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第二章 宿屋の経営改善
大ピンチのようです
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精悍な男の全身から殺気が漲った。
どうしよう、勢いだけで呼び止めてしまったが、これ殺されるんじゃないか……
本能が逃げたほうがいいと告げている。
目の前の男たちは、少なくとも巡礼者というわけではなさそうだ。
明らかに戦闘訓練を受けており、コンサルティングスキルでどうにかなるような相手ではない。
こういう時、戦闘スキルがあればいいんだけど、あいにくアニメやライトノベルみたいに都合よくそういう力に目覚める気配もない。
とりあえず、今すぐ殺しにかかってくる気配はなさそうなので、頭をフル回転させて活路を見出すしかない!
そもそもなぜこいつらがメルを攫おうとしているのか……考えろ……考えろ……!
「……そうか!メルが、アルバレストの王女だったんだな」
「ご明察と褒めておこう。だが、転生者であるお前にとっては大して関係のないことだろう」
「メルが王女かどうかなんてどうでもいい。でも、ミストラルにとっては大事な業務提携先だ!」
「何をわけのわからんことを……」
「そ、そこは…大切な人だ…、ぐらい、いいな、さいよ…」
「メル…?!」
うっすらと目を開けたメルが、咳き込みながらも俺の言い草に抗議してくる。
よかった、命に別条はないみたいだ!
「もう目を覚まされたか……ご無礼はお許しいただきたい、メルセデス王女よ」
「確信犯の無礼者に…何を言っても無駄そうね」
メルって、メルセデスの略だったのか。
…などと妙なことを納得している場合じゃない!
このままではメルはさらわれてしまう。
さらわれたら、もう二度と会えないかもしれないし、ひょっとしたら殺されてしまってもおかしくない。
ここでなんとしても俺が食い止めなければ!
なんでもいい、とにかく少しでも男たちの気をひかなければ。
「お前たちはアルバレストの正規軍人なのか?!」
破れかぶれの質問が、思いのほか男たちの気をひき付けたようだった。
「そうだ。これは王命である」
精悍な男が無表情でそう言い放つ。
「王命ならどんなことでもやるのか?メルを誘拐することが正しい任務だと?」
「正しいかどうか判断するのは我らの役目ではない」
「本当にそうなのか…それでいいのか!?お前たちはただ手足でしかないと?」
「命じられた務めを果たすことこそ、我ら軍人の本分だ。余計なことを考える意味はない」
「例えそうだとしても……軍人である以前に、あなたたちもひとりの人間だろう!自分の行いが正しくないことぐらい、わかっているはずだ!」
「…知った風な口を聞くな、小僧」
「いいや、言わせてもらうぞ。王女が死んでいるかもしれないって話をしたとき、あなたたちは本当に心配そうだったじゃないか!」
そうなのだ。
王女が死んでいるかもしれない、という話題になったとき、男たちの目に浮かんだ感情は、決して冷たいものではなかった。
そして、今この瞬間もそうだ。
冷酷非情な人間なら、さっさと俺を始末して任務を達成するだろう。
でも、そうしないで俺の話につきあっている。
それはなぜか。
きっと迷いがあるからだ。
今は、そこに賭けるしかない。
「本当は疑問があるんじゃないのか?今の王に正義はないとわかっているんじゃないのか!」
「…言わせておけば!」
「いいえ、よく言ったわ青年。素敵じゃない」
突如として割って入ったのは、凛とした女の声。
気がつけば、俺のすぐ傍にローブの女が優雅に立っているではないか。
全然気配に気づかなかったぞ……。
どうしよう、勢いだけで呼び止めてしまったが、これ殺されるんじゃないか……
本能が逃げたほうがいいと告げている。
目の前の男たちは、少なくとも巡礼者というわけではなさそうだ。
明らかに戦闘訓練を受けており、コンサルティングスキルでどうにかなるような相手ではない。
こういう時、戦闘スキルがあればいいんだけど、あいにくアニメやライトノベルみたいに都合よくそういう力に目覚める気配もない。
とりあえず、今すぐ殺しにかかってくる気配はなさそうなので、頭をフル回転させて活路を見出すしかない!
そもそもなぜこいつらがメルを攫おうとしているのか……考えろ……考えろ……!
「……そうか!メルが、アルバレストの王女だったんだな」
「ご明察と褒めておこう。だが、転生者であるお前にとっては大して関係のないことだろう」
「メルが王女かどうかなんてどうでもいい。でも、ミストラルにとっては大事な業務提携先だ!」
「何をわけのわからんことを……」
「そ、そこは…大切な人だ…、ぐらい、いいな、さいよ…」
「メル…?!」
うっすらと目を開けたメルが、咳き込みながらも俺の言い草に抗議してくる。
よかった、命に別条はないみたいだ!
「もう目を覚まされたか……ご無礼はお許しいただきたい、メルセデス王女よ」
「確信犯の無礼者に…何を言っても無駄そうね」
メルって、メルセデスの略だったのか。
…などと妙なことを納得している場合じゃない!
このままではメルはさらわれてしまう。
さらわれたら、もう二度と会えないかもしれないし、ひょっとしたら殺されてしまってもおかしくない。
ここでなんとしても俺が食い止めなければ!
なんでもいい、とにかく少しでも男たちの気をひかなければ。
「お前たちはアルバレストの正規軍人なのか?!」
破れかぶれの質問が、思いのほか男たちの気をひき付けたようだった。
「そうだ。これは王命である」
精悍な男が無表情でそう言い放つ。
「王命ならどんなことでもやるのか?メルを誘拐することが正しい任務だと?」
「正しいかどうか判断するのは我らの役目ではない」
「本当にそうなのか…それでいいのか!?お前たちはただ手足でしかないと?」
「命じられた務めを果たすことこそ、我ら軍人の本分だ。余計なことを考える意味はない」
「例えそうだとしても……軍人である以前に、あなたたちもひとりの人間だろう!自分の行いが正しくないことぐらい、わかっているはずだ!」
「…知った風な口を聞くな、小僧」
「いいや、言わせてもらうぞ。王女が死んでいるかもしれないって話をしたとき、あなたたちは本当に心配そうだったじゃないか!」
そうなのだ。
王女が死んでいるかもしれない、という話題になったとき、男たちの目に浮かんだ感情は、決して冷たいものではなかった。
そして、今この瞬間もそうだ。
冷酷非情な人間なら、さっさと俺を始末して任務を達成するだろう。
でも、そうしないで俺の話につきあっている。
それはなぜか。
きっと迷いがあるからだ。
今は、そこに賭けるしかない。
「本当は疑問があるんじゃないのか?今の王に正義はないとわかっているんじゃないのか!」
「…言わせておけば!」
「いいえ、よく言ったわ青年。素敵じゃない」
突如として割って入ったのは、凛とした女の声。
気がつけば、俺のすぐ傍にローブの女が優雅に立っているではないか。
全然気配に気づかなかったぞ……。
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