元銀行員の俺が異世界で経営コンサルタントに転職しました

きゅちゃん

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第三章 王国軍の改革

謎の美女に頼みましょう

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「ははっ…なんか嘘みたいだなぁ」

「わたしとしては、花売りも結構気に入っているのだけれど」

「ミストラルとしちゃあ花売りのメルでいてくれたらありがたいけどね……まぁ、そうも言ってらんないでしょ」

「やっぱり難しいかしら」

「この人たちからの連絡が途絶えれば、このエル・アジルが怪しまれる。そうなったら工作員も増員されて、すぐに見つかってしまうんじゃないかな……」

「我らから定時連絡を入れてもいいが」

「いや、あなた嘘つくのとか下手でしょ性格的に」

「うっ…」

「…バレそうね」

「バレそうだわ」

「バレますよ」

3人にばっさり切り捨てられ、精悍な男がガックリとうなだれた。
気弱そうな男が「隊長、元気出してください…」と慰めているがショックは大きいようだった。

「……他の人たちにも迷惑がかかってしまうわね」

「ま、そこで早速このお姉さんに頼ろうと思うわけだ」

そう言ってローブの美女に視線を向ける。
腕組みしながら様子を見ていた美女が、婉然と微笑み返してくる。

「あら、なにか?」

「メル……いや、メルセデス王女は」

「メルでいいわよ。今さら敬語も必要なくってよ」

「じゃ、遠慮なく。メルは、このお姉さんの正体を知ってるんじゃないか?」

「……たぶんね」

「正体だなんて。わたしは通りすがりの正義の名もなき美女よ?」

「そんなわけないでしょう。こんなに強くてカリスマ抜群の美女が世の中にそうそういちゃあ男は立つ瀬がないですよ」

「そんなに褒められると、照れるわね」

「……メルの命を助けて頂いたこと、ありがとうございます」

俺が礼を言うと、はっとしたようにメルも頭を下げた。
動転していてお礼を言うことを忘れていたらしい。

「まずは何をおいてもお礼申し上げるべきでした……申し訳ありません……本当にありがとうございました。このご恩、決して忘れません」

「礼ならサコンにいいなさいな。わたしは彼に興味があってたまたまミストラルに向かっていただけよ」

「サコンも、ありがとう。本当に嬉しかった」

「あ、いや、本当は俺がばしっと助けられればよかったんだけどね……あいにく武芸の腕はからっきしで」

「が、才智と弁舌はあるじゃない」

ローブの美女が口を開いた。
美人に褒められると悪い気はしないもんだ。
が、いまは話を本題に戻さねばならない。
これからメルの処遇をどうするか、だ。
相手は曲がりなりにも一国の王とその配下の軍勢だ。
成り上がりであったとしても、その権力は到底侮っていいものではない。
それゆえ今の俺や俺の知人たちの力でどうにかなるレベルの話ではないだろう。

「先ほども申し上げましたように、メルの身柄は危険に晒されています。……貴女の元で、保護してはいただけないでしょうか?」

そう言ってローブの美女にもう一度頭をさげる。
メルを預けるのに、これほど確かな人もいないだろう。
きっと、この国で誰よりも適任なはずだ。
美女は面白そうに俺の顔を見つめ返すが、まだ何も言わない。

「……この軍人たちの腕は確かでしょう。でも、二人で守りきれるとは思えません。メルの身に何かあれば、エル・アジルとアルバレストとの外交問題になりかねませんし」

「いざとなればアルバレストに差し出して両国の平和の証とする手もあるかもね?」

「いいえ、貴女がそのような政治的打算に走るとは思えません……フォルトゥナ大公殿下ともあろうお方が」

「あら、いつからバレてたの?」

「最初っからですよ……あんなに剣が強くて明らかに常人ではないオーラ出してたら子供だってわかりますよ」

「そんなに褒めても何も出ないわよ」

「いや、出してください。メルを保護してください。これも何かの縁です。お姫様同士きっと気もあいますよ」

「……見かけよりしっかりした男ね。まぁ、乗りかかった船だし、アルバレスト王ヴィスタとやらのやり方は気に入らないわ」
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