あまのじゃくの子

神宮寺琥珀

文字の大きさ
上 下
11 / 59
第10話

36年前の過去~体育の授業

しおりを挟む
 私は1年1組も子供達と一緒に運動場にいた。
 
 周りにはブランコや滑り台、鉄棒、うんていなどが設備されている。



 青々とした空に絵に描いたような白雲が浮かび、サンサンと太陽の光が
 照りつくしている。



子供達は体操服に赤白帽子をかぶっている。とりあえず私は用務の先生に頼んで
学校に置いてあるジャージを借りた。私と子供達はゴールとゴールのちょうど
真ん中まで移動する。しゃがんで石砂を触る子供の姿や無邪気にはしゃぐ子供達を
眺め、私もあんな風に砂いじりをして遊んでいたなあと懐かしい光景を思い出す。




「えーと、今日はみんなでサッカーをしよう思います」

「わあああ。サッカー大好き」

 子供達は無邪気に喜んでいる。

〈チームどうしようかな…〉

私は子供達を見渡し考える。



相変わらず、雪子ちゃんは友達に囲まれている春陽はるき君から
視線を逸らして、そっぽを向いていた。


ったく、しょうがないな…。


ここは娘として春陽はるき君と雪子ちゃんを同じチームにしてあげようかな…。

なんて優しい娘なのかしら…

それくらいならいいよね…。

その程度じゃ未来に さほど影響ないよね…。


「それじゃ、Aチームは帽子の色は赤のままにして、Bチームは帽子の色を
白にしてください」

「はあーい」
 元気がいい子供達の返事。

「それじゃ、はじめ」

私は首から下げた笛を手に取り、思いっきり息を吹き込む。

『ピーッ』

笛は大きく運動場に鳴り響きゲームがスタート。

先行はAチームだ。Bチームは守りに徹している。
春陽はるき君と雪子ちゃんはBチーム。
みんな、元気よくボールを追いかけている。
さすが、春陽はるき君だ。あっという間に、相手チームからボールを
足でキャッチする。春陽はるき君はスポーツもできるらしい。

そして、ボールはBチームにわたり、今度はBチームの攻撃。春陽はるき君は
次々と止めに入る子供達交わしぬいていく。

〈ポワ…なんか、春陽はるき君ってちょっとカッコいいかも…。
なんて、私はなに小学生の子相手にトキメいてるんだ〉

いかん、いかん、、、今のは削除だ。

私は気を取り直して子供達について走る。



私はどっちかというと勉強より体を動かす方が好きだった。


なんか、子供に戻ったみたいで楽しい。

でも、子供の頃とは違う…体力が続かない…

「ん?」

私はふと雪子ちゃんに視線を向けて見る。

雪子ちゃんは春陽はるき君を見ていた。


―――その時だった、勢いよくボールが雪子に向かって飛んできた。

「え…あぶ…ない…」
私は一瞬、瞼を閉じ、瞬きをする。

 雪子は立ちすくんだまま動けないでいた。


―――ーーと、そこへスーパーヒーローみたいに春陽はるきがすかさず
    足でボールをキャッチする。


〈ホッ…〉
私はひとまず安心する。

「っぶねーな、どこ向って蹴ってんだよ」

と、春陽はるきは空高くボールを蹴った。

「わりぃ、春陽はるき
味方の男子は手を広げて『ごめん』という素振りで合図を送る。


 ボールは味方の男子生徒が走る足元落ち、そのまま男子生徒はシュートを決める!

「おっしゃああ…」

無邪気にたわむれる子供達の中にポツリと立ち尽くす雪子ちゃんの姿が
私の目に映る。雪子ちゃんは春陽はるき君の姿を目で追っかけていた。



キンコーンカンコーン

授業終了のチャイムが鳴る。

「はい、そこまで」



「試合は3対3の引き分けです」


 その後、子供達は散らばり教室に戻っていった。


「あ…ハル…」

雪子ちゃんが春陽はるき君に声をかけていた。

「ん?」

春陽はるき君の視線が雪子ちゃんに向く。


「さっ…きは…あ…」


春陽はるきくーん、はやくー」
遠くから女の子達が呼ぶ。

「……」

 雪子は口を閉ざした。

「大丈夫だったかよ、、、、」

 ボソっと呟く春陽はるきの横顔は頬を赤く染め、少し照れた表情を
 見せていた。



え、ま、まさか…春陽はるき君も雪子ちゃんのことを……



春陽はるきくーん」

 また、遠くから女の子達が呼ぶ。



「別に…あんなボール…アンタに助けてもらわなくたって取れたっつうの!」


「え…」

ちょっと…雪子ちゃ…


「…ああ、そうかよ」


雪子ちゃんは視線を逸らしそっぽを向いていた。
そして、春陽はるき君もそっぽを向いている。

春陽はるき-」

 今度は遠くで男の子が呼んでいる。


春陽はるき君は彼らに視線を向け「おおー」と、走って行ってしまった。


ポツリと立ち尽くす雪子ちゃんの視線は春陽はるき君の背中を見ていた。


「なんで、あんなこと言ったの?」

私は雪子ちゃんの肩にそっと手を添えて聞いた。

雪子ちゃんは黙ったまんまだった。
その顔はやがて俯き加減になっていった。

「あ、ねぇ、今日さ、帰りにケーキでも食べに行こうか」
「……」
「ケーキ好きでしょ? 私でよければ恋バナ聞くよ」

私は雪子ちゃんを元気づけようと言った。


「なんで?」

「え?」


「……別に…ケーキなんか好きじゃないよ。バッカじゃないの」


「……」

そう言うと、雪子ちゃんは早々と行ってしまったーーー。

「……」



 ヒュルルル……
  

 私の心に冷たい風がひんやりと通り過ぎていった……





 母のあまのじゃくは幼少時代からだったんだね(笑)……。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

処理中です...