34 / 102
母さんと母様
33
しおりを挟む
「…ニイナ様が、その、渡り人であると…」
おお、そうだった!流石ルドルフだ。
「ああ、その話しをしてたんだね。で、どこまで話をしたんだったかな?」
「きらきらがなくなるって!後、俺がトクイな体質とか!あ、これは秘密だったのかな?まあ、いいか。ユリウス、俺はトクイな体質らしいぞ!」
「特異、ですか?それは初めてお聞きしましたが…。」
ごほんと、ルドルフが一つ咳払いをした。
やっぱり、秘密の話しだったんだろう。
「ノア、そのことについては、いずれ陛下が話してくれる。その時まで待ちなさい。もうすぐだと言われているだろう。それよりも、わたしがここに来た時の話しをしよう。」
話しが戻ると、ルドルフはまた真剣な表情に戻り、母さんに疑問を投げかけた。
「渡り人が現れた場合、必ず王宮に報告せねばなりません。滅多にないことなので、そういったことが起これば、世間は騒がしくなります。現に今、あの者が現れたため、王宮は混乱しております。ニイナ様はいつ、どのようにして、ここへ…。」
ユリウスはいつもの真顔で微動だにせず二人の話しを聞いている。俺がしがみついたままでいることは諦めたようだ。
「わたしはね、湯浴み中の陛下の上に落ちて来たんだ。」
そのときのことを思い出したのか、母さんはくつくつと笑い出した。
ルドルフは驚きの声をあげたけど、ユリウスはやっぱり一度瞬きをしただけだった。
「渡り人だとばれると自由に動き回ることが難しそうだし、こうしていると誰もわたしのことなんか気にも止めないから、楽でいいんだ。」
ほら、と言って、さっき外したかつらを被って、眼鏡をかけると、いつもの母さんが現れた。
「あの時の…」
小さくユリウスが呟く。あの時?
「剣術大会の後で疲れていただろうに、あの日はノアをありがとう。」
ユリウスが看病をしてくれたあの晩、朝に目覚めると母さんがいた。その時に会っていたのか。
「いえ、まさか妃様とは知らず…」
「いいんだよ。その方が気楽なんだ。皆んな宮廷医師の付き人ぐらいに思ってるだろうし。ルドルフもそうだろう?」
「まさか、あなた様がノア様の母君で第十妃だとは思いもよりませんでした。」
ルドルフだけでなく俺だって、この姿が本物だって騙されていた。すごいな、母さんは。渡り人か。聞きたい話しが山ほど溢れてくるじゃないか。
黙り込んでしまったルドルフとユリウスを気にする風もなく、母さんはぬるくなった紅茶をまたがぶかぶと飲み干した。
「ああもうこんな時間か。そろそろナターシャ様の元へ行ってみるよ。ノア、聞きたいことがもっと沢山あるだろうけど、また今度ね。」
母さんは結局いつもの姿に戻って、部屋を出ようと扉に向かった。
ユリウスがすくっと立ち上がったので、思わず腕をほどいてしまう。
あの重い扉を開いてあげるようだ。
「ありがとう、ユリウス。ノアを宜しく頼む。」
「お任せ下さい。」
扉を開いて見送りをしようとするユリウスの前で、母さんはふと足をとめた。なぜか、じっとユリウスのことを眺めている。
「…ニイナ様、何か?」
「いや、君は他国の出身なのかい?」
「いえ、わたしは生まれも育ちもこの国です。」
「…君からは、なぜか不思議な匂いがする。」
「…匂い、ですか?」
「ああ、不思議な…。また今度ゆっくり話そう。ノア、ルドルフも、またな。」
ルドルフも立ち上がって母さんを見送っていた。
俺がひらひらと母さんに手を振る横で、ルドルフが眉間に皺を寄せて二人の会話を聞いていたなんて、全く気がついていなかった。
おお、そうだった!流石ルドルフだ。
「ああ、その話しをしてたんだね。で、どこまで話をしたんだったかな?」
「きらきらがなくなるって!後、俺がトクイな体質とか!あ、これは秘密だったのかな?まあ、いいか。ユリウス、俺はトクイな体質らしいぞ!」
「特異、ですか?それは初めてお聞きしましたが…。」
ごほんと、ルドルフが一つ咳払いをした。
やっぱり、秘密の話しだったんだろう。
「ノア、そのことについては、いずれ陛下が話してくれる。その時まで待ちなさい。もうすぐだと言われているだろう。それよりも、わたしがここに来た時の話しをしよう。」
話しが戻ると、ルドルフはまた真剣な表情に戻り、母さんに疑問を投げかけた。
「渡り人が現れた場合、必ず王宮に報告せねばなりません。滅多にないことなので、そういったことが起これば、世間は騒がしくなります。現に今、あの者が現れたため、王宮は混乱しております。ニイナ様はいつ、どのようにして、ここへ…。」
ユリウスはいつもの真顔で微動だにせず二人の話しを聞いている。俺がしがみついたままでいることは諦めたようだ。
「わたしはね、湯浴み中の陛下の上に落ちて来たんだ。」
そのときのことを思い出したのか、母さんはくつくつと笑い出した。
ルドルフは驚きの声をあげたけど、ユリウスはやっぱり一度瞬きをしただけだった。
「渡り人だとばれると自由に動き回ることが難しそうだし、こうしていると誰もわたしのことなんか気にも止めないから、楽でいいんだ。」
ほら、と言って、さっき外したかつらを被って、眼鏡をかけると、いつもの母さんが現れた。
「あの時の…」
小さくユリウスが呟く。あの時?
「剣術大会の後で疲れていただろうに、あの日はノアをありがとう。」
ユリウスが看病をしてくれたあの晩、朝に目覚めると母さんがいた。その時に会っていたのか。
「いえ、まさか妃様とは知らず…」
「いいんだよ。その方が気楽なんだ。皆んな宮廷医師の付き人ぐらいに思ってるだろうし。ルドルフもそうだろう?」
「まさか、あなた様がノア様の母君で第十妃だとは思いもよりませんでした。」
ルドルフだけでなく俺だって、この姿が本物だって騙されていた。すごいな、母さんは。渡り人か。聞きたい話しが山ほど溢れてくるじゃないか。
黙り込んでしまったルドルフとユリウスを気にする風もなく、母さんはぬるくなった紅茶をまたがぶかぶと飲み干した。
「ああもうこんな時間か。そろそろナターシャ様の元へ行ってみるよ。ノア、聞きたいことがもっと沢山あるだろうけど、また今度ね。」
母さんは結局いつもの姿に戻って、部屋を出ようと扉に向かった。
ユリウスがすくっと立ち上がったので、思わず腕をほどいてしまう。
あの重い扉を開いてあげるようだ。
「ありがとう、ユリウス。ノアを宜しく頼む。」
「お任せ下さい。」
扉を開いて見送りをしようとするユリウスの前で、母さんはふと足をとめた。なぜか、じっとユリウスのことを眺めている。
「…ニイナ様、何か?」
「いや、君は他国の出身なのかい?」
「いえ、わたしは生まれも育ちもこの国です。」
「…君からは、なぜか不思議な匂いがする。」
「…匂い、ですか?」
「ああ、不思議な…。また今度ゆっくり話そう。ノア、ルドルフも、またな。」
ルドルフも立ち上がって母さんを見送っていた。
俺がひらひらと母さんに手を振る横で、ルドルフが眉間に皺を寄せて二人の会話を聞いていたなんて、全く気がついていなかった。
322
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!
迷路を跳ぶ狐
BL
*あらすじを改稿し、タグを編集する予定です m(_ _)m後からの改稿、追加で申し訳ございません (>_<)
社交界での立ち回りが苦手で、よく夜会でも失敗ばかりの僕は、いつも一族から罵倒され、軽んじられて生きてきた。このまま誰からも愛されたりしないと思っていたのに、突然、ろくに顔も合わせてくれない公爵家の男と、婚約することになってしまう。
だけど、婚約なんて名ばかりで、会話を交わすことはなく、同じ王城にいるはずなのに、顔も合わせない。
それでも、公爵家の役に立ちたくて、頑張ったつもりだった。夜遅くまで魔法のことを学び、必要な魔法も身につけ、僕は、正式に婚約が発表される日を、楽しみにしていた。
けれど、ある日僕は、公爵家と王家を害そうとしているのではないかと疑われてしまう。
一体なんの話だよ!!
否定しても誰も聞いてくれない。それが原因で、婚約するという話もなくなり、僕は幽閉されることが決まる。
ほとんど話したことすらない、僕の婚約者になるはずだった宰相様は、これまでどおり、ろくに言葉も交わさないまま、「婚約は考え直すことになった」とだけ、僕に告げて去って行った。
寂しいと言えば寂しかった。これまで、彼に相応しくなりたくて、頑張ってきたつもりだったから。だけど、仕方ないんだ……
全てを諦めて、王都から遠い、幽閉の砦に連れてこられた僕は、そこで新たな生活を始める。
食事を用意したり、荒れ果てた砦を修復したりして、結構楽しく暮らせていると思っていたのだが……
*残酷な描写があり、たまに攻めが受け以外に非道なことをしたりしますが、受けには優しいです。
美容整形するために夜間魔法学校に通っているだなんて言えない
陽花紫
BL
整形男子レイは、異世界転移をした際に整形前の顔に戻ってしまう。
魔法が当たり前の世界で美容医療などあるはずもなく、レイは魔法で整形をするために夜間魔法学校に通いはじめる。幸いにも、魔力はほんの少しだけあった。レイは不純な動機を隠しながら、クラスメイト達と日々を過ごしていく。
小説家になろうにも掲載中です。
聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。
三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。
そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。
BL。ラブコメ異世界ファンタジー。
噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。
春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。
新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。
___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。
ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。
しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。
常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___
「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」
ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。
寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。
髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?
君さえ笑ってくれれば最高
大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。
(クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け)
異世界BLです。
好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない
豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。
とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ!
神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。
そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。
□チャラ王子攻め
□天然おとぼけ受け
□ほのぼのスクールBL
タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。
◆…葛西視点
◇…てっちゃん視点
pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。
所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる