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第二章 宿屋の経営改善
急展開です
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「なんなんだ?」
「さぁ?そんなに熱心な巡礼者ではない方々なのかしら」
どうも腑に落ちない感じだが、追いかけて問い詰めるほどのことでもないしなぁ。
強盗や悪人には見えないけれど、一応気をつけておくか……。
ま、何はともあれ花が売れたことはめでたい。
多少なりともメルの助けになればいいんだが。
「まだまだお客さんが少なくて、申し訳ない」
「正直、4本売れただけでもとても助かるわ。このところからっきしという日も多かったから…これからもっと増えると思うと、楽しみね」
「うお、さりげなくプレッシャーかけてくるなぁ……でもがんばるよ」
「ふふっ、期待してるわよ。でも今日のお客さんはこれ以上増えないわけだから、私はそろそろ帰るわね」
「良かったら送ろうか?」
「あら、私を送る暇があったら客を引いた方がよろしいのでは?」
「……はい、おっしゃるとおりデスネー」
ぐうの音も出ない正論だ。
ひらひらと手を振って優雅に去っていくメルの後姿に、ちょっとだけ見とれてしまう。
妙に気品があるというか、エレガントな物腰だよな……。
本当にただの花売りの女の子には思えないけど、あまり詮索するのも良くないだろう。
「ん……?なにか落ちてるぞ」
メルが去った後、床になにか白いものが落ちていることに気づく。
手にとってみれば、レースの縁取りがついた瀟洒なハンカチのようなものだった。
よくよく見ると、無地かと思えばそうではなく、凝った意匠の紋章が施されていてかなりの高級品っぽい。
そういえばもともとハンカチは貴族の持ち物で、古代エジプト時代ごろからあったと言われている。
現代日本では正方形のものがほとんどだが、これはかの有名なマリーアントワネットの鶴の一声で決まったらしい。
この時代でハンカチを持っているとなると、おそらくは貴族や王族といった身分のある人々だが…
身近なところだと、アレアかファサドだろうか?
でもさっきまでは落ちていなかった気がするし…そうなるとやはりメルの持ち物だろうか?
けれど、一介の花売りであるメルがこんなに豪勢なハンカチを持っているものだろうか。
「まぁ、とりあえず追っかけて聞いてみるか」
もう少しメルと話したいという気持ちがどこかにあったからかもしれない。
とりあえず、宿も落ち着いているのでメルの後を追いかけることにした。
まだそれほど離れたところにはいないだろうから、急げば追いつくだろう。
「少し出かけてきます、すぐ戻るので!」
受付のローグさんに一声かけると、小走りに街へと駆け出た。
王都は朝からそれなりに賑わっていて、商店に荷物を運ぶであろう荷馬車がそこここに行き交っている。
宿の前の大通りは見通しがいいから、すぐに見つかるだろう。
「えーと、メルはと…あれ?」
後姿が見えるかと思いきや、どこにも見当たらない。
「おかしいな…走って帰ったのかな?」
注意深くあたりを見回すと、見慣れた花かごが地面に転がっているのが目に入った。
「あれ…花かごまで落としてくなんて、そんなことあるか?」
きちんと束にされたマランカの花が入ったままだ。
これはおかしい。
慌てて花かごにかけより、そこから周囲を見回してみる。
「あれは…メル?!」
視線に入ったのは、どこか見覚えのある二人組の男たち。
ミストラルに泊まってくれた、精悍な男と気弱そうな男たちじゃないか。
精悍な男の腕には、ぐったりと気を失っているらしいメルが軽々と抱え込まれていた。
「メル…ッ!」
思わず叫ぶと、精悍な男が振り向き、ギロリと睨めつけてくる。
「……間の悪い男だ」
「おい、メルをどうするつもりだ!」
「悪いことは言わん。見逃してやるから、何も見なかったことにして去れ」
「…そうだ。そうすれば命までは取るまい」
「…はいそうですかって引っ込めるか」
「一宿一飯…まぁ、正確には一宿の例を返してやろうと思って言っているのだぞ?」
「さぁ?そんなに熱心な巡礼者ではない方々なのかしら」
どうも腑に落ちない感じだが、追いかけて問い詰めるほどのことでもないしなぁ。
強盗や悪人には見えないけれど、一応気をつけておくか……。
ま、何はともあれ花が売れたことはめでたい。
多少なりともメルの助けになればいいんだが。
「まだまだお客さんが少なくて、申し訳ない」
「正直、4本売れただけでもとても助かるわ。このところからっきしという日も多かったから…これからもっと増えると思うと、楽しみね」
「うお、さりげなくプレッシャーかけてくるなぁ……でもがんばるよ」
「ふふっ、期待してるわよ。でも今日のお客さんはこれ以上増えないわけだから、私はそろそろ帰るわね」
「良かったら送ろうか?」
「あら、私を送る暇があったら客を引いた方がよろしいのでは?」
「……はい、おっしゃるとおりデスネー」
ぐうの音も出ない正論だ。
ひらひらと手を振って優雅に去っていくメルの後姿に、ちょっとだけ見とれてしまう。
妙に気品があるというか、エレガントな物腰だよな……。
本当にただの花売りの女の子には思えないけど、あまり詮索するのも良くないだろう。
「ん……?なにか落ちてるぞ」
メルが去った後、床になにか白いものが落ちていることに気づく。
手にとってみれば、レースの縁取りがついた瀟洒なハンカチのようなものだった。
よくよく見ると、無地かと思えばそうではなく、凝った意匠の紋章が施されていてかなりの高級品っぽい。
そういえばもともとハンカチは貴族の持ち物で、古代エジプト時代ごろからあったと言われている。
現代日本では正方形のものがほとんどだが、これはかの有名なマリーアントワネットの鶴の一声で決まったらしい。
この時代でハンカチを持っているとなると、おそらくは貴族や王族といった身分のある人々だが…
身近なところだと、アレアかファサドだろうか?
でもさっきまでは落ちていなかった気がするし…そうなるとやはりメルの持ち物だろうか?
けれど、一介の花売りであるメルがこんなに豪勢なハンカチを持っているものだろうか。
「まぁ、とりあえず追っかけて聞いてみるか」
もう少しメルと話したいという気持ちがどこかにあったからかもしれない。
とりあえず、宿も落ち着いているのでメルの後を追いかけることにした。
まだそれほど離れたところにはいないだろうから、急げば追いつくだろう。
「少し出かけてきます、すぐ戻るので!」
受付のローグさんに一声かけると、小走りに街へと駆け出た。
王都は朝からそれなりに賑わっていて、商店に荷物を運ぶであろう荷馬車がそこここに行き交っている。
宿の前の大通りは見通しがいいから、すぐに見つかるだろう。
「えーと、メルはと…あれ?」
後姿が見えるかと思いきや、どこにも見当たらない。
「おかしいな…走って帰ったのかな?」
注意深くあたりを見回すと、見慣れた花かごが地面に転がっているのが目に入った。
「あれ…花かごまで落としてくなんて、そんなことあるか?」
きちんと束にされたマランカの花が入ったままだ。
これはおかしい。
慌てて花かごにかけより、そこから周囲を見回してみる。
「あれは…メル?!」
視線に入ったのは、どこか見覚えのある二人組の男たち。
ミストラルに泊まってくれた、精悍な男と気弱そうな男たちじゃないか。
精悍な男の腕には、ぐったりと気を失っているらしいメルが軽々と抱え込まれていた。
「メル…ッ!」
思わず叫ぶと、精悍な男が振り向き、ギロリと睨めつけてくる。
「……間の悪い男だ」
「おい、メルをどうするつもりだ!」
「悪いことは言わん。見逃してやるから、何も見なかったことにして去れ」
「…そうだ。そうすれば命までは取るまい」
「…はいそうですかって引っ込めるか」
「一宿一飯…まぁ、正確には一宿の例を返してやろうと思って言っているのだぞ?」
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