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Ⅷ 死期と式
断ち切る為に
しおりを挟む「その結婚、待った‼」
参列者が一斉に振り返り、ざわめきと悲鳴が沸き起こる。
混乱に陥る堂内の壇上から朗々とした声が響いた。
「静まれ、皆の者。
あれなるは我が息子ジークロハネ。
追放されし身であれど、兄の婚礼を祝いに駆け付けたのであろう」
「……ゲボプリコさん?
まさか第二王子だったなんて」
ヴァルサーン七世に促されるように、Gはヴァージンロードをゆっくりと前に進んだ。
大聖堂の長椅子に腰掛ける大勢の貴族達がその挙動に注目し、ユリカは口元に手を当ててクレードとGを不安げに見ている。
Gの足が祭壇の前で止まると、二人の王子は壇を挟んで睨み合った。
「……やはり来たか。
また会えて嬉しいよ、弟くん」
真っ白なタキシードで正装し、花嫁の横に立つクレードが冷笑を浮かべる。
Gは王に向かって畏まり、頭を垂れて床に跪いた。
「父上、長らくご無沙汰致しておりました。
此度はジークロハネ=ヴァルサーンとしてではなく、一匹のゴキブリとして式に参上した次第です」
生気に乏しい両の眼で、王は自らが追放した息子を見詰めた。
頬はすっかり痩け落ち、隆々としていた肉体も今や骨と皮ばかりが目立っている。
頭のものは雪を被ったように白く、眉間に刻まれていた皺は更に深みを増していた。
「皆が嫌う害虫として、か。
つまりは式の邪魔をしに来た、其方はそう申しておるのか」
「はい。
Gはこの結婚を認める訳には参りません」
「……余は失望したぞ、ジークロハネ。
三年前に突如、異形へと姿を変え世の命を狙ったと思えば、今度は兄の結婚を邪魔立てするとは。
やはり司祭の託宣通り、双子の片割れは悪魔に魅入られた存在なのか」
「それは違います、父上!
Gはあの時、貴方の命を狙っていたクリードを倒そうと……」
「見苦しいぞ、弟くん。
僕が止めなければ魔神は父上のお命を確実に奪っていた。
あの場に居合わせた大臣達もそれを目撃している。
想像力が豊かな事は誉めてやるが、よくもそんな法螺を思い付いたものだ」
「……くっ」
当時のクレードが一部の大臣達と共謀し、国王暗殺を企てていたのは紛れもない事実だった。
それに気付いたGは父王に何度も忠告したが、とうとう信じては貰えなかった。
父は才能で劣る双子の弟より、正統後継者であり優秀な兄を信じたのである。
「これ以上、王家の恥を晒すのは心苦しい。
邪魔者を排除する為にこれより一旦、式を中断しようと思う。
僕は気が進まないが、弟がこの調子では多少手荒にならざるを得ないだろう。
皆の者は速やかに外に出て待機せよ。
大臣に近衛兵、お前達も全員だ」
「……クレード様」
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