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2話「強力か無力か」
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「…………は?」
黒髪の女性は混乱した顔で私を見つめる
よく思い出すと…彼女は…
盗賊が居ることをわかっているような発言をしている…
そして、どうやったかわからないけど…彼女はどうにかして魔法を消したこと
…もう一つ、あの異常な速さ……
刃を一瞬にして破壊する力と…相手に一気に接近する力…
この強さは…国の今の状況を打開する為に…彼女が必要だと思うの
「どう?私の奴隷になる気はないかしら」
「……私に奴隷になれと言う人間と会うのは初めてだ」
「あ、あ、アイルス様!?奴隷って…訳のわからない力を持った者を奴隷なんて…」
「…アイルス様……?アイルス様だって…!?」
今のメイドの声で、周りの騎士達が私の存在に気づいてしまう
「どうして姫様が此所に…!?」
今は見つかっても逆に好都合…よし
「だが、奴隷になる気はない…なぜ奴隷にしたいのかは知らんが…」
「ですが、今のこの状況で貴女は目立っていますわよ?宿の人も騎士の人も…通してくれるのでしょうか?」
「……………」
黒髪の女性は周りを見て、今の自分の状況を確認している様子
「とりあえず奴隷かは置いておいて、私と共に城に来たら…身は保証しますわよ」
恐らく、この場から逃げることは容易いと思うわ…
だけど…門での発言と通して欲しいと何度も言ってる辺りから…
もうこの人には…外で野宿することは…何らかの理由で出来ないと思うわ
「…………案内を頼む…」
どうやら当たったようね
「わかったわ……事情は後で説明します。騎士達よ、今は民の救助に専念しなさい!」
騎士達の方へと向いて私は命令をする
「は、はっ!」
騎士達は崩れた建物に向かい、怪我をした民を連れていく…
「ユミ、貴女は先に城に戻って部屋の用意を」
ユミと言うのは私のメイドの子…
「わ、わかりました…」
メイドは屋根の上を走り、城へと戻った
ひとまず、これでよしとして…
「こっちよ」
「……………」
私は黒髪の女性を誘導し、城へと向かった
城へと戻り…城の廊下を歩く
「此所が私達の城よ。少し変わった所もあるけど…綺麗でしょ?」
「もう見慣れた…」
本当に旅が長いのね。城にまで行ったことがあるのかしら?
「アイルス様、部屋の用意が出来ました…。こちらです」
客室の前で待っていたメイドが話を掛けてくる
自慢じゃないけど、ユミはメイド達の中でも
掃除や生活、剣の腕もほとんど完璧と言っても良いわね
ただし……料理は………
もしユミがレストランを開くなら、国の民は滅ぶでしょうね
「ありがとう。二人で話をしたいから、扉の見張りを任せても良いかしら?」
「かしこまりました」
「……………」
メイドはドアを開け、私と黒髪の女性を部屋に入れる
さて…まずは名前からでも聞いてみようかしら…
「そこの椅子に座っても良いわよ。紅茶はいかがかしら?」
「あまり紅茶は好みではない…」
黒髪の女性は荷物を降ろし…椅子に座り、私の方を見る
「そう…。貴女、名前は?」
「名前……幾つをも名前があるが……そうだな…名はルゥードだ」
旅の人…ルゥードは着ていたローブを脱ぎ、椅子に掛ける
ローブの下には…黒い軽装の鎧を着ていたのね…
胸もあるみたいだし…やっぱり女性なのよね…?
だけど、こんなに背が高いから
違和感があるわ…それに……
「ルゥード…男性みたいな名前ね」
「半男だからな」
………え?
「半男……?」
「そうだ…いや、元は男だったのだが……ある事情で上半身や体格などが女になっている…」
だから背が高いし名前が男のようなのね
「下半身には男の物があるの?」
「そうなる…」
なんだかお手洗いが大変そう…
「…それで……私に奴隷になれとは…どうしてだ?」
「貴方の力…その力を利用して国を平和にしたいのよ」
「……ほう…」
少し考えてる様子で私を見ながら話を進めていくルゥード
「もし断れば?」
「申し訳ないけど…どんな手を使ってでも、貴方を奴隷にさせてみせるわ。貴方にどんなに力の差があっても…この体を使ってでもね」
その覚悟も貴方の力を利用できるなら私はやれるわ
国の為に…民の為に
「傭兵なら良い…金さえ払ってくれたら仕事は引き受けよう…。だが、奴隷は違う。主のために一生の服従だ…自由を失ったら私は旅が出来なくなるのでな…」
「安心して。外出、食事、お風呂、手洗い、部屋、お金、確かに全てではないかもしれないけど…大体のことは保証するわ」
「…なぜ傭兵を雇わない?金ならあるだろう?」
「あるけど…今は建物の修理などで使えないし…傭兵は信用ならないの」
以前にも傭兵は雇ったことはあるけど…
一回の依頼で高額を払わされるし
いちいち払え払えとうるさいわ…
と考えてきたうちにルゥードは立ち上がり…口を開く
「返事は拒否させてもらう」
その一言だけ言って部屋の扉まで歩く
「貴方、本当に良いの?貴方のような力を持った人が…あんなに国に入りたかったのには事情があるわよね?」
「……………」
扉の取っ手を持とうとした瞬間、一瞬だけ動揺を初めて見せる
「何を貴方がしたいのかはわからないけど…貴方の顔は既に広間っているわ。買いたい物や取引、観光も目立って出来ないと思うわよ」
「……………」
無言のまま、振り返るルゥード…
やっぱり…何かあるようね…もっと揺さぶってみましょうか
「大方、旅に何か必要な物なのかしら?」
「…勘が鋭いな。無能と呼ばれてるとは思えない…何者なんだ?」
私に少し興味と警戒を見せたわね
…だけど、無能と呼ばれてるとは思えない…か
王としての役目が果たせないのよ…!
「私はシュルンドル王国、女王のアイルス。貴方が欲しい」
「……………」
またルゥードは私の目を見つめる…
「……良いだろう。奴隷は無理だが…少し興味が湧いた。傭兵と言うことで3メタセアで雇ってもらって良いぞ」
メタセ…この世界では2万円を意味するわね
1メタで1円、メタセで1000円、メタセアで1万円、メタセアロで10万…という感じね
…傭兵、とりあえず興味が湧いてくれたのなら払っても良いかもしれないけど…
「金さえ頂けたら、やることはしてやろう」
「そんなに安くて良いの?」
「あくまで試すだけだ…」
まぁよいわ…このチャンスを逃したらいけない
もっと彼の事を知って引き入れないとね
「わかった。払うわ」
私は自分の部屋にあったメタをルゥードに渡す
「3日の間だけの契約だ…さて、何をしたら良い?」
3日以内…3日以内ね…
「まずは…さっきの盗賊の時の戦いの…あれは何なの?説明してくれないかしら?」
刃を折ったのは予想がつくわ
最後に殴ったように恐らくは凄い速さと力で折ったのだと思うけど
魔法のに関しては全くわからないわ
「その顔…なぜ私に魔法が効かなかったのかと思っているようだな」
顔だけでも考えてることはわかるのね…
「えぇ。そうよ」
「魔術を使う者には何らかの糸のような物が体内にはある。その糸は体を伝わり、魔力を流す…その魔力を読み取り、糸を一時的に分解して魔法を使えなくした…」
読み取って……分解?少しわからないわね…
「読み取るだけじゃ分解は出来ないんじゃないかしら?」
「本来なら、この力を使う場合は直接に相手の手に触れるかしないと無効には出来ないだろう。だが…私は長い年月の時間を使い…魔法か魔力を見るだけで無効に出来るようになった…。あぁなぜそうなったのかは答えれない。知られたらいろいろとマズイだろうしな」
確かに…そんな事が誰でも出来たら大変なことになるわね……
だけど…同時にその人だけ無効に出来るようになったのなら…一方的な気もするけど…
「それに…この世界には魔術の名前さえ言ったら後は己の魔力次第で発動するかしないかの世界だ…詠唱を言わないから余計に速く無効にすることは容易い…」
この世界には…?
詠唱を言わないとかどうとかはわからないけど…
「まるで別の世界から来たような言い方ね」
「さてな…旅が長いからそう思えるのだろう…」
不自然な答え方…まだまだ探ってみないとわからないわね
「そういえば、その鞄には何が入っているの?」
ずっと拒んで見せようとはしなかったけど…気になるからダメ元で言ってみたわ
「……どうせ、いずれは3日の間でも見られるんだ。見せておこう」
ルゥードは椅子から立ち上がり、鞄の中身を見せる…
その中には…あれ?
「…これは……何かしら?」
中に入っていたのは…布?
破れた布や…割れた瓶…?…何かの持ち手…?
よくわからないけど…どういうことなのかしら?
「旅の道具と言ってたわよね…?どういうこと?」
「……恥ずかしい話だが、この国に来る途中で…森に野宿しようと鞄を置いて枝や枯葉を集めていたら…離れていた時に酸を吐く魔物に鞄の中身を荒らされていてな…倒すことは簡単だったのだが…」
「道具や食料を荒らされてしまい旅を続けにくくなったから…この国に来て道具と食料を調達しようとしてたのね。なるほど…」
「………食料は鹿などを殺して干し肉を作ろうとはしたが…」
ルゥードは腰の裏にぶら下げていた短剣を抜くと…
その刃は…欠けているようにも見えるし…鉄が溶けているようにも見えた
「その酸を吐く魔物を刺した時に短剣も体内の酸を浴びてしまい、使い物にならなくなってしまってな…」
確かに…続けるのはいくらなんでも困難ね…
「剣はあっても動物の解体には向かない…大きすぎて細かい所を削ぐことは出来ない…短剣さえあれば大抵のことは出来るのだが…」
困っている顔を見せるルゥード…
…此処は、私がやらないといけなさそうね
あ、そうだ
私はあることを思いつき、ルゥードに話を掛ける
「新しい短剣、私が買ってあげようかしら?」
「……何か裏のある顔だな…なんだ?」
「短剣を買ったら…そうね。私を1日だけ森に連れて行ってくれないかしら」
「ほう…なぜだ?」
壊れた短剣をしまい、私の顔を見るルゥード
「貴方を知るためには、普段の貴方が何をしているのかを見た方が貴方を知れると思ってね…どう?1日だけ森に連れて行ってくれないかしら?」
「…私を…知る……か」
少しだけ遠くを見つめるような目をしながら考え込む…
そして口を開いて喋りだす
「それが依頼主の事で連れて行っても構わんが…経験はあるのか?」
「…ないわね」
外に出ることは少ないけど…
まだ魔物が居なかった昔に…近くの森に父上様と母上様と共に出掛けていたわ
「はぁ…正直、経験のない者をいきなり危険な場所に行かせても足手まといになるだけだ」
「そのくらいわかってるわ…自分が無力だってことぐらい…だけど、貴方は傭兵だとしても…守ってくれるわよね?」
1日の間に知るのもあるけど…
私は他にも、彼は忠実で忠誠心のようなものはあるのかを試したいのよ
「…はっはっははは!…なるほどな、何がなんでも私を奴隷にしたいのだな」
彼は笑いながら私を見る…
「ふっふふ…そうよ。私は貴方が欲しいのだから」
私も少し笑いながら答える
「だが、一つだけ言わせてくれ」
ルゥードは私の目の前に近づき…こう答えてくれた
「生きている限り、無力ということは絶対にありえないことだ」
……彼の言葉には何かの説得力が感じられた
無力…なぜルゥードはそこまで否定するのかな
追い詰める力より、生き抜く力の方がよっぽど固い…!
彼の言葉には説得力も感じられる…だけど
同時に何かの霧に隠れたような感情が見えてくるような気がしてきた
…一体、彼はなぜ旅を続けてるのかしら
そして、どうしてあんな強さを持っていたのかしらね
いろいろと謎だけれど…
私は彼をもっと知るために…探ろうと外へと出掛ける準備をしだした
黒髪の女性は混乱した顔で私を見つめる
よく思い出すと…彼女は…
盗賊が居ることをわかっているような発言をしている…
そして、どうやったかわからないけど…彼女はどうにかして魔法を消したこと
…もう一つ、あの異常な速さ……
刃を一瞬にして破壊する力と…相手に一気に接近する力…
この強さは…国の今の状況を打開する為に…彼女が必要だと思うの
「どう?私の奴隷になる気はないかしら」
「……私に奴隷になれと言う人間と会うのは初めてだ」
「あ、あ、アイルス様!?奴隷って…訳のわからない力を持った者を奴隷なんて…」
「…アイルス様……?アイルス様だって…!?」
今のメイドの声で、周りの騎士達が私の存在に気づいてしまう
「どうして姫様が此所に…!?」
今は見つかっても逆に好都合…よし
「だが、奴隷になる気はない…なぜ奴隷にしたいのかは知らんが…」
「ですが、今のこの状況で貴女は目立っていますわよ?宿の人も騎士の人も…通してくれるのでしょうか?」
「……………」
黒髪の女性は周りを見て、今の自分の状況を確認している様子
「とりあえず奴隷かは置いておいて、私と共に城に来たら…身は保証しますわよ」
恐らく、この場から逃げることは容易いと思うわ…
だけど…門での発言と通して欲しいと何度も言ってる辺りから…
もうこの人には…外で野宿することは…何らかの理由で出来ないと思うわ
「…………案内を頼む…」
どうやら当たったようね
「わかったわ……事情は後で説明します。騎士達よ、今は民の救助に専念しなさい!」
騎士達の方へと向いて私は命令をする
「は、はっ!」
騎士達は崩れた建物に向かい、怪我をした民を連れていく…
「ユミ、貴女は先に城に戻って部屋の用意を」
ユミと言うのは私のメイドの子…
「わ、わかりました…」
メイドは屋根の上を走り、城へと戻った
ひとまず、これでよしとして…
「こっちよ」
「……………」
私は黒髪の女性を誘導し、城へと向かった
城へと戻り…城の廊下を歩く
「此所が私達の城よ。少し変わった所もあるけど…綺麗でしょ?」
「もう見慣れた…」
本当に旅が長いのね。城にまで行ったことがあるのかしら?
「アイルス様、部屋の用意が出来ました…。こちらです」
客室の前で待っていたメイドが話を掛けてくる
自慢じゃないけど、ユミはメイド達の中でも
掃除や生活、剣の腕もほとんど完璧と言っても良いわね
ただし……料理は………
もしユミがレストランを開くなら、国の民は滅ぶでしょうね
「ありがとう。二人で話をしたいから、扉の見張りを任せても良いかしら?」
「かしこまりました」
「……………」
メイドはドアを開け、私と黒髪の女性を部屋に入れる
さて…まずは名前からでも聞いてみようかしら…
「そこの椅子に座っても良いわよ。紅茶はいかがかしら?」
「あまり紅茶は好みではない…」
黒髪の女性は荷物を降ろし…椅子に座り、私の方を見る
「そう…。貴女、名前は?」
「名前……幾つをも名前があるが……そうだな…名はルゥードだ」
旅の人…ルゥードは着ていたローブを脱ぎ、椅子に掛ける
ローブの下には…黒い軽装の鎧を着ていたのね…
胸もあるみたいだし…やっぱり女性なのよね…?
だけど、こんなに背が高いから
違和感があるわ…それに……
「ルゥード…男性みたいな名前ね」
「半男だからな」
………え?
「半男……?」
「そうだ…いや、元は男だったのだが……ある事情で上半身や体格などが女になっている…」
だから背が高いし名前が男のようなのね
「下半身には男の物があるの?」
「そうなる…」
なんだかお手洗いが大変そう…
「…それで……私に奴隷になれとは…どうしてだ?」
「貴方の力…その力を利用して国を平和にしたいのよ」
「……ほう…」
少し考えてる様子で私を見ながら話を進めていくルゥード
「もし断れば?」
「申し訳ないけど…どんな手を使ってでも、貴方を奴隷にさせてみせるわ。貴方にどんなに力の差があっても…この体を使ってでもね」
その覚悟も貴方の力を利用できるなら私はやれるわ
国の為に…民の為に
「傭兵なら良い…金さえ払ってくれたら仕事は引き受けよう…。だが、奴隷は違う。主のために一生の服従だ…自由を失ったら私は旅が出来なくなるのでな…」
「安心して。外出、食事、お風呂、手洗い、部屋、お金、確かに全てではないかもしれないけど…大体のことは保証するわ」
「…なぜ傭兵を雇わない?金ならあるだろう?」
「あるけど…今は建物の修理などで使えないし…傭兵は信用ならないの」
以前にも傭兵は雇ったことはあるけど…
一回の依頼で高額を払わされるし
いちいち払え払えとうるさいわ…
と考えてきたうちにルゥードは立ち上がり…口を開く
「返事は拒否させてもらう」
その一言だけ言って部屋の扉まで歩く
「貴方、本当に良いの?貴方のような力を持った人が…あんなに国に入りたかったのには事情があるわよね?」
「……………」
扉の取っ手を持とうとした瞬間、一瞬だけ動揺を初めて見せる
「何を貴方がしたいのかはわからないけど…貴方の顔は既に広間っているわ。買いたい物や取引、観光も目立って出来ないと思うわよ」
「……………」
無言のまま、振り返るルゥード…
やっぱり…何かあるようね…もっと揺さぶってみましょうか
「大方、旅に何か必要な物なのかしら?」
「…勘が鋭いな。無能と呼ばれてるとは思えない…何者なんだ?」
私に少し興味と警戒を見せたわね
…だけど、無能と呼ばれてるとは思えない…か
王としての役目が果たせないのよ…!
「私はシュルンドル王国、女王のアイルス。貴方が欲しい」
「……………」
またルゥードは私の目を見つめる…
「……良いだろう。奴隷は無理だが…少し興味が湧いた。傭兵と言うことで3メタセアで雇ってもらって良いぞ」
メタセ…この世界では2万円を意味するわね
1メタで1円、メタセで1000円、メタセアで1万円、メタセアロで10万…という感じね
…傭兵、とりあえず興味が湧いてくれたのなら払っても良いかもしれないけど…
「金さえ頂けたら、やることはしてやろう」
「そんなに安くて良いの?」
「あくまで試すだけだ…」
まぁよいわ…このチャンスを逃したらいけない
もっと彼の事を知って引き入れないとね
「わかった。払うわ」
私は自分の部屋にあったメタをルゥードに渡す
「3日の間だけの契約だ…さて、何をしたら良い?」
3日以内…3日以内ね…
「まずは…さっきの盗賊の時の戦いの…あれは何なの?説明してくれないかしら?」
刃を折ったのは予想がつくわ
最後に殴ったように恐らくは凄い速さと力で折ったのだと思うけど
魔法のに関しては全くわからないわ
「その顔…なぜ私に魔法が効かなかったのかと思っているようだな」
顔だけでも考えてることはわかるのね…
「えぇ。そうよ」
「魔術を使う者には何らかの糸のような物が体内にはある。その糸は体を伝わり、魔力を流す…その魔力を読み取り、糸を一時的に分解して魔法を使えなくした…」
読み取って……分解?少しわからないわね…
「読み取るだけじゃ分解は出来ないんじゃないかしら?」
「本来なら、この力を使う場合は直接に相手の手に触れるかしないと無効には出来ないだろう。だが…私は長い年月の時間を使い…魔法か魔力を見るだけで無効に出来るようになった…。あぁなぜそうなったのかは答えれない。知られたらいろいろとマズイだろうしな」
確かに…そんな事が誰でも出来たら大変なことになるわね……
だけど…同時にその人だけ無効に出来るようになったのなら…一方的な気もするけど…
「それに…この世界には魔術の名前さえ言ったら後は己の魔力次第で発動するかしないかの世界だ…詠唱を言わないから余計に速く無効にすることは容易い…」
この世界には…?
詠唱を言わないとかどうとかはわからないけど…
「まるで別の世界から来たような言い方ね」
「さてな…旅が長いからそう思えるのだろう…」
不自然な答え方…まだまだ探ってみないとわからないわね
「そういえば、その鞄には何が入っているの?」
ずっと拒んで見せようとはしなかったけど…気になるからダメ元で言ってみたわ
「……どうせ、いずれは3日の間でも見られるんだ。見せておこう」
ルゥードは椅子から立ち上がり、鞄の中身を見せる…
その中には…あれ?
「…これは……何かしら?」
中に入っていたのは…布?
破れた布や…割れた瓶…?…何かの持ち手…?
よくわからないけど…どういうことなのかしら?
「旅の道具と言ってたわよね…?どういうこと?」
「……恥ずかしい話だが、この国に来る途中で…森に野宿しようと鞄を置いて枝や枯葉を集めていたら…離れていた時に酸を吐く魔物に鞄の中身を荒らされていてな…倒すことは簡単だったのだが…」
「道具や食料を荒らされてしまい旅を続けにくくなったから…この国に来て道具と食料を調達しようとしてたのね。なるほど…」
「………食料は鹿などを殺して干し肉を作ろうとはしたが…」
ルゥードは腰の裏にぶら下げていた短剣を抜くと…
その刃は…欠けているようにも見えるし…鉄が溶けているようにも見えた
「その酸を吐く魔物を刺した時に短剣も体内の酸を浴びてしまい、使い物にならなくなってしまってな…」
確かに…続けるのはいくらなんでも困難ね…
「剣はあっても動物の解体には向かない…大きすぎて細かい所を削ぐことは出来ない…短剣さえあれば大抵のことは出来るのだが…」
困っている顔を見せるルゥード…
…此処は、私がやらないといけなさそうね
あ、そうだ
私はあることを思いつき、ルゥードに話を掛ける
「新しい短剣、私が買ってあげようかしら?」
「……何か裏のある顔だな…なんだ?」
「短剣を買ったら…そうね。私を1日だけ森に連れて行ってくれないかしら」
「ほう…なぜだ?」
壊れた短剣をしまい、私の顔を見るルゥード
「貴方を知るためには、普段の貴方が何をしているのかを見た方が貴方を知れると思ってね…どう?1日だけ森に連れて行ってくれないかしら?」
「…私を…知る……か」
少しだけ遠くを見つめるような目をしながら考え込む…
そして口を開いて喋りだす
「それが依頼主の事で連れて行っても構わんが…経験はあるのか?」
「…ないわね」
外に出ることは少ないけど…
まだ魔物が居なかった昔に…近くの森に父上様と母上様と共に出掛けていたわ
「はぁ…正直、経験のない者をいきなり危険な場所に行かせても足手まといになるだけだ」
「そのくらいわかってるわ…自分が無力だってことぐらい…だけど、貴方は傭兵だとしても…守ってくれるわよね?」
1日の間に知るのもあるけど…
私は他にも、彼は忠実で忠誠心のようなものはあるのかを試したいのよ
「…はっはっははは!…なるほどな、何がなんでも私を奴隷にしたいのだな」
彼は笑いながら私を見る…
「ふっふふ…そうよ。私は貴方が欲しいのだから」
私も少し笑いながら答える
「だが、一つだけ言わせてくれ」
ルゥードは私の目の前に近づき…こう答えてくれた
「生きている限り、無力ということは絶対にありえないことだ」
……彼の言葉には何かの説得力が感じられた
無力…なぜルゥードはそこまで否定するのかな
追い詰める力より、生き抜く力の方がよっぽど固い…!
彼の言葉には説得力も感じられる…だけど
同時に何かの霧に隠れたような感情が見えてくるような気がしてきた
…一体、彼はなぜ旅を続けてるのかしら
そして、どうしてあんな強さを持っていたのかしらね
いろいろと謎だけれど…
私は彼をもっと知るために…探ろうと外へと出掛ける準備をしだした
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