あまのじゃくの子

神宮寺琥珀

文字の大きさ
上 下
55 / 59
第54話

同窓会~再会~

しおりを挟む
 pm7時ーーー

 同窓会の会場は普通のオシャレな店だった。

 【blueーshadow】英語で書いている表札も響は良いが日本語に直すと
 『青い影?』なんじゃそりゃ? ーーーと思う。


 煌びやかなネオンに包まれた外観はまるでナイトクラブのような雰囲気が
 かもしだされていた。

 賑わしい店内はなんら普通の飲食店と変わらない。

 当然のこと、お酒や料理も注文可能だ。

 その他にもゲームセンターのようなちょっとしたレジャーもあるし、大人向けの
 ダーツやビリヤードもある。

 同窓会をする場所には向かないかな…と思っていたが顔馴染みの男女を私は
 数名見かけた。みんな楽しそうに自由にしている。

 勿論、初めて見る知らない人達もいるが、辺りを見渡すと殆どが
 中学の同級生だった。


 お酒なんか注文していて、昔の面影はあるのに笑えるほど、皆 大人ぶっている。
 無理に大人の中間入りをしているようにも思える。

「萌衣、久しぶり」


 背後から女性の声がして振り向くと、そこには20歳の恵衣子が立っていた。
 服装と髪型のせいだろうか、、、恵衣子の幼い表情は消え大人の魅力的な
 女性へと変わっていた。

「え、恵衣子? 久しぶり。めっちゃキレイになってビックリした」

「そう? ありがとう。萌衣は変わらないわね」

「今、何してるの?」

「ああ、ファッション誌の仕事。出版社で働いてる」

「え、すごいじゃん。夢、叶えたんだ」

「うん。まあね…。萌衣は?」

「えっと…社長秘書かな…」

「う…ん…。それにしても、皆、適当に自由に飲んでるね」

「元々、同窓会っていう名前だけだからね。皆、飲みに来ているようなもんだから」

「あ、ねぇ…谷野やの君、来てる?」

「ああ、うん、来てるよ.。あそこにいる人」

 私は恵衣子が指差す方向に視線を向ける。

 谷野やの君の横顔が私の視野に入り込んできた。

 谷野やの君だ、、、、

 その人は中学の卒業アルバムに載っていた谷野やの君だった。

 私はゆっくりと彼に近づいて行く。

 そして、私は彼の背後まで来ると、その肩を2回ほど軽く叩く。

「ん?」

 彼は体を半回転させ、こっちに視線を向ける。


谷野悟志やのさとし君だよね?」

「ああ……。もしかして、津山さん?」

「うん…。少し、話せませんか?」

「え……」

 谷野やの君は戸惑いながらも了承してくれた。

 私達はドリンクバーでグラスに飲み物を注ぎ入れると、開いているテーブルまで
 移動する。
 

 何から話せばいいのだろう……。

 互いに向き合って座ると、谷野やの君は唖然とした顔でこっちを見ていた。 

「話って何?」

「……えっと、、谷野やの君、今、どんな仕事してるの? …かなって、、、」

「携帯電話を組み立ててる」

「え?」

「ああ、今は最新型のスマホかな…」

「ああ、昔さ卒業文集を書いてる時に『将来の夢は』って項目があって、
私、隣の席の谷野やの君の用紙を見て『小学校の先生』って書いた
ことがあったんだ(笑)」

「…知ってる。だから、俺、『小学校の先生 』だってワザと書いたんだ」

「え…」

「ホントは『タイムトラベル機を作る発明家になりたい』なんて書いたら、絶対、
みんなドン引きするなって思ったから…」

「え…」

「津山さんは? 今、何してるの?」

「私は…今、藤城コーポレーションで社長秘書をしている」

「……」

 一瞬、谷野やの君の動きが止まった。

 ーーーような気がした。

 私は谷野やの君に視線を向ける。

谷野やの君?」

 俯き加減で一点を見つめている谷野やの君の瞳孔はオロオロと揺れていた。

「じゃ、津山さんは藤城翔流ふじしろかける君のことを知っているの?」

「え?」


 谷野やのはスマホのアルバムアプリから翔流かけると一緒に
 写っている画像を出してきてテーブルに置く。

「!!」

 その画像を見て私は鳥肌が立った。

 萌衣の脳裏に浮かんだ仮説が一本の線で繋がった。

翔流かけるは高校の時の親友だったんだ。一年前に事故で亡くなった、、、」

 やっぱり……!!

 どういう意図で翔流かける君が私の前に現れてのかはわからないけど、
 母の過去へ一緒に行った男の子は間違いない翔流かける君だった。


「もしかして、谷野やの君は今もタイムトラベルの研究をしてるんじゃ……」

翔流かけるが死んで、増々時間を戻せたらってさ…そんな思いが
強くなっていって…でも上手くいかなくてさ…全部失敗に終わってる…」

 翔流かける君は谷野やの君が作った試作品段階のタイムトラベル機
(つまりスマホ式デジタルタイムトラベル)の機械を使ったんだ、、、


谷野やの君が作ったタイムトラベルは失敗作じゃなかったよ…」

 私はボソッと呟く。

「え、それ、どういうこと? 」

「ああ、えっと…それは…夢をあきらめなければ、いつか現実になるっていうことかな」

「津山さん…」

「もしかしたら10年後、20年後の近未来、谷野やの君は発明家になって
ノーベル賞とかもらってるかもよ…なんてね」

「はっはっ…(笑)。津山さんって変わってるね」


「…そう…かな…」


〈ホントに谷野やの君には感謝してる。谷野やの君が作った
タイムトラベル機がなかったら、私は翔流かける君にも会えなかった〉


 だけど私は翔流かける君と会ったことは言わなかった。


 だって、このことは私と翔流かける君の秘密にしておきたかったから…




 失ってしまった過去は取り戻すことはできない……


 でも未来は…今をどうやって生きるかによって変わってくると思うから……
  

 今、生きている延長線上に未来はきっと繋がっている――――ーーーー。



 私はそう思う、、、、、、、。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈 
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

大人な軍人の許嫁に、抱き上げられています

真風月花
恋愛
大正浪漫の恋物語。婚約者に子ども扱いされてしまうわたしは、大人びた格好で彼との逢引きに出かけました。今日こそは、手を繋ぐのだと固い決意を胸に。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

[完結]本当にバカね

シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。 この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。 貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。 入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。 私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

処理中です...