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第一章 Not Club, Committee, Charity, But We are

おまけ ラーメン

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 熱く白い湯気が漂う。いくつもの素材を織り交ぜたことによる独特の匂い。
 さっぱりはしつつもインパクトのあるスープを口に入れ、喉に染みる麺を絡める。
 ラーメン。
 内丸が好きな食べ物の一つだ。
 
「あっつ」

 隣でレンゲにすくったスープをふーふーと冷ますのは、アイドルや声優に負けず劣らずの容姿を持つ白秋白嶺。
 なぜ2人がラーメン屋に来ているのかというと。



 Z minutes ago 

「さてさてアイドルからの依頼も完遂したことだ。どうだい内丸。君にとっての初依頼完遂祝いとして、ご飯でも行かないか?」

(な、ご飯のお誘いだとぉぉ?!! こ、こんな美人な先輩とご飯デート?! 行くしかないだろ!!)

 正直アイドル説得で色々と調べたりしていて疲労が溜まっていた内丸であったが、白秋からの誘いによってそのような疲れは吹っ飛んでいた。

「いいんですか? ちょうどお腹減っていたので是非行きましょう!」

(さーどこに行くのかな? おしゃれなイタリアンか? いや先輩は海軍ってこともあるから寿司屋とかか? どっちにしろ楽しみだ)



 と思っていたのに!! 

「…………先輩ここは…………ラーメン屋ですか?」
「ああそうだ。私のお気に入りの飲食店さ。安い早い美味いの三拍子はもちろん。無料のライスがついてくるのが、学生の懐に優しい」

(懐に優しいって。アンタ海軍大将だろ。いくら稼いでいるんだよ)

 そうは思いつつも女性とのご飯に胸を弾ませて、内丸は横開きのドアを開ける。
 活気のある店員のらっしゃせーを聞きながら、食券機で白秋におすすめを聞く。しょうゆラーメンとシンプルなものをおすすめされ、さらには先輩だからと奢られた。その後、カウンター席に2人並んで座る。
 熱い店内だからか、白秋は黒が特徴的な帽子を脱いで、ヘアゴムで長い髪の毛を一本にまとめる。
 ポニーテールにすることでうなじが見えてしまい、内丸の体が熱くなった。

「それで内丸はどうだった? 裏裏会うらりかいの初任務は」
「そうですね、衝突の回避、緩衝。やはり難しさはありましたがやりがいもありましたね」
「そうかそうか。それを聞けてよかったよ。…………それで君は今は仮入部という形だが、どうだい。正式に裏裏会に入らないか?」

(なるほど。それを聞きたくてご飯に誘ったのか)

「…………いいですよ。俺としても楽しかったので」
「ふふ、君ならそういってくれると思ったよ」

 内丸の返答を聞いて、ラーメン限定のポニーテールをキメる白大将は、平凡を見つめながら微笑んだ。

「しかしナイスタイミングだ。これからに向けて学園全体で忙しくなるからな。我々の仕事も増えるぞ」
「ん? それっていっt」
「へいお待ち!!!」

 疑問を投げようとした内丸を物理的に遮ったのは、白い湯気といい匂いを放つラーメンであった。

「お! きたきた。さぁ内丸ラーメンを食べようか」

(体育祭が気になったが、まぁいいか。今はこの人とのご飯を楽しもう)

 平凡。内丸多比良が正式に裏裏会に所属した。

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