9 / 59
第8話
~絵本を読んで~
しおりを挟む
部屋に入ると、家具類は全て綺麗に配置されていた。
今の引っ越し業者はスキルレベルがすごい…。
私は積み上げられた段ボール箱のガムテープを一つ一つはぎ取っていく。
下着や洋服類をタンスにしまい、その他の雑貨や置物はショーケースや
棚の上などに置く。そして、雑誌や本類は本棚へと片付けた。
元々、そんなに多くの荷物はなかった。思ったより早く片付きそうだ。
段ボールから本を出している時、懐かしい絵本が出てきた。
動いていた手を止めて私はその絵本を手にする。
タイトル名は【あまのじゃくの恋】
「うわあ、懐かしいなあ。この絵本、昔、母がよく読んでくれてたよな」
母が描いた最後の作品になった絵本…。
「結局、いつも途中で寝てしまって最後までちゃんと聞いてなかったっけ」
そして、私は絵本の表紙を捲った。
「昔、昔、ユキには初めて好きな男の子ができました。名前はハル。
ハルはポカポカしてあったかい心をもっていました」
「ハンバーグは好き?」「キライ」
「晴の日は好き?」 「キライ」
「ケーキは好き?」 「キライ 」
「うさぎは好き?」 「キラーイ」
「キライ、キライって言っているうちにユキのまわりには友達が一人も
いなくなってしまったのです」
「やがてユキは気づきました。心の中にあまのじゃくがいると…」
「だけどユキはあまのじゃくを追い出すことができなかったのです」
「好きな男の子に好きだって言える勇気がなかったのです」
絵本の中盤までくると、私はなんだか眠くなり、ウトウト瞼が落ちてきて…
「夏休みは好き?」 「…キ…ラ…」
とうとう私は眠ってしまったーーーーーー。
絵本というのは不思議な力がある。
人を眠らせる呪いが仕込まれているのだろうか……。
いや、私だけにかかる催眠術なのかもしれない。
そういえば、小学生の頃、国語の授業は必ず眠たくなっていたっけ…。
中学生の頃も高校生の時も国語の授業は退屈でいつも本を立てて
こっそりと寝ていた。
どうやら私の体は本とは無縁の世界にできているらしい……。
絵本作家の娘なのに本を読むのが苦手なんてシャレにもならないなーーー。
深ーい、深―い眠りに陥った私は多分、このまま朝まで眠るだろうーーー。
昔からそうだった。私は一度寝たら朝まで起きない。
そう、朝まで爆睡している――――ーーー。
今の引っ越し業者はスキルレベルがすごい…。
私は積み上げられた段ボール箱のガムテープを一つ一つはぎ取っていく。
下着や洋服類をタンスにしまい、その他の雑貨や置物はショーケースや
棚の上などに置く。そして、雑誌や本類は本棚へと片付けた。
元々、そんなに多くの荷物はなかった。思ったより早く片付きそうだ。
段ボールから本を出している時、懐かしい絵本が出てきた。
動いていた手を止めて私はその絵本を手にする。
タイトル名は【あまのじゃくの恋】
「うわあ、懐かしいなあ。この絵本、昔、母がよく読んでくれてたよな」
母が描いた最後の作品になった絵本…。
「結局、いつも途中で寝てしまって最後までちゃんと聞いてなかったっけ」
そして、私は絵本の表紙を捲った。
「昔、昔、ユキには初めて好きな男の子ができました。名前はハル。
ハルはポカポカしてあったかい心をもっていました」
「ハンバーグは好き?」「キライ」
「晴の日は好き?」 「キライ」
「ケーキは好き?」 「キライ 」
「うさぎは好き?」 「キラーイ」
「キライ、キライって言っているうちにユキのまわりには友達が一人も
いなくなってしまったのです」
「やがてユキは気づきました。心の中にあまのじゃくがいると…」
「だけどユキはあまのじゃくを追い出すことができなかったのです」
「好きな男の子に好きだって言える勇気がなかったのです」
絵本の中盤までくると、私はなんだか眠くなり、ウトウト瞼が落ちてきて…
「夏休みは好き?」 「…キ…ラ…」
とうとう私は眠ってしまったーーーーーー。
絵本というのは不思議な力がある。
人を眠らせる呪いが仕込まれているのだろうか……。
いや、私だけにかかる催眠術なのかもしれない。
そういえば、小学生の頃、国語の授業は必ず眠たくなっていたっけ…。
中学生の頃も高校生の時も国語の授業は退屈でいつも本を立てて
こっそりと寝ていた。
どうやら私の体は本とは無縁の世界にできているらしい……。
絵本作家の娘なのに本を読むのが苦手なんてシャレにもならないなーーー。
深ーい、深―い眠りに陥った私は多分、このまま朝まで眠るだろうーーー。
昔からそうだった。私は一度寝たら朝まで起きない。
そう、朝まで爆睡している――――ーーー。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

婚約者様。現在社交界で広まっている噂について、大事なお話があります
柚木ゆず
恋愛
婚約者様へ。
昨夜参加したリーベニア侯爵家主催の夜会で、私に関するとある噂が広まりつつあると知りました。
そちらについて、とても大事なお話がありますので――。これから伺いますね?

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います
ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」
公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。
本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか?
義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。
不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます!
この作品は小説家になろうでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる