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第三章 王国軍の改革
作戦会議です
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「ところで、アルバレスト自由軍の作戦会議、してもいいですか?」
「お、おう。突然だな」
「いいですね、そういうの!」
俺が切り出すと、おとなしかったカールが急に身を乗り出してきた。
気弱そうだが、意外と根は図太いのかもしれない。
「お前……急に元気になったな」
アントンが少し呆れたようにぼやくと、カールは心外だとばかりに上司に反論する。
「だって、やっとお天道様に顔向けできる任務ですよ。隊長だって王女様の誘拐なんて嫌だってぼやいてたじゃないすか」
「まぁ……それはそうだが」
「そうですよ!正義は我にあり、ってやつです」
「じゃあ、まずは目標を決めましょうか」
「先ほど少し話のあった、メルセデス王女を守り、ここエル・アジル王国を守ること、ではないのか?」
「はい、それはそうなんですが……それは大公殿下と王国軍の目標です。今決めたいのは、アルバレスト自由軍の目標ですね」
「同じではないと?」
「もちろん道のりが重なる部分も多いでしょう。でもまったく同じではないと思うんですよ」
「…むむ?そうなのか?」
「はい、大公殿下はいい方だと思いますが、エル・アジル王国の全てを掌握しているわけではありませんし、国王陛下の意思はまた違うかもしれません」
「なるほど……」
「メルを守り、エル・アジルを守る……その先にどうするか、どうしたいのか。まぁ、結論はもちろんメルがいないと出せないんですが、メルに話す前に俺たちの間である程度共有しておければと」
「確かに、そうだ。アルバレストの未来に関わることでもあるものな」
「俺は、メルセデス王女にアルバレスト王になってもらいたいです」
カールが目を輝かせて言う。
実に率直で、わかりやすい意見だ。
「しかし……王女様はあまり乗り気ではなかったな」
「そうですね……突然そんなことを言われても戸惑うでしょう。ただ、メルがアルバレストに戻った方がいいとは思います」
「それはなぜだ?」
「王位につかずに市井の民として生きるにしても、アルバレストという国、そしてそこに暮らす人々と向き合ってから決めた方がいいかなって」
「なるほど……判断するには早計だと」
王が背負う責任は、きっと俺の想像以上に大きい物だろう。
国の未来、民の行く末……大勢の人々に多大な影響を与えるようなことを、いっときの事情や感情に基づいて判断することが正しいとは思えない。
「メルは望んで王女になったわけじゃないと言ってました。それは確かにそうだ。でも、アルバレストの人間であることは変えられないし、彼女を慕う人たちがいることも確かでしょう」
「……確かに、大勢の民が王女の帰還を願っている」
「その事実と向き合わないまま判断して欲しくないな、と思ってます。俺なんかが偉そうにいうことじゃないってことは重々承知していますが」
「いや、サコン君の意見はもっともだと思う」
「……わたしも……そう思う」
「だから、まずはアルバレストに平穏を取り戻し、メルが戻れるようにすること。その上で、どうするか判断してもらうこと、が俺たちの当面の目標だと考えています」
俺の意見に、アントンもカールも頷いてくれた。
メルがどう思うかはまだ分からないが、戻ったら改めて話してみることにする。
が、俺にできることは、俺たちなりの考えを伝えることだけだ。
ああしろ、こうしろという意見を押し付けたいわけではない。
「お、おう。突然だな」
「いいですね、そういうの!」
俺が切り出すと、おとなしかったカールが急に身を乗り出してきた。
気弱そうだが、意外と根は図太いのかもしれない。
「お前……急に元気になったな」
アントンが少し呆れたようにぼやくと、カールは心外だとばかりに上司に反論する。
「だって、やっとお天道様に顔向けできる任務ですよ。隊長だって王女様の誘拐なんて嫌だってぼやいてたじゃないすか」
「まぁ……それはそうだが」
「そうですよ!正義は我にあり、ってやつです」
「じゃあ、まずは目標を決めましょうか」
「先ほど少し話のあった、メルセデス王女を守り、ここエル・アジル王国を守ること、ではないのか?」
「はい、それはそうなんですが……それは大公殿下と王国軍の目標です。今決めたいのは、アルバレスト自由軍の目標ですね」
「同じではないと?」
「もちろん道のりが重なる部分も多いでしょう。でもまったく同じではないと思うんですよ」
「…むむ?そうなのか?」
「はい、大公殿下はいい方だと思いますが、エル・アジル王国の全てを掌握しているわけではありませんし、国王陛下の意思はまた違うかもしれません」
「なるほど……」
「メルを守り、エル・アジルを守る……その先にどうするか、どうしたいのか。まぁ、結論はもちろんメルがいないと出せないんですが、メルに話す前に俺たちの間である程度共有しておければと」
「確かに、そうだ。アルバレストの未来に関わることでもあるものな」
「俺は、メルセデス王女にアルバレスト王になってもらいたいです」
カールが目を輝かせて言う。
実に率直で、わかりやすい意見だ。
「しかし……王女様はあまり乗り気ではなかったな」
「そうですね……突然そんなことを言われても戸惑うでしょう。ただ、メルがアルバレストに戻った方がいいとは思います」
「それはなぜだ?」
「王位につかずに市井の民として生きるにしても、アルバレストという国、そしてそこに暮らす人々と向き合ってから決めた方がいいかなって」
「なるほど……判断するには早計だと」
王が背負う責任は、きっと俺の想像以上に大きい物だろう。
国の未来、民の行く末……大勢の人々に多大な影響を与えるようなことを、いっときの事情や感情に基づいて判断することが正しいとは思えない。
「メルは望んで王女になったわけじゃないと言ってました。それは確かにそうだ。でも、アルバレストの人間であることは変えられないし、彼女を慕う人たちがいることも確かでしょう」
「……確かに、大勢の民が王女の帰還を願っている」
「その事実と向き合わないまま判断して欲しくないな、と思ってます。俺なんかが偉そうにいうことじゃないってことは重々承知していますが」
「いや、サコン君の意見はもっともだと思う」
「……わたしも……そう思う」
「だから、まずはアルバレストに平穏を取り戻し、メルが戻れるようにすること。その上で、どうするか判断してもらうこと、が俺たちの当面の目標だと考えています」
俺の意見に、アントンもカールも頷いてくれた。
メルがどう思うかはまだ分からないが、戻ったら改めて話してみることにする。
が、俺にできることは、俺たちなりの考えを伝えることだけだ。
ああしろ、こうしろという意見を押し付けたいわけではない。
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