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第三章 王国軍の改革

お友達です

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俺にコンサルティングのスキルはあっても、いわゆる天才ではないことは自覚している。
思いついたアイデアを、練り、叩き、考え抜き、少しずつブラッシュアップしていかねばならないのだ。
武器屋でも宿屋でも、一人で全てをやってきたわけではない。

ベースのアイデアこそ自分で出したものの、それをみんなとの議論や話し合い、そして実践を通してより良いものに昇華させてきたのだ。
軍の改革やその先の避けられないであろう戦争においても、きっとそのプロセスは変わらず必須だろうと思っている。
しかし、おそらく超多忙の大公殿下相手に議論を繰り返すことは難しいかもしれない。
となれば、もっと身近な存在としての相談相手がいてくれたら、これほどありがたいことはない。
ましてそれが、リーシャならば。

「……わかりました。リーシャ、お、俺と一緒に来てほしい。その……いろいろ、相談にのってくれると、た、助かる」

なんだか妙に緊張してしまい、つっかえつっかえになってしまった。

「……うん、任せて」

こくりと頷くリーシャの頬も、心なしかほんのりと染まっている気がした。
きっとリーシャも緊張しているんだな、と思うと少しほっとする。

「アレクさん……いいでしょうか?リーシャを危険な目に遭わせるかもしれません。もちろん、俺に出来る限りのことはします」

そう言ってアレクじいさんに頭をさげる。
じいさんは静かに微笑んでうなずいてくれた。

「リーシャの望んだことじゃ。わしが許すも許さんもない。戦争になればどこが安全かもわからんし、いっそ軍の中枢近くの方が安全かもしれんて」

「……ありがとうございます!」

こうして、突然ではあるがアルバレスト自由軍にはやくも4人目のメンバーが加わることになったのだった。
まぁ、そもそも成り立ちからして唐突すぎるからもうこうなると半ばなるようにしかならんな、という変な開き直りも生まれてはいるのだが。

もう少し武器店の懐かしみたくはあるが、別れを惜しむ時間はそれほどは残されていない。
慌ただしくアレクじいさんに暇を告げ、大公とリーシャと一緒に、足早に馬車へと戻る。
外では、ヴァルキリー隊にずらりと囲まれた壮麗な馬車を、市民たちが何事だろうと遠巻きに見守っていた。
更にその馬車の中でセルマやアントンに付き添われたメルが、リーシャの姿を見てはっと驚いたように目を見張る。

「リーシャ…さん?」

「……わたしも、仲間にはいった」

「な、仲間?」

「……わたしも……戦う…お手伝いします」

事態についていけずに目を白黒させているメルに、俺が補足説明する。
まぁ、驚くのも当然だよな。

「リーシャも、メルやこの国を守るために戦いたいと言ってくれたんだ。もちろん戦闘をお願いするわけじゃなくて、俺のコンサルティング活動を手伝ってもらうつもりだ」

「でも、大丈夫なの?」

「……大丈夫……わたし、結構……強い、です」

「そ、そうなんだ……。でも、リーシャさんが居てくれると心強いわ」

強い、というのはひょっとしてリーシャなりのギャグだったのかもしれないが、メルは突っ込まずに流すことにしたようだった。

「……よろしく……お願いします」

「敬語はやめてよ。これまでどおり普通に接してほしいの。できれば……お友達として」

「……わかった」
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