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  Ⅱ 愛しき人

 とってもネムネム

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 「おい、ネムネム」
「……うぅん。
ネムは眠いにゃ……寝かせろにゃ~……すぴー」

その鼻先に瓶の口を押し当て、ファランが小声で囁いた。

「どれだけ呑んでも無くならぬ極上の美酒があるのだが、呑んでみたくはないか?」

ネムネムの鼻がアルコールの臭いに反応し、ひくひくと動いた。

「美味いぞ、この酒は。
なにせ父上秘蔵の幻の銘酒『天園への誘い』だからな。
芳醇な薫りとコク深い味わい、切れがあり、かつまろやかで呑み始めたらもう止まらぬぞ?」
「……ハッ、しゃけ?」

ネムネムの瞳がパチリと開き、小瓶を持ったファランの腕に抱きつく。

「ファラン様ぁ。
それってどんなお酒かにゃあっ?!
甘いかにゃ?
それとも辛いかにゃ?
ネムはどっちも大好きにゃ~。
どうか一献お願いしますにゃ~‼」

ディガロから取り戻した盃を手に、ネムネムがファランに体を擦り付けた。

「こ、こらっ、よさぬか!
大きな胸が私の顔に当たっておるではないか。
それは嫌味か、嫌味のつもりなのかぁっ!」

全力で引き剥がそうとするファランだが、ネムネムの体を捉える事は出来ない。

「こっ、この酒は貴嬢にくれてやる。
ただし、不死竜を倒すと言う交換条件付きでな」

まさぐっていた手をとめ、ネムネムはキョトンとした顔でファランをじっと見た。

「さっき暴れてた、あの骨っこドラゴンにゃ?
かじってみたけど美味しくなかったにゃよ」
「口に入れるな、あんなものを」
「てっきり、お魚の骨かと思ったのにゃ」
「実は私の友人があいつの呪いを受け、生死の境をさ迷っておるのだ。
解呪には四体の不死竜を同時に倒すしか方法がない」
「むうぅ、難しい話は眠くなっちゃうのにゃ~。
それで、セッちゃんとディガろんは何をしてたのにゃ?」
「ディガろん、言うなッス。
俺達ももちろん戦ったよ。
でも、まるで歯が立たなくて……。
姉ちゃんの力が必要なんだ」

ネムネムはファランをじっと見つめ、次にディガロの顔を見て、パタリと横になった。

「寝るなぁっ!」
「一眠りしたくもなるにゃ~。
ディガろんはともかく、あのセッちゃんが居てどうしてそんな事になってるにゃあっ」

納得がいかないとばかりにネムネムは手足をばたつかせた。

「セツハとてよく奮闘してくれた。
結界術師として皆を守って-」
「みにゃを守って??
ファラン様はいったい、何を勘違いしてるのにゃ?」

ネムネムが意味深に口角を持ち上げた。

「私が、勘違い?」
「セッちゃんは守備要員なんかじゃないにゃ。
あの娘は結界術師とは名ばかりの、戦闘狂バトルマニアにゃよ」

ネムネムの口から驚きの事実が告げられた。

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