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第7章
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何もすることがなく、リオは部屋で1人、暇を持て余していた。
体調は回復したものの、ラグアルからはまだ休んでいるようにと言われている。
ごろごろと寝転びながら、早くその日が来ないかと、考えるのはそのことばかりだ。
そろそろお茶の時間だ。
お茶の淹れ方や、その種類など、リオは少しずつ学んでいた。
………ラグアル様に、お出ししてみようか。
驚くかもしれない。喜んでくれるかな。
たくさんの茶葉や、カップが並んだその部屋の中では、使用人2人が準備をしている真っ最中だった。
少し開いた扉の向こうに、その様子が窺える。
「……私ほんとはね、ユアン様にお仕えするの楽しみにしてたの。」
「ああ、私もよ。ほんと、見ているだけで絵になる2人だったわよねえ。」
リオの胸がドクンと高鳴る。
「ラグアル様がお気に入りのこの茶葉も、ユアン様がご用意したものでしょう。」
「そうそう。それに、ラグアル様はユアン様が淹れたお茶じゃないと、美味しいって言ってくれなかったじゃない。」
「ユアン様、ほんとうにお上手だったものねえ。あの手つきを見ているだけで、うっとりしちゃうもの。」
「あっ!」
リオはびくりと震えると、急いでその場を立ち去った。
「なに!どうしたの?急にびっくりするじゃない。」
「ユアン様がご用意してた茶葉、もう少しでなくなりそう。予備もなくなっちゃったわ。どうしよう。」
「奥さまに相談しましょう。」
「そうね。でもさ、私、リオ様のことも応援してるの。」
「あんなに、心配してたのに?」
「ラグアル様に運命の番が現れたんだから、最初は喜んだわよ。でも、あの頃のリオ様を見てたら、ほんとにやっていけるのかなって。」
「確かに、そうよね。」
「でも、あんなに可愛らしくなって、毎日すごく一生懸命な姿を見てると、応援したくなるじゃない。」
「私もそう思うわ。2人にはお幸せになって欲しい。」
「運命の番だもの。きっとお幸せになるわ。」
「………ユアン様も、幸せになって欲しいわね。」
「ええ。今ごろ、どうしていらっしゃるのかしら………。」
ドクンドクンと高なる胸を押さえながら、リオは気づくとラグアルが仕事をする部屋の前まで来ていた。
胸が苦しい。
ラグアルに会えば、きっと落ち着く。
大丈夫。大丈夫。
だって、俺は、ラグアル様の運命の番だ。
部屋の中からは、ラグアルの声が微かに聞こえてくる。
「‥‥‥‥‥‥‥ああ、それは、ユアンに…」
ドクン。
リオは部屋へと引き返し、寝台の上に蹲った。
苦しい。苦しい。苦しい。
……きっと、さっきのは聞き間違いだ。
ラグアル様は、俺を選んでくれた。
だって、運命の番だ。
じゃあ、なんで運命の番じゃないのに、あの方はラグアル様に求められていたんだろう。
早く、シルビオに会いたい。
シルビオと2人、毎日花に囲まれ、笑い合って過ごしていたあの頃が、きっと1番楽しかった。
今まで、こんなに苦しい思いをしたことはない。
早くその日が来て欲しい。早く。早く。
リオの体調が落ち着きをみせ、ラグアルも安堵して仕事に取り組んでいた。
それほどあの男に会いたいのか、あの花屋に行きたいのか、ラグアルから言い出したことではあるが、リオの見たこともないような喜ぶ姿に、ラグアルは少しだけ苛ついていた。
ああ、そうだ、こんな時はいつも、ユアンがそっと茶を淹れてくれた。
……ラグアル様、こちらをどうぞ。少しお休みくださいませ。
にっこりと微笑んで渡されるそれは、いつもラグアルの心を落ち着かせてくれた。
茶そのものより、ユアンの姿に癒されていた。
「ラグアル様、こちらは、いかがいたしましょう。」
渡された書類をみて、ラグアルは無意識に言葉を紡いだ。
「……ああ、それは、ユアンにやってもらおう。ユアンは?」
書類を手渡した従者が固まる。
ラグアルは自分の言ったことに驚きを隠せない。
「………ああ、いい、それは、わたしがしよう。」
従者はすぐに席を外した。
「…わたしは、一体、何を言っているんだ…」
ラグアルはそのまま暫くの間、呆然とその場から動くことができなかった。
体調は回復したものの、ラグアルからはまだ休んでいるようにと言われている。
ごろごろと寝転びながら、早くその日が来ないかと、考えるのはそのことばかりだ。
そろそろお茶の時間だ。
お茶の淹れ方や、その種類など、リオは少しずつ学んでいた。
………ラグアル様に、お出ししてみようか。
驚くかもしれない。喜んでくれるかな。
たくさんの茶葉や、カップが並んだその部屋の中では、使用人2人が準備をしている真っ最中だった。
少し開いた扉の向こうに、その様子が窺える。
「……私ほんとはね、ユアン様にお仕えするの楽しみにしてたの。」
「ああ、私もよ。ほんと、見ているだけで絵になる2人だったわよねえ。」
リオの胸がドクンと高鳴る。
「ラグアル様がお気に入りのこの茶葉も、ユアン様がご用意したものでしょう。」
「そうそう。それに、ラグアル様はユアン様が淹れたお茶じゃないと、美味しいって言ってくれなかったじゃない。」
「ユアン様、ほんとうにお上手だったものねえ。あの手つきを見ているだけで、うっとりしちゃうもの。」
「あっ!」
リオはびくりと震えると、急いでその場を立ち去った。
「なに!どうしたの?急にびっくりするじゃない。」
「ユアン様がご用意してた茶葉、もう少しでなくなりそう。予備もなくなっちゃったわ。どうしよう。」
「奥さまに相談しましょう。」
「そうね。でもさ、私、リオ様のことも応援してるの。」
「あんなに、心配してたのに?」
「ラグアル様に運命の番が現れたんだから、最初は喜んだわよ。でも、あの頃のリオ様を見てたら、ほんとにやっていけるのかなって。」
「確かに、そうよね。」
「でも、あんなに可愛らしくなって、毎日すごく一生懸命な姿を見てると、応援したくなるじゃない。」
「私もそう思うわ。2人にはお幸せになって欲しい。」
「運命の番だもの。きっとお幸せになるわ。」
「………ユアン様も、幸せになって欲しいわね。」
「ええ。今ごろ、どうしていらっしゃるのかしら………。」
ドクンドクンと高なる胸を押さえながら、リオは気づくとラグアルが仕事をする部屋の前まで来ていた。
胸が苦しい。
ラグアルに会えば、きっと落ち着く。
大丈夫。大丈夫。
だって、俺は、ラグアル様の運命の番だ。
部屋の中からは、ラグアルの声が微かに聞こえてくる。
「‥‥‥‥‥‥‥ああ、それは、ユアンに…」
ドクン。
リオは部屋へと引き返し、寝台の上に蹲った。
苦しい。苦しい。苦しい。
……きっと、さっきのは聞き間違いだ。
ラグアル様は、俺を選んでくれた。
だって、運命の番だ。
じゃあ、なんで運命の番じゃないのに、あの方はラグアル様に求められていたんだろう。
早く、シルビオに会いたい。
シルビオと2人、毎日花に囲まれ、笑い合って過ごしていたあの頃が、きっと1番楽しかった。
今まで、こんなに苦しい思いをしたことはない。
早くその日が来て欲しい。早く。早く。
リオの体調が落ち着きをみせ、ラグアルも安堵して仕事に取り組んでいた。
それほどあの男に会いたいのか、あの花屋に行きたいのか、ラグアルから言い出したことではあるが、リオの見たこともないような喜ぶ姿に、ラグアルは少しだけ苛ついていた。
ああ、そうだ、こんな時はいつも、ユアンがそっと茶を淹れてくれた。
……ラグアル様、こちらをどうぞ。少しお休みくださいませ。
にっこりと微笑んで渡されるそれは、いつもラグアルの心を落ち着かせてくれた。
茶そのものより、ユアンの姿に癒されていた。
「ラグアル様、こちらは、いかがいたしましょう。」
渡された書類をみて、ラグアルは無意識に言葉を紡いだ。
「……ああ、それは、ユアンにやってもらおう。ユアンは?」
書類を手渡した従者が固まる。
ラグアルは自分の言ったことに驚きを隠せない。
「………ああ、いい、それは、わたしがしよう。」
従者はすぐに席を外した。
「…わたしは、一体、何を言っているんだ…」
ラグアルはそのまま暫くの間、呆然とその場から動くことができなかった。
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