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そこは、長い回廊を辿った後宮の奥深く。
艶やかに磨かれた飴色の一際重厚な両開きの扉が目を引く。
その扉を開き中に入ることができるのは、ほんの一握りの選ばれた人物だけ。
正妃と九人の側妃が住まう後宮の中、どの部屋よりも厳重に囲まれたそこに住まうのは、誰よりも王からの寵愛を受ける傾国の美姫…………
…ではない。
寝台の上、うつ伏せで本を読んでいるのは華奢な少年一人。
ひょろりと艶めかしい生脚をぶらぶらとさせ、ページを捲る度に蜜を絡めた木の実を口に入れる。
ハードカバーの凛としたものではなく、質のあまりよくない綴り本に少年は夢中のようだ。
触れたら溶けて消えてしまいそうな真っ白な肌。
黒く艶やかな髪がさらさらと頬横で揺れている。
文字を追う瞳は淡く薄い紫色で、どんな宝石よりも美しい、はずなのに…
「あああああ、学園、楽しそう。俺も行ってみたかった!」
「卒業式って、かならず誰かが婚約破棄しなきゃなんないのか?うわあ、やば、見てみたいな…」
「聖女?瘴気?癒しの力?なんだよ、それ、めちゃくちゃ楽しそう!」
その愛らしい小さな口から吐き出される言葉は小鳥の囀りのように愛らしい…とは言えない。
少年の知る世界は、後宮のこの部屋と部屋からも望める中庭だけ。
部屋中あちこちに積み重ねられた本だけが情報を得る術で、どうやらその情報にはだいぶ偏りがあるようだが、本人は気がついていない。
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その扉を開き中に入ることができるのは、ほんの一握りの選ばれた人物だけ。
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…ではない。
寝台の上、うつ伏せで本を読んでいるのは華奢な少年一人。
ひょろりと艶めかしい生脚をぶらぶらとさせ、ページを捲る度に蜜を絡めた木の実を口に入れる。
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その愛らしい小さな口から吐き出される言葉は小鳥の囀りのように愛らしい…とは言えない。
少年の知る世界は、後宮のこの部屋と部屋からも望める中庭だけ。
部屋中あちこちに積み重ねられた本だけが情報を得る術で、どうやらその情報にはだいぶ偏りがあるようだが、本人は気がついていない。
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