上 下
69 / 107
第二章 宿屋の経営改善

直接還元法とDCF法があります

しおりを挟む
となると、最後に出てくるその3「収益還元法」に期待をかけたいところである。
これは、売買の対象不動産が「将来どれぐらいの収益を生み出すか」を算出して考える手法だ。
ややこしいことに、これも更に2つの考え方に分かれている。

その3の1「直接還元法」
これは、不動産から発生する1年間の収益を、その不動産から得られることが妥当な投資利回り(還元利回り)で割り戻して不動産価格を算出する。
具体的に言うと、1年間で1,000万円の収益を上げる不動産があるとしよう。
この1,000万円という数字を、先ほど登場した「還元利回り」で割り算するとこの不動産の価格が出せるのだ。

ではこの「還元利回り」とは何か。
それは物件の価格に対して、どれぐらいの利回りを求めるか、という基準のことだ。
その物件の運営のしやすさ、安定性などを考慮して決めるのだが、リスクの高い物件ほど当然高く設定することになる。

例えばここにそれぞれ年間1,000万円の収益を上げるホテルとマンション、2つの物件があったとしよう。
どちらも同じ「還元利回り」を設定する、ということはまずない。
なぜなら「ホテル」の方が運営にノウハウが必要だし、季節要因や景気に大きく左右されるので収益が安定しないからである。
「マンション」であれば、よほどの田舎でもない限り一定の需要があるし、一度住み始めたらみんなそうそう引っ越さないので、ある程度安定した収入が上がる。
もちろん一概にはこのように言い切れない部分もあるが、一般論として「ホテル」の方が「マンション」よりもリスクの高い物件とされている。
それゆえ、例えば「ホテル」の還元利回りは7%に設定されるが、「マンション」の還元利回りは5%に設定される、ということになったりする。
これは「ホテル」を買ったなら、「マンション」よりリスクが高いので、より大きいリターンが欲しいということを意味している。
例えるならば、マジメな大企業勤めの熟年サラリーマンと、できたてのベンチャーを立ち上げた若者それぞれにお金を貸さなければならないなら、当然若者の方からより高い利息をもらうということだ。

そうなると、ホテルとマンション、それぞれの不動産価格は以下のようになる。

ホテル:1,000万÷7%=約1億4300万円
マンション:1,000万÷5%=2億円

つまり、同じ1,000万円を稼ぐ不動産でも、このように価格が変わってくるのである。
一見すると5000万円以上も安く買えるホテルがお買い得に見えるが、何度も言うがそれはリスクが違うからなのだ。
あえて言い切るならば、1,000万円が安定して入ってくる可能性は、「ホテルの方が低い」のであって、そのリスクを踏まえた価格になっているのである。
これが「直接還元法」の考え方だ。

その3の2「DCF法」
これは、不動産から上がる収益に加えて、将来の「売却価額」も加え、さらにその合計値を「現在価値」に換算するという手法だ。
例えば、先ほどのホテルを例に挙げると、まず収益は5年間で5,000万円稼ぐことになる。
さらに、5年後の売却価額を仮に5,000万円としてみよう。
とすると、このホテルは「収益5,000万円+売却価額5,000万円=5年後に1億円になる」価値を持っていることになる。
ここで注目したいのは、これはあくまでも「5年後」の話ということだ。

金融においては、5年後の1億円は、現在の1億円と等価、つまり同じ価値ではないと考える。
例えば、「今すぐ1億円もらえる」のと「5年後に1億円もらえる」権利のどちらかを選べと言われたら、迷わず今すぐもらうだろう。
今1億円をもらっておいて、銀行にあずけておけばよほどのことがない限り5年後には1億円以上になっているはずだ。
さらに、5年先の話となると、確実性が高いとは言えない。
天災が起きるかもしれないし、突然くれるといった人の気が変わるかもしれない。
ということは、「今1億円もらえる権利」の方が「5年後に1億円もらえる権利」の方が価値が高いということになる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星
ファンタジー
十年という年月が、彼の中から奪われた。 目覚めた少年、達志が目にしたのは、自分が今までに見たことのない世界。見知らぬ景色、人ならざる者……まるで、ファンタジーの中の異世界のような世界が、あった。 今流行りの『異世界召喚』!? そう予想するが、衝撃の真実が明かされる! なんと達志は十年もの間眠り続け、その間に世界は魔法ありきのファンタジー世界になっていた!? 非日常が日常となった世界で、現実を生きていくことに。 大人になった幼なじみ、新しい仲間、そして…… 十年もの時間が流れた世界で、世界に取り残された達志。しかし彼は、それでも動き出した時間を手に、己の足を進めていく。 エブリスタで投稿していたものを、中身を手直しして投稿しなおしていきます! エブリスタ、小説家になろう、ノベルピア、カクヨムでも、投稿してます!

異世界ハーレム漫遊記

けんもも
ファンタジー
ある日、突然異世界に紛れ込んだ主人公。 異世界の知識が何もないまま、最初に出会った、兎族の美少女と旅をし、成長しながら、異世界転移物のお約束、主人公のチート能力によって、これまたお約束の、ハーレム状態になりながら、転生した異世界の謎を解明していきます。

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします! 

実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。 冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、 なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。 「なーんーでーっ!」 落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。 ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。 ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。 ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。 セルフレイティングは念のため。

コレクターガールの憂鬱な日常

MOKO
SF
女子高生の立川遥香は、ある日 全宇宙指名手配中の凶悪宇宙人トレモロと 宇宙警察との争いに巻き込まれ 宇宙人トレモロに寄生され その日を境に遥香の日常生活は激変する。 妙な宇宙人に絡まれるわ 宇宙警察に目をつけられるわ 目立たず騒がず静かに背景と同化し 地味に過ごしまったり送るはずの 女子高生ライフが一変…。 トレモロの体を取り戻すし 健全な身体を取り戻すために 遥香は立ち上がる。 このお話は遥香とトレモロの非常識な日常です。

海岸でタコ助けたらスーパーヒーローになっていた。 ~正義の味方活動日記~

はらくろ
ファンタジー
時は二十一世紀。心優しい少年八重寺一八(やえでらかずや)は、潮だまりで難儀しているタコをみつけ、『きみたち、うちくる?』的に助けたわけだが、そのタコがなんと、異星人だったのだ。ひょんなことから異星人の眷属となり、強大な力を手に入れた一八、正義の味方になるべく頑張る、彼の成長をタコ星人の夫妻が見守る。青春ハートフルタコストーリー。 こちらの作品は、他のプラットフォームでも公開されています。

後宮の侍女、休職中に仇の家を焼く ~泣き虫れおなの絶叫昂国日誌~ 第二部

西川 旭
ファンタジー
埼玉生まれ、ガリ勉育ちの北原麗央那。 ひょんなことから見慣れぬ中華風の土地に放り出された彼女は、身を寄せていた邑を騎馬部族の暴徒に焼き尽くされ、復讐を決意する。 お金を貯め、知恵をつけるために後宮での仕事に就くも、その後宮も騎馬部族の襲撃を受けた。 なけなしの勇気を振り絞って賊徒の襲撃を跳ね返した麗央那だが、憎き首謀者の覇聖鳳には逃げられてしまう。 同じく邑の生き残りである軽螢、翔霏と三人で、今度こそは邑の仇を討ち果たすために、覇聖鳳たちが住んでいる草原へと旅立つのだが……? 中華風異世界転移ファンタジー、未だ終わらず。 広大な世界と深遠な精神の、果てしない旅の物語。 第一部↓ バイト先は後宮、胸に抱える目的は復讐 ~泣き虫れおなの絶叫昂国日誌・第一部~ https://www.alphapolis.co.jp/novel/195285185/437803662 の続きになります。 【登場人物】 北原麗央那(きたはら・れおな) 16歳女子。ガリ勉。 紺翔霏(こん・しょうひ)    武術が達者な女の子。 応軽螢(おう・けいけい)    楽天家の少年。 司午玄霧(しご・げんむ)    偉そうな軍人。 司午翠蝶(しご・すいちょう)  お転婆な貴妃。 環玉楊(かん・ぎょくよう)   国一番の美女と誉れ高い貴妃。琵琶と陶芸の名手。豪商の娘。 環椿珠(かん・ちんじゅ)    玉楊の腹違いの兄弟。 星荷(せいか)         天パ頭の小柄な僧侶。 巌力(がんりき)        筋肉な宦官。 銀月(ぎんげつ)        麻耶や巌力たちの上司の宦官。 除葛姜(じょかつ・きょう)   若白髪の軍師。 百憩(ひゃっけい)       都で学ぶ僧侶。 覇聖鳳(はせお)        騎馬部族の頭領。 邸瑠魅(てるみ)        覇聖鳳の妻。 緋瑠魅(ひるみ)        邸瑠魅の姉。 阿突羅(あつら)        戌族白髪部の首領。 突骨無(とごん)        阿突羅の末息子で星荷の甥。 斗羅畏(とらい)        阿突羅の孫。 ☆女性主人公が奮闘する作品ですが、特に男性向け女性向けということではありません。  若い読者のみなさんを元気付けたいと思って作り込んでいます。  感想、ご意見などあればお気軽にお寄せ下さい。

処理中です...