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声が聞こえる。
描き続けろと怒鳴りつける声が。
それが『契約』だ、と暗闇が囁く。
けれども震える手で握りしめた筆はもう何も描いてはくれない。
真っ白のキャンバスの前に立ち竦む私の首を冷たい手が這う。ジワジワと気道が塞がれ、息ができない。力の抜けた手から絵の具の着いた筆が床に転がり落ちる。
あいつの機嫌を損ねた時点で、いや、あいつと手を組んだあの時から、私の運命は決まっていた。
その時だった。
「おとーさん?」
小さな足音と高い声に心臓が凍る。首を絞める手が緩み、一気に肺へ流れ込んだ酸素に喘ぐ。
誰だ、と暗闇が問う。
──嗚呼。
「……な」
来ないでくれ。
キィ、とドアが開く。
暗闇が、ドアの方へと伸びていく。
駄目だ、駄目だ、駄目だ!
「おとうさん?すごい音がしたよ、だいじょ──」
「来るな!」
開きかけたドアに向かって怒鳴りつけると、ドアはそこでピタリと止まった。
ドア越しに怯えているのが分かって、内心で済まないと詫びる。
恨まれてもいい、嫌われてもいい。
何があっても、この子だけは、守らなければ──!
描き続けろと怒鳴りつける声が。
それが『契約』だ、と暗闇が囁く。
けれども震える手で握りしめた筆はもう何も描いてはくれない。
真っ白のキャンバスの前に立ち竦む私の首を冷たい手が這う。ジワジワと気道が塞がれ、息ができない。力の抜けた手から絵の具の着いた筆が床に転がり落ちる。
あいつの機嫌を損ねた時点で、いや、あいつと手を組んだあの時から、私の運命は決まっていた。
その時だった。
「おとーさん?」
小さな足音と高い声に心臓が凍る。首を絞める手が緩み、一気に肺へ流れ込んだ酸素に喘ぐ。
誰だ、と暗闇が問う。
──嗚呼。
「……な」
来ないでくれ。
キィ、とドアが開く。
暗闇が、ドアの方へと伸びていく。
駄目だ、駄目だ、駄目だ!
「おとうさん?すごい音がしたよ、だいじょ──」
「来るな!」
開きかけたドアに向かって怒鳴りつけると、ドアはそこでピタリと止まった。
ドア越しに怯えているのが分かって、内心で済まないと詫びる。
恨まれてもいい、嫌われてもいい。
何があっても、この子だけは、守らなければ──!
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