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第三章 王国軍の改革

軍を立て直すことになりそうです

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「では、保護していただけるのですね?」

「条件があるわ」

そう言ってフォルトゥナ大公は婉然と微笑んだ。
蕩けるような笑み、とはこういう表情を言うのだろう。
知らず、視線を奪われる。

「わたしの奴隷になりなさい」

「へ?」

「あ、誤解を招く言い方だったわね。わたしの配下となり、その力をわたしと我が軍のために役立てなさい」

誤解?
むしろ本音では?
と突っ込みたいところをぐっとこらえる。

「いや、急に言われましても……ミストラルもアレク武器店の再建も終わってませんし」

「いいこと?これから間違いなくアルバレストとの戦争になるわ。かの国は人心に乱れありといえど、ひとかどの軍事大国よ。一方の我が国はここ数十年は戦争らしい戦争をしていない」

「はぁ、そうなんですか」

「この子は、申し訳ないけれど確実に火種になる。サコン、あなたはこの国やこの子たちを守りたいのでしょう?」

「それはそう、ですが。俺の力が軍事や国防に役立つなんて自信が……」

「いいえ、わたしはあなたの働きを見たわ。市井の人々の噂にもなっている。あなたには間違いなく何かを変える力がある」

そう言ってフォルトゥナ大公が俺の目をじっと見つめる。
そこには先ほどまで湛えられていた微笑はもはやない。
一国の安全保障を預かる者としての真摯な表情が取って代わっていた。
ここまで見込まれたんじゃあ、ケツをまくって逃げ出すわけにもいかないな。

「……わかりました、メルが危険な目に遭ったのは、俺にも責任の一端があります。この国には恩義もある。俺で役に立てるなら、なんでもしましょう」

「武器店のことは安心なさい。我が軍はこれから戦力増強を図らなければならないのだから、武具の発注を回せるでしょう」

「そ、それは助かります」

「宿屋は…そうねぇ。軍で借り上げてしまいましょう。どのみち市中に防衛の指揮所が必要だと思っていたから」

「は、はぁ…そうですか」

なんのために改善してきたんだがよくわからなくなってしまったが、とりあえず俺の行動がお世話になった人たちへの恩返しに繋がるならいいか。

「これから成果を出そうというときに横槍を挟んで申し訳なく思うわ……でも、あなたの行動があればこそ、わたしも便宜を取り計らうのだし。やる気のないボロ宿だの潰れかけの武器屋だのなら、放っておくわよ」

どうやら俺の気持ちは見透かされていたようだ。
確かに、ようやく軌道に乗りかけてきたところで、さらに飛躍できるかどうか自分たちだけの腕を試したいという気持ちはある。
とはいえ、全てが自分の力だと思うのも傲慢だろう。
何はともあれ、自分の行動が少しずつ積み重なって、今の状況へと繋がってきたのは確かな事実だ。

「平和になったら、また一から自分たちで頑張りますよ」

「期待しているわ。わたしとしては、末長くわたしに尽くしてほしいのだけれど」

「えっ、あっ、はい?」

思わず声が裏返ってしまい、メルに冷たい目で睨まれる。
そんなメルにフォルトゥナ大公が声をかけた。

「まさかこんなところで再会するとはね、メルセデス王女。いえ、いまはメルでいいのかしら」

「ほんとうにお久しぶりでございます、フォルトゥナ大公殿下……いつぞやの舞踏会でお目にかかって以来ですね」

「舞踏会……そうね、先王陛下のお招きに預かって参上したときだったかしら」

「はい。アルバレストの貴族が、殿下の元に束になって求婚に訪れた様は、その後の語り草になっておりました」

「ふふ、懐かしいわ。あまりに軟弱すぎて束のまま刈り取られていった男たちね」

なんとなく、男たちがちぎっては投げられる様が脳裏に浮かんだが、あながち外れていないだろう。
この人の腕の確かさは、先ほど目の前でまざまざと見せつけられたからな。
そんじょそこらの貴族では眼鏡にかなうはずもない。
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