異人こそは寒夜に踊る

進常椀富

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2 裸エプロンの戦い

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 2 裸エプロンの戦い

 凛可は快く目覚めた。
 一夜明けて、今日は日曜だった。
 ほどよい睡眠を経てしまうと、昨晩の出来事は非現実的すぎて、凛可の実体験としてまだ馴染んでいなかった。何より日曜の朝は忙しい。凛可にはアルバイトがあった。急いで支度を済ませて、自転車で店へ向かう。
 寝起きから三十分のち、凛可はケーキ屋の店先で呼び込みをかけていた。
「いらっしゃいませー! 当店オリジナル、香津(こうづ)の杜ロールはいかかですか~」
 白いフリルの付いた紺色のメイド服に身を包み、元気よく声をあげる。すでに昨日の夜の珍事件など、意識の外だった。
 制服には小さめのエプロンと、頭にのせるプリムも付いている。もともとこの制服が着たくて始めたバイトだった。
 ケーキ屋は、三階建ての大型スーパーの地下階にある。地上との直通路からすぐの場所なので、人通りは多かった。
 凛可の隣では、友人の黒田美好(くろだ・みよし)が、同じメイド服を着て声を張る。
「香津の杜ロールは、限定四十個となっておりまーす。お早めにどうぞ~」
 それから美好は黒縁メガネをキラリと反射させて、凛可に声低く話しかけてきた。
「この前さ~、あそこに……」と、指を差す。
 美好の指し示した先は、他の飲食店が軒を連ねたフードコートだった。店で買った食べ物を食べるために、客が自由に使えるテーブルと椅子がずらっと並んでいる。
 指先を揺らして、美好は続けた。
「あそこの隅にさー、なんかぶにょっとしたのが、こっちにゴツイカメラ向けてるの。よくよく見てみたら、秋田よ! もちろん、同じクラスの秋田!」
 そんなこと、凛可には初耳だったので訊いてみる。
「それって、わたしが休みの日のこと?」
「ううん。アタシと入れ替わりになる日。凛可のメイド姿狙ってたんじゃないの、あのオタク。何の因果か、アタシ、あいつのメルアド知ってたのね。通報してやるってメールしたら消えたわ!」
「それはご苦労さまです」
「盗み撮りとかってサイテー。変態よ、変態」
 美好の最後の言葉が、凛可の意識を揺さぶった。
 変態……。例えば、裸で夜の街を走り回っている、正義の変態もいる……、ような気がする。昨晩のありえない戦いが断片的に思い出された。
 次元接続体は稀な存在であり、もう出会うこともない。
 そうは言われたものの、凛可は再び興味が募っていくのを感じていた。
 三好が心配そうな声で話しかけてきた。
「ちょっと凛可、ボーっとしないで!」
「あ、ごめん。なんでもない……」
 そう答えたとき、建物の外から大きな音が響いた。
 金属が潰れるような、ぐしゃりという重々しい音だった。凛可は直感した。たぶん自動車事故だ。
 美好が目を輝かせながら、凛可の手を取る。
「事故じゃない? 見に行ってみよう」
「それはマズイんじゃないスか、美好さん?」
「パティシエの人がいるから大丈夫だよ。さぁ!」
「もぉ~……」
 一応、不承不承といった様子をみせたが、実のところ凛可もどんな事故か見にいきたいところだった。美好と手をつないで地上に向かう傾斜路を上がっていく。
 出口を出るとすぐ前が道路で、その先に屋外駐車場が広がっている。道路の右と左、両方の先は自動車の出入口になっているが、事故が起きていたのは左の出入り口だった。
 丸っこいデザインの軽自動車と、黒いスポーツカーがぶつかっていた。スポーツカーのほうはボンネットに炎が描かれている。
 軽自動車が駐車場から出ようとしたところへ、スポーツカーが突っ込んできて正面衝突したらしい。悪いのは明らかに、黒いスポーツカーのほうだった。スポーツカーが入ってこようとしたのは、出口専用の車線だったのだから、凛可にも一目瞭然だった。
 熱烈なキスをして潰れあった車のまわりには、すでに幾人かの人だかりが取り巻いていた。二人の人間が激しく口論している。女と男。
 厚手のセーターを着た、髪の長い痩せた女は、軽自動車の持ち主らしい。神経質そうな印象を受ける。
 対するスポーツカーの運転者は、赤く染めた髪を逆立て、上も下も黒革仕立てだった。性格も荒っぽそうだ。
 美好が不安そうに呟いた。
「あの男、まともじゃないよねぇ? 女の人、怖くないのかな……?」
 凛可の見るところでは、女のほうの勢いが強い。もちろん、彼女の怒りは正当なものだろう。
 凛可は言った。
「あの女の人も強そうだけど、どのみち早く警察を呼んだほうがいいよね? もう、わたしが呼ぶ!」
 凛可は、スカートのポケットから電話を取り出そうとした。
 そこへ、乾いた破裂音が響く。凛可は驚いて、反射的に音のしたほうへ目を向けた。
 髪の長い女が腕を伸ばし、赤髪の男が倒れていた。
 女のが、男の頬を張り飛ばしたらしい。見た目の細さに反して力が強かったらしく、男のほうは鼻血をだして、潰れた愛車のボンネットに突っ伏していた。
 男の顔が持ち上がり、自分を張り飛ばした女をにらみつける。
 次の瞬間、凛可は理解しがたいものを目にした。くぐもった音ともに、女の身体が炎に包まれたのだった。
 男女の混じった悲鳴があがり、人だかりが散らばる。
 美好も悲鳴を上げた。
「キャアァァァーッ!」
 凛可は息を呑み、目をみはった。衝撃で身動きできない。
 女が煙をあげながら倒れたところへ、赤髪の男が歩み寄り、さらに追撃の蹴りを叩き込む。だが、その顔が驚きに凍った。男が足をあげて、ひっくり返るように宙を舞う。女に足首をつかまれていた。そのまま、怪力で振り回される。女は遠心力を貯めこむと手を離した。男は数メートルもの距離を投げ飛ばされ、駐車したあった車のフロントガラスを粉々に砕いた。
 変貌した女がのそりと立ちあがる。顔と髪が銀色になっていた。焼け焦げた衣服を自ら剥ぎ取ると、その下の肌も金属の輝きを放っている。全身が金属でできているような、濡れた光沢に輝いていた。
 こんな常識外れな光景は見たことがない……わけでもなかった。凛可にとっては。
 驚きとともに、凛可は悟っていた。
 この二人もまた、『次元接続体』だと。
 周囲の人々も言葉を失い、あたりは奇妙な静けさに包まれた。
 鉄の女は、そんなことも気にせず動く。そばに生えていた街路樹をめきめきと抜きとると、赤髪の男へ投げつけた。街路樹はこずえを揺らし、土の弧を描きながら飛ぶ。
 赤髪の男はすんでのところで横に飛んだ。
「クソッ!」
 男が倒れていた車を、落下した街路樹が押しつぶす。
 今度は赤髪の男が反撃したようだった。いくつもの火の玉が、女の身体を襲う。金属の肌は燃えないが、明らかにその熱を嫌がっているようだった。
 静けさが破られる。
 人々が口々に叫んだ。
「うわぁぁぁーっ!」
「警察を呼べ!」
「怪物よ! 助けて!」
 周囲は喧騒に沸き立つ。
 悲鳴を上げて建物内に駆け込む者、逆にスーパーの敷地から逃げ出す者、階段の陰に身を伏せて様子見する者など、反応は多様だった。
 美好が凛可をひっぱりながら、泣きそうな声をだす。
「凛可、逃げよう。ここ、危ないよぉ……」
「そ、そうね、こんなの手に負えないわ!」
 このような超人のいさかいに、普通の人間が巻き込まれたらひとたまりもない。そう思って身を翻したとき。
 突風が吹いた。昨晩のように。
 凛可の背後から、聞き覚えのある声がする。
「このケンカ、オレが買おう! 紳士、淑女のおふた方!」
 凛可は期待を込めて振り返った。視線の先にはやはり、次元接続体・一、『イチ』が立っていた。
 水球キャップと水中メガネで顔を隠し、ほぼ全裸。黒い手袋とパンツは身につけているものの、今日はマントがなかった。そして裸足。
 イチはちょうど、炎の男と鉄の女の中間の位置に立って、争う二人に目配せしてみせた。
 束の間、その場が凍りつく。
 だが、すぐさま薄氷は砕かれた。
 動いたのはイチだった。
 弾かれたように、後方倒立回転飛びで後ろへ跳ねる。彼がいた場所に赤い炎が燃え上がった。イチはくるくるとバク転し、駐車場の車の上をも渡っていく。次々と炎の塊が出現して、それを追った。
 美好が凛可の腕を引っ張ってくる。
「凛可、早く中に入ろう!」
 凛可は美好を振りほどいて言った。
「美好は行って! わたし、見てるから!」
 凛可は傾斜路から続く階段に身をかがめて、成り行きを見守ることにした。
 稀な存在であるはずなのに、次々と現れる次元接続体。
 もちろん凛可は、昨日までそんな超人たちのことは知らなかった。これには一体、どんな意味があるのか。少なくとも、凛可には見届ける義務があるような気さえしていた。
 そして、また目の前に登場したイチ。
 彼に抱いている感情をなんといえばいいのか、凛可には分からなかった。
 イチと炎の男が争っているうちに、鉄の女が肌をきらめかせながら駐輪場所に行った。一台の中型バイクに手をかける。武器として、バイクを投げつけるつもりかもしれない。
 そこへ、疾風とともにイチが戻ってきた。
勢いそのままに、鉄の女へ体当たりをかます。鉄の女は吹っ飛び、けたたましい金属音を立てながら転がった。
 倒れそうになったバイクを支えて、イチが咎める。
「他人の財産だぞ! 何するつもりだ!」
 それからすぐに、左へ跳ぶ。立っていた場所を炎が焼いた。イチは仲裁するつもりで来たはずなのに、二人を相手に戦うことになっている。
 イチが声を荒げた。
「厄介な飛び道具だな! まずはキサマだ!」
 イチは炎の男に狙いを定めて、突っ込んでいく。弾丸のような速さで右に左に移動しつつ、距離をつめた。
 炎の男はイチの動きを追えない様子で、あてずっぽうに炎をばらまいたが、すぐに肉薄された。
 イチはすれ違いざまに、右の手刀を振るって、炎の男を打撃した。
 炎の男が道路わきの植え込みに倒れ込む。即座に上半身を起こすが、似合わない悲鳴をあげた。
「うわあぁぁぁっ!」
 男の右腕は変な方向に曲がっていた。二の腕の途中で折れている。超人である次元接続体としては、それほど頑丈な身体ではなかったらしい。
 イチはショックを受けた様子で、動きを止めて言った。
「しまった! ごめん……っ」
 動きの止まったところを、抜け目のない炎の一撃が襲った。イチの上半身が炎に包まれる。イチは身体を捻って逃げたが、水球キャップには火がつき、水中メガネは溶けて形が崩れていた。
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