずなのに、しっかり過去の借金とか色々知りすぎだろ。
「恋愛相ですが、これは面白いですね。聞きますか? というか聞いたほうがいいですよ。ぷっぷ、これは面白すぎる」
「あーあーあーあー、聞きたくない! 聞きたくない!!」
顔を真っ赤にし耳を押さえ目を瞑り、エナはピープルの言葉をかき消す。
目を瞑る必要はどこにもないけどな。しかしアレだな。ここでメディアみたいに切り取ると、ホントにコイツ可愛いな。はっ、あかん。恋に落ちたらダメだ! アイツの本性はダメなんだ!!
「そうですか……エナさんはもう終わりですね。では最後……はぁはぁネネちゃんですよぉ~はぁはぁ」
ゾワッと俺の背筋の鳥肌が立つ。コイツ……フルとはベクトルは違うが、変態だ。
と客観視したらパンイチ変態である俺は考える。
「え、いや、ぼ、ボクは結構です」
「いえいえ、そんなことを言わずにやりましょうよ!! はぁはぁ」
目に星を灯しヨダレを多少垂らしながらピープルはネネへと詰め寄る。
ネネはどう見ても困っていた。その様子を見て俺たちは立ち上がる。
「よぉ、変態。俺たちの仲間が嫌がってるだろ? その身引いてくれよ」
俺がピープルとネネの間に割って立つ。
「そうだぞ。お、お前は俺のキカ様との関係を馬鹿にしやがった詐欺師だ!!」
「テメーはどこに突っ込んでんだよ!! それにお前『の』じゃねーよ!」
「そ、そうよ!! この変態占い師は、わ、私の将来を意味わかんない予知をしたペテン師よ!!」
「「いや、そこは合ってると思うぞ」」
エナが何よ?!! と切れてくるがそれを無視しつつ、俺はネネが仲間になった時のことを回想する。
それは当然、なんでネネ仲間なの? と思う人もいるからだ。
なぜ入るのを躊躇しているかというと、エナに告白云々の件があったからだ。それでギルドどころか、新聞すら書かれそうになったレベル。それほどのことがまるまる2週間で、収まっている自信がなかった。
しかし俺は心を決めて、その扉を開ける。中に一歩入ると、いつもの活気ある声が聞こえてくる。俺は挨拶をする。
「よ、よぉ。久しぶ……ブゥォオ??!!」
刹那、俺は頬の骨が砕けんばかりの強打を受ける。本来イケメンの顔が壮絶にブサイクになり、ツバと血を吐き出しつつ、何メートルも飛ばされる。
ドン! と俺は道の向こう側にある、簡易ゴミ箱へと頭から突っ込む。
「……う、ああ?? なんで……コウナッタ?」
俺はゴミ箱から脱出して、ギルドの扉を見る。そこには、あら息を立て興奮気味のフルがいた。
「ふ、フル! テメー! いきなり何してくんだ!!」
俺が叫ぶと彼は、
「……遺言はそれで良いか? 死ね変態!!」
そう言って俺に向かって駆け出してくる。
「…………は? へ? え? ほ?」
いきなりのことすぎて俺は対応ができなかった。
フルの目は本気であった。本気で俺を殺そうしている。
「??? 何があった?! 説明しやがれこのくそバカ!!!!」
俺は地面に手をついて、そこから逃げ出す。しかし冒険者のフルから逃れるはずもなく、すぐに後ろからタックルされて、拘束される。
フルは完全優位な状態になってから言う。
「ふーふー、テメー……あの白髪の女の子と、一緒に住んでいるとは……どういうことだ? 説明しろ」
「……へ? は、白髪ってネネのことか? それは最近パーティに入った影響で」
「それ以上喋るな。喋ったら俺は貴様を手にかけなきゃいけない」
いや、お前が説明しろ言うから喋ったんですけど。という言葉を俺は飲み込む。
「いや、お前が説明しろ言うから喋ったんですけど」
失礼、その言葉は飲み込めず吐き出してしまいました。
「喋るなと言ったよな? 俺はお前みたいな歩く変質者のことが許せない。なぜか分かるか?」
「…………………………」
俺は喋るなと言われたから、黙り込む。喋ったら殺されるらしいからだ。
「き、貴様ッ!! 何黙ってやがる!?」
「まてまてまてまてまてま、お前が喋んなと言ったんだろうが?」
「うるさいぞぉ!! いいか? 俺はあんな可愛くて大人しそうな女の子と、貴様が一緒に住んでいることが許せんのだ!!」
「………………………………は?」
カレガナニヲイッテイルノカ俺には理解できなかった。
「貴様のような変質者と住んでいたら、あの子にとって有害だ!!! 貴様の代わりに俺が一緒にいるべきなのだ!!」
フルは声をより大きく荒げて俺に説明してくる。ずっと鼻から、ふーふーと息を出すな、気持ち悪い。
ああ理解した。コイツはロリコンだ。年齢15くらいのネネに発情しているのか……え? それって。
「お前……は、犯罪者予備軍か? しかも自覚なしの」
その言葉でフルは熱くなる。
「なんだと?!! 俺はネネちゃんが無事に生活できるかを見守る事しかしないぞ!!」
「それを変態って言うんだよぉ!!!」
俺は体を反転させて、フルを思いっきり殴る。
その瞬間だけは、ギャグ系補正でパワーが数十倍になった。
なんだよギャグ系補正って。ヒーロー補正かよ。
H分後 ギルド
エッチ分後ではないからな。俺はそんなことを考えつつ、殴れ気絶したフルをビンタして目を覚まさせようとしていた。俺の周りにはパーティメンバーがいる。
「しっかしな、こんな貧乳オブ貧乳に発情するバカがいるとな」
「2号さん?? それボクのこと言ってますよね? コロシマスよ」
「ほっんとね、この美人でスタイルの良い『私』にそういう気持ちを抱くのは分かるけど、こんな貧相な子に発情するなんて。ねぇ? パンイチ」
「いいかぺたんこ。お前に邪な気持ちを抱くやつなんていないし、貧相なのはお前もだr……バッハァ!!」
割ッッ!!! エナが瓦を割るように俺をチョップしてくる。それで舌を噛み、血が大量に流れ出る。
「このへひゃんこめ、ゆるひゃない」
ジンジンと痛む舌を気にしながら、俺はそう言う。
「あ、えーと、け、喧嘩はよくないですよ?!」
ネネが声を張ってエナに言う。しかし彼女は動じず、
「安心して、これは…………そうね、ジャレ合いよ」
ンなわけあるか。考えてる間長いんだよ。
「今はそんなこといいだろ。とりあえずこの犯罪者の処分が先だ」
2号がそう冷たい言葉をかける。だが俺も賛同する。
「そうだな、とりあえず警察にでも」
そう言った時、後ろから声がかけられた。
「あらあらそこの4人目を手に入れたはいいけど、犯罪予備軍の出現とパンツマンとぺたんこちゃんの付き合いの件を気にしている、パーティさん? お話いいかしら?」
振り返ると、そこにはいかにも魔女っぽい格好をした紫色の長髪で、ドクロマークがあるローブを着た女性がいた。
しかし俺と2号はその特徴的な格好や言動など気にせずある一点を見る。そして感想を漏らす。
「「胸……デカ……」」
「ッ! アンタらホント殺すわよ?!」
エナが俺たちに言ってくる。言われた俺らはエナを見る。そして、
「はーーーー。天と地」
「はーーーー。月とスッポン」
そんな言葉を吐く。
エナが顔を真っ赤にしてるが、それを気にせず目の前のパープル色の長髪が話出す。
「私の名前は、ピープル。予知者よ」
パープルじゃないのかよ。人々かよ。
「予知者?」
俺の問いにピープルは答える。
「ええ、この水晶玉を使えば対象の人の未来がぼんやりと分かるのよ。まぁ調べるのに時間がかかるから、戦闘向きではないんだけどね」
「んでその予知者とやらが、俺たちになんのようだ? 詐欺か?」
2号がピープルにそう伝える。
「……まぁ初対面だから怪しんでるのはわかるけど、いきなり詐欺師呼びは……」
「そうだぞ2号。詐欺師ならどう考えてもエナの方だr」
殴ッッ!! エナの拳が俺の耳すぐ隣を通過する。
俺はそれに怯えつつ考える。というかネタがワンパターンすぎんだよ。他に考えろ作者。
「まぁまぁ、落ち着きましょうよ。皆さん」
「私がやってきたのは、落ち着いてと指示を促しているこの白髪の子が、困ってそうだから助けにきたのよ」
「え? ボクですか?」
「ええそうよ。可愛いあなたの……はぁ」
え? コイツ……今最後はぁって興奮している息吐いたか?
ピープルという女性は、ネネを見据える。
「しかし、いきなりはやはり信じられんな。とりあえず俺のことでも見てくれよ」
俺はピープルに声をかける。すると彼女は、
「……まぁそれもそうですよね。じゃあ、あなたから見てあげますよ(早くネネちゃんを見たいのに……この男ったら)」
「なんか小声で言ったか?」
「いえ何も。じゃあパンイチマントさんから見ますね」
そう言って彼女は椅子に座る。俺は今の今まで放置されていたフルを一発ビンタしてから、その向こう側に腰をかける。
「ではいきます」
その言葉とともに、水晶が紫色に光りだす。30秒くらい経ったその時、ピープルが俺に言う。
「はい見させていただきました。大変興味深い結果が出ました」
「ほう、聞かせてくれ」
「えーとですね、具体的には分からないのですが、この先災難だらけの相が出てます。金運も最悪ですね。恋愛の相は……なんかちょっと特殊ですね。はい」
「不幸ばっかりじゃないか。それに恋愛は特殊ってどういうことだよ!」
「ハハハ!! 貴様はとことん主人公らしくないな!! じゃあ次は俺を見てもらおうか」
そう2号が椅子に座ってくる。俺はそのため椅子からどく。
「早くネネちゃんを見たいのに……この変態ときたら(ええ分かりましたよ)」
「おい、本音と建前が逆になってるぞアホ」
そんな2号のツッコミを無視しつつ、水晶玉は光出す。また30秒ほど過ぎると彼女は口を開ける。
「はい見させていただきました。そうですね、アナタの特徴としては恋愛の相が非常に強いものです。まるでハーレム主人公のような相です。」
その言葉を聞いて、ニタァと気持ち悪い笑顔を浮かべ2号は俺を見てくる。
べ、別にそ、そんなの気にしてないからね?!
「しかしその一方で金運は最悪ですし、アイドル運も底辺ですね」
「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ちょっと急に叫ばないでよ、恥ずかしい」
エナが控えめにそう言う。
「だってぇ、だってぇ、アイドル運が悪いってことは……俺はキカ様と……」
椅子から転げ落ち、床をどんどんと叩く2号。俺はその様子を見て、彼の肩に手を当てる。
「安心しろ2号……お前は大丈夫だ」
「……ぅっう、1号……お前……」
「そんなこと占う前から分かっていただろ?」
俺のニコリとした笑顔を見て、我を忘れた2号が飛びかかってくる。しかし、
「アンタらは私にどれだけの恥をかかせる気かしら?!!」
2号を蹴り、俺を殴ったエナは先ほどの椅子に座る。
なんで……俺まで殴るんだ?
「じゃあ次は私ね! 頼むわ」
「……はぁー。分かりました」
「今アンタ露骨にため息ついたわね?」
「いえいえとんでもない」
そんな感じでピープルは水晶玉を見る。俺たちより時間が少しかかって、彼女はエナに言う。
「結果が出ました。お伝えしても?」
「ええ。もちろんよ」
「ではいきます。まずエナさんで一番酷いのは金運です。こんな最悪な金運はないですね。はい。周りの人にも伝染するレベルですよ。おそらくパンイチのおふたりが金運悪いのもアナタのせいかと。前から巨額の借金がありますよね? それだけでは終わりません。近いうちに得るはずだった大金は無くなり、さらに借金は増えていく一方です。さらに言えば……」
「もうやめて!!!」
エナが泣き目になりながらピープルにそう言い放つ。
確かにこの内容はひどい。しかも未来とぼんやりとしか分からないはずなのに、しっかり過去の借金とか色々知りすぎだろ。
「恋愛相ですが、これは面白いですね。聞きますか? というか聞いたほうがいいですよ。ぷっぷ、これは面白すぎる」
「あーあーあーあー、聞きたくない! 聞きたくない!!」
顔を真っ赤にし耳を押さえ目を瞑り、エナはピープルの言葉をかき消す。
目を瞑る必要はどこにもないけどな。しかしアレだな。ここでメディアみたいに切り取ると、ホントにコイツ可愛いな。はっ、あかん。恋に落ちたらダメだ! アイツの本性はダメなんだ!!
「そうですか……エナさんはもう終わりですね。では最後……はぁはぁネネちゃんですよぉ~はぁはぁ」
ゾワッと俺の背筋の鳥肌が立つ。コイツ……フルとはベクトルは違うが、変態だ。
と客観視したらパンイチ変態である俺は考える。
「え、いや、ぼ、ボクは結構です」
「いえいえ、そんなことを言わずにやりましょうよ!! はぁはぁ」
目に星を灯しヨダレを多少垂らしながらピープルはネネへと詰め寄る。
ネネはどう見ても困っていた。その様子を見て俺たちは立ち上がる。
「よぉ、変態。俺たちの仲間が嫌がってるだろ? その身引いてくれよ」
俺がピープルとネネの間に割って立つ。
「そうだぞ。お、お前は俺のキカ様との関係を馬鹿にしやがった詐欺師だ!!」
「テメーはどこに突っ込んでんだよ!! それにお前『の』じゃねーよ!」
「そ、そうよ!! この変態占い師は、わ、私の将来を意味わかんない予知をしたペテン師よ!!」
「「いや、そこは合ってると思うぞ」」
エナが何よ?!! と切れてくるがそれを無視しつつ、俺はネネが仲間になった時のことを回想する。
それは当然、なんでネネ仲間なの? と思う人もいるからだ。
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