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第29話 苦言
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「エリス…!ヘイトを稼ぎすぎるぞ!」
俺が注意するも、エリスは聞く耳を持たない。
嬉々として全力攻撃を仕掛け、少しずつリザードキングのHPを削り取っている。
確かにその攻撃力は凄まじいものがあるが、いかんせん疾風騎士は防御もHPも高くはない。
万一クリティカルでももらったら、即死しかねない危うさがある。
「おい、嬢ちゃん!少しはリョウキの言うことを聞け」
小野寺さんも、エリスにターゲットが行かないよう必死で攻撃を仕掛けてくれている。
「あたしだって…アストと同じSSRなんだから…!」
攻撃を控えるどころか、何かに憑かれたように一層攻勢を強める。
先ほど鮮やかに敵を退けたアストへの対抗心に支配されているようだった。
「グギギ!」
リザードキングのヘイトをエリスが一身に集めることになり、大剣が唸りをあげて襲いかかる。
「当たるもんですか!」
素早い身のこなしでエリスが交わすが、リザードキングもその一撃で終わらない。
大剣とは思えぬ素早さで、当たったら確実に死にそうな斬撃を次々と繰り出してくる。
「くっ…!」
エリスもとうとう回避に専念せざるを得ないほど、まさに王の名にふさわしい怒涛の攻撃。
先ほどの連続攻撃に加え、激しい回避に専念し続けるエリスの顔に、はじめて憔悴の色が浮かぶ。
俺と小野寺さんも必死に攻撃を加えるが、エリスのヘイトを振り切るほどのダメージを与えるにはもう少し時間がかかりそうだ。
「エリス!もう少しだけ耐えてくれ!」
必死の思いで叫ぶ。
「うるさいわよぉっ!」
エリスが怒鳴り返しつつ、紙一重のところでジャンプしてリザードキングの剣を躱す。
ところが着地の瞬間、疲れと焦りのせいか、エリスの足元がほんの少しだけぐらついた。
「グギャア!」
その機を逃さず、リザードキングの大剣がエリスの頭上に振り下ろされようとするまさにその瞬間、
「見てらんないわ…小娘ちゃん。アナタちょっと下がってなさいな…ウィンドブラスト!」
アストがドスのきいた声で呟き、風属性魔法をエリスの背中にぶつけた。
味方判定なのでダメージはでないが、ノックバックが発生してエリスの細い体が軽々と吹き飛んだ。
「ちょ、ちょっとあんたなにすんのよ!」
吹っ飛びながらもエリスが悪態をつくと、先ほどまでエリスがいた地面のあたりに、リザードキングの大剣が深々と沈み込む。
「感謝してほしいもんだわ…」
アストが杖でびしっとエリスを指し、厳しい言葉を放つ。
「お子サマはそこでネンネしてなさいな…オトナの女性のあり方ってもんを教えたげるわ」
「あ…あんた男じゃないの!」
やれやれ、とアストは肩をすくめる。
「アンタねぇ…イイ女ってのは、体の問題じゃないの…心意気なのよ」
「…」
小野寺さんのマッチョな全身に鳥肌が立っていたけど、見なかったことにしよう。
「好きなオトコを振り向かせたいなら、意地張るだけじゃダメなの」
「な…!そんなんじゃ!」
顔を赤くしたエリスが絶句して剣を落とした。
「アタシがお手本見せてあげるわ」
そう言ってアストがリザードキングの前に立つ。
「あ、アスト…あまり無理はするなよ」
そう声をかける小野寺さんに、嫣然と微笑み返した。
「あら…心配してくれるなんて嬉しいじゃない」
「いや、その、一応…」
どもる小野寺さんに、アストが追い打ちをかけた。
「あら~アタシの身体の性別を知るまでは、もっと優しかったのにねぇ」
「ば、お前余計なことを…」
「小野寺さん…」
「リョウキ!そんな目で俺を見るな!!お前も男なら、わかるよな?!」
錯乱する小野寺さん…一体、アストとの間に何があったんだろう…。
とりあえず、男のよしみでそれ以上は深く突っ込まないことにする。
アストが杖に魔力を込めると、エメラルドグリーンの刃が周囲に顕現した。
まるで剣のようなそれを構え、柳のごとくしなやかな動きでリザードキングに切りかかる。
エリスのそれとは違い、決して深追いすることなく、また自らの限界を知っている冷静な動き。
「イイ女の戦いかた…見せてア・ゲ・ル」
「だから男だっての…」
小野寺さんの弱々しいつぶやきが聞こえたような気がした。
俺が注意するも、エリスは聞く耳を持たない。
嬉々として全力攻撃を仕掛け、少しずつリザードキングのHPを削り取っている。
確かにその攻撃力は凄まじいものがあるが、いかんせん疾風騎士は防御もHPも高くはない。
万一クリティカルでももらったら、即死しかねない危うさがある。
「おい、嬢ちゃん!少しはリョウキの言うことを聞け」
小野寺さんも、エリスにターゲットが行かないよう必死で攻撃を仕掛けてくれている。
「あたしだって…アストと同じSSRなんだから…!」
攻撃を控えるどころか、何かに憑かれたように一層攻勢を強める。
先ほど鮮やかに敵を退けたアストへの対抗心に支配されているようだった。
「グギギ!」
リザードキングのヘイトをエリスが一身に集めることになり、大剣が唸りをあげて襲いかかる。
「当たるもんですか!」
素早い身のこなしでエリスが交わすが、リザードキングもその一撃で終わらない。
大剣とは思えぬ素早さで、当たったら確実に死にそうな斬撃を次々と繰り出してくる。
「くっ…!」
エリスもとうとう回避に専念せざるを得ないほど、まさに王の名にふさわしい怒涛の攻撃。
先ほどの連続攻撃に加え、激しい回避に専念し続けるエリスの顔に、はじめて憔悴の色が浮かぶ。
俺と小野寺さんも必死に攻撃を加えるが、エリスのヘイトを振り切るほどのダメージを与えるにはもう少し時間がかかりそうだ。
「エリス!もう少しだけ耐えてくれ!」
必死の思いで叫ぶ。
「うるさいわよぉっ!」
エリスが怒鳴り返しつつ、紙一重のところでジャンプしてリザードキングの剣を躱す。
ところが着地の瞬間、疲れと焦りのせいか、エリスの足元がほんの少しだけぐらついた。
「グギャア!」
その機を逃さず、リザードキングの大剣がエリスの頭上に振り下ろされようとするまさにその瞬間、
「見てらんないわ…小娘ちゃん。アナタちょっと下がってなさいな…ウィンドブラスト!」
アストがドスのきいた声で呟き、風属性魔法をエリスの背中にぶつけた。
味方判定なのでダメージはでないが、ノックバックが発生してエリスの細い体が軽々と吹き飛んだ。
「ちょ、ちょっとあんたなにすんのよ!」
吹っ飛びながらもエリスが悪態をつくと、先ほどまでエリスがいた地面のあたりに、リザードキングの大剣が深々と沈み込む。
「感謝してほしいもんだわ…」
アストが杖でびしっとエリスを指し、厳しい言葉を放つ。
「お子サマはそこでネンネしてなさいな…オトナの女性のあり方ってもんを教えたげるわ」
「あ…あんた男じゃないの!」
やれやれ、とアストは肩をすくめる。
「アンタねぇ…イイ女ってのは、体の問題じゃないの…心意気なのよ」
「…」
小野寺さんのマッチョな全身に鳥肌が立っていたけど、見なかったことにしよう。
「好きなオトコを振り向かせたいなら、意地張るだけじゃダメなの」
「な…!そんなんじゃ!」
顔を赤くしたエリスが絶句して剣を落とした。
「アタシがお手本見せてあげるわ」
そう言ってアストがリザードキングの前に立つ。
「あ、アスト…あまり無理はするなよ」
そう声をかける小野寺さんに、嫣然と微笑み返した。
「あら…心配してくれるなんて嬉しいじゃない」
「いや、その、一応…」
どもる小野寺さんに、アストが追い打ちをかけた。
「あら~アタシの身体の性別を知るまでは、もっと優しかったのにねぇ」
「ば、お前余計なことを…」
「小野寺さん…」
「リョウキ!そんな目で俺を見るな!!お前も男なら、わかるよな?!」
錯乱する小野寺さん…一体、アストとの間に何があったんだろう…。
とりあえず、男のよしみでそれ以上は深く突っ込まないことにする。
アストが杖に魔力を込めると、エメラルドグリーンの刃が周囲に顕現した。
まるで剣のようなそれを構え、柳のごとくしなやかな動きでリザードキングに切りかかる。
エリスのそれとは違い、決して深追いすることなく、また自らの限界を知っている冷静な動き。
「イイ女の戦いかた…見せてア・ゲ・ル」
「だから男だっての…」
小野寺さんの弱々しいつぶやきが聞こえたような気がした。
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