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秘匿された王子
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午後ももちろん下は履かない。
迎え入れた俺の姿を見て、ルドルフが思いっきり顔を顰めたが、素知らぬ振りをしてやった。
連れられてきた騎士は、人の良さそうな真面目そうな男だ。鼻血はでていないようだが、どうなんだ?
これは、まさかの合格なのか?
ルドルフの方を見遣るが、なぜか首を振っている。
「無理です!申し訳ございません!」
びくっ。急に叫ぶから驚いてしまうじゃないか。
無理?は?なんで?
「はあ、そうか、お前でも無理か…。」
ルドルフが肩を落としてがっかりしている。
「なぜルドルフ様は大丈夫なのですか?妻を裏切ることなどできません。」
なんで俺の護衛になるだけで、奥さんを裏切ることになるんだ?
「ノア様、何度も申し上げていましたよね。高貴な身分の女性は簡単に生脚を見せるようなことはしません。そのように曝け出すなど、誘っていると思われても仕方がありません。」
「だから、俺は男だろ。誘うってなにを?」
「いえ、ノア様は知らなくて良いことです。余計なことを言ってしまいました。まだ13歳だと言うのに、先が思いやられます。」
何度も申し訳ありませんと頭を下げ続ける騎士を、ルドルフが労うように連れ帰ってしまった。
気持ち悪いぐらい白く、ひょろひょろと伸びた生脚をぶらぶらとさせる。
今回も不合格か。
もうこのままルドルフでいいじゃないか。
何人目だっけ?
一人目が連れられてきたとき、この生脚を見て卒倒した。
たまたまだろうと思っていたが、二人目は震えだすし、三人目は真っ赤になってもぞもぞし始めた。鼻血を出したのは五人目だっけ?
この生脚、なんかすごい力を宿しているんじゃ?
ちょっと、試してみる?
ルドルフもいないし…。
どうしよう、破壊しちゃうかも…。
あ、破壊できたら、ここから出られるじゃん!
とりあえず、まずはこの椅子で。
一人掛け用で、細めの四脚が支える椅子を選んで用意する。
これだけ細いんだから、いけるんじゃ?
深呼吸をして、勢いよく!
一、二の、えいっ!!!
「ぎゃあああああああああ!!!」
思いっきり蹴ったはずなのに、椅子は破壊されるどころか、倒れもしない。
破壊されたのは、俺の右脚だ。
「うっ、痛い、いたあい、ううーーー、くそう」
こんな痛み、生まれて初めてだ。
ごろごろと床上を転がり回るが、痛みは引くどころか増すばかりで、自然と涙が溢れてくる。
「痛い、痛いよう。ルドルフ、助けてぇ。うっ、うっ…」
ルドルフは出て行ったばかり。
しばらく戻ってこない?
俺、死んじゃう?
外に、出たかった。
この部屋から出て、自由に……
「ノア様!どうされました!!!」
ばあんと扉が開いて、ルドルフと…誰だ?
さっきの騎士とは違う、もっと若い騎士が入ってきた。
あの重い扉を、あんな風にばあんと出来るなんて、すごいな…
って、今はそんなことより、痛い!
「助けて、ルドルフ!痛い、痛いよう!」
涙が溢れて止まらない。
「ユリウス!ノア様をお守りしろ!侵入者か?まさか!」
ルドルフが部屋中を隅から隅まで隈なく見回している。
いや、違うんだ。侵入者なんて、いないんだけど…なんか言いにくい…。
「大丈夫ですか?いったい何が?」
初めて見る騎士が、床上で転がり回る俺に声を掛けてくる。
「脚、右脚、痛い…いたいよう。」
「右脚?失礼します。触れることを、お許し下さい。」
痛くて押さえつけていた俺の手を静かに剥ぎ取り、そいつが右脚に触れてくる。
うお、他人に脚を触らせるなんて初めてだぞ。
ルドルフだって、触ったことないのに…。
「これは、まさか、ご自分で?」
横であさっての方向を向いている一脚の椅子に気がついているようだ。
あ、ばれてる?
「んなことより、痛い、痛い!死ぬ!」
「大丈夫です。死にはしません。」
「こんなに痛いのにぃ!ほんとに、死なない?」
「こんなことで、死にはしません。」
死なないって!良かった!まだやり残したこと沢山あるからな。
「ルドルフ様、侵入者はいないようです!」
「ノア様は!」
床上に積み重なった本を薙ぎ倒しながらルドルフが駆け寄ってくる。
「脚をぶつけられたのでしょう。腫れてきました。」
「骨に異常は?」
「骨は、大丈夫でしょう。」
確かめるように、さわさわと脚に触れられるが、痛いし、くすぐったい。
「はああ、どういうことですか、ノア様?この短時間で一体何が?」
ええと、俺の生脚の力を試そうと…なんて言えない。
「とりあえず、冷やす物をお持ちします。」
若い騎士、冷静だな。
俺の生脚威力もこいつには、効いていないようだ。
「ユリウス、先にノア様を寝台まで運んでくれるか?」
「かしこまりました。失礼します、ノア様。」
さっと抱きかかえられ、寝台まで運ばれる。
あ、パンツ、見えてる。
若い騎士は捲り上がった上衣をさっと正し、丸見えのパンツを隠してくれた。
「大丈夫ですか?冷やす物をお持ちします。」
俺の生脚にもパンツにも無反応だ。
蹴ったことで、逆に力がなくなってしまったんじゃないだろうか?
「ノア様、それで何をどうしたら、こうなるのですか?」
見下ろしてくるルドルフの顔は、魔物のように恐ろしい。魔物なんて、見たことないないけどさ。
「なんていうか、その…」
おっかない。ルドルフ怖い。
「パンツまで、丸出しになさって…。心配しました。ノア様に何かあったら…」
額に手を当てて項垂れるルドルフに嘘はつけない。
「ごめん。実は、その…」
全て話したら、しこたま怒られた。
怒られたけど、死なないみたいだから良かった。
「ところで、あの若い騎士誰?」
ルドルフがまだ小言を言い続けてくるので、話題を変えてみる。
「ノア様の新しい護衛です。」
「え?合格?」
「もうユリウス以外にはおりません。最後の砦でしたから。」
ええええええええ!!!
いつの間に合格したんだ!?
迎え入れた俺の姿を見て、ルドルフが思いっきり顔を顰めたが、素知らぬ振りをしてやった。
連れられてきた騎士は、人の良さそうな真面目そうな男だ。鼻血はでていないようだが、どうなんだ?
これは、まさかの合格なのか?
ルドルフの方を見遣るが、なぜか首を振っている。
「無理です!申し訳ございません!」
びくっ。急に叫ぶから驚いてしまうじゃないか。
無理?は?なんで?
「はあ、そうか、お前でも無理か…。」
ルドルフが肩を落としてがっかりしている。
「なぜルドルフ様は大丈夫なのですか?妻を裏切ることなどできません。」
なんで俺の護衛になるだけで、奥さんを裏切ることになるんだ?
「ノア様、何度も申し上げていましたよね。高貴な身分の女性は簡単に生脚を見せるようなことはしません。そのように曝け出すなど、誘っていると思われても仕方がありません。」
「だから、俺は男だろ。誘うってなにを?」
「いえ、ノア様は知らなくて良いことです。余計なことを言ってしまいました。まだ13歳だと言うのに、先が思いやられます。」
何度も申し訳ありませんと頭を下げ続ける騎士を、ルドルフが労うように連れ帰ってしまった。
気持ち悪いぐらい白く、ひょろひょろと伸びた生脚をぶらぶらとさせる。
今回も不合格か。
もうこのままルドルフでいいじゃないか。
何人目だっけ?
一人目が連れられてきたとき、この生脚を見て卒倒した。
たまたまだろうと思っていたが、二人目は震えだすし、三人目は真っ赤になってもぞもぞし始めた。鼻血を出したのは五人目だっけ?
この生脚、なんかすごい力を宿しているんじゃ?
ちょっと、試してみる?
ルドルフもいないし…。
どうしよう、破壊しちゃうかも…。
あ、破壊できたら、ここから出られるじゃん!
とりあえず、まずはこの椅子で。
一人掛け用で、細めの四脚が支える椅子を選んで用意する。
これだけ細いんだから、いけるんじゃ?
深呼吸をして、勢いよく!
一、二の、えいっ!!!
「ぎゃあああああああああ!!!」
思いっきり蹴ったはずなのに、椅子は破壊されるどころか、倒れもしない。
破壊されたのは、俺の右脚だ。
「うっ、痛い、いたあい、ううーーー、くそう」
こんな痛み、生まれて初めてだ。
ごろごろと床上を転がり回るが、痛みは引くどころか増すばかりで、自然と涙が溢れてくる。
「痛い、痛いよう。ルドルフ、助けてぇ。うっ、うっ…」
ルドルフは出て行ったばかり。
しばらく戻ってこない?
俺、死んじゃう?
外に、出たかった。
この部屋から出て、自由に……
「ノア様!どうされました!!!」
ばあんと扉が開いて、ルドルフと…誰だ?
さっきの騎士とは違う、もっと若い騎士が入ってきた。
あの重い扉を、あんな風にばあんと出来るなんて、すごいな…
って、今はそんなことより、痛い!
「助けて、ルドルフ!痛い、痛いよう!」
涙が溢れて止まらない。
「ユリウス!ノア様をお守りしろ!侵入者か?まさか!」
ルドルフが部屋中を隅から隅まで隈なく見回している。
いや、違うんだ。侵入者なんて、いないんだけど…なんか言いにくい…。
「大丈夫ですか?いったい何が?」
初めて見る騎士が、床上で転がり回る俺に声を掛けてくる。
「脚、右脚、痛い…いたいよう。」
「右脚?失礼します。触れることを、お許し下さい。」
痛くて押さえつけていた俺の手を静かに剥ぎ取り、そいつが右脚に触れてくる。
うお、他人に脚を触らせるなんて初めてだぞ。
ルドルフだって、触ったことないのに…。
「これは、まさか、ご自分で?」
横であさっての方向を向いている一脚の椅子に気がついているようだ。
あ、ばれてる?
「んなことより、痛い、痛い!死ぬ!」
「大丈夫です。死にはしません。」
「こんなに痛いのにぃ!ほんとに、死なない?」
「こんなことで、死にはしません。」
死なないって!良かった!まだやり残したこと沢山あるからな。
「ルドルフ様、侵入者はいないようです!」
「ノア様は!」
床上に積み重なった本を薙ぎ倒しながらルドルフが駆け寄ってくる。
「脚をぶつけられたのでしょう。腫れてきました。」
「骨に異常は?」
「骨は、大丈夫でしょう。」
確かめるように、さわさわと脚に触れられるが、痛いし、くすぐったい。
「はああ、どういうことですか、ノア様?この短時間で一体何が?」
ええと、俺の生脚の力を試そうと…なんて言えない。
「とりあえず、冷やす物をお持ちします。」
若い騎士、冷静だな。
俺の生脚威力もこいつには、効いていないようだ。
「ユリウス、先にノア様を寝台まで運んでくれるか?」
「かしこまりました。失礼します、ノア様。」
さっと抱きかかえられ、寝台まで運ばれる。
あ、パンツ、見えてる。
若い騎士は捲り上がった上衣をさっと正し、丸見えのパンツを隠してくれた。
「大丈夫ですか?冷やす物をお持ちします。」
俺の生脚にもパンツにも無反応だ。
蹴ったことで、逆に力がなくなってしまったんじゃないだろうか?
「ノア様、それで何をどうしたら、こうなるのですか?」
見下ろしてくるルドルフの顔は、魔物のように恐ろしい。魔物なんて、見たことないないけどさ。
「なんていうか、その…」
おっかない。ルドルフ怖い。
「パンツまで、丸出しになさって…。心配しました。ノア様に何かあったら…」
額に手を当てて項垂れるルドルフに嘘はつけない。
「ごめん。実は、その…」
全て話したら、しこたま怒られた。
怒られたけど、死なないみたいだから良かった。
「ところで、あの若い騎士誰?」
ルドルフがまだ小言を言い続けてくるので、話題を変えてみる。
「ノア様の新しい護衛です。」
「え?合格?」
「もうユリウス以外にはおりません。最後の砦でしたから。」
ええええええええ!!!
いつの間に合格したんだ!?
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