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第二章 宿屋の経営改善

親バカオヤジでした

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アレア父の眼光がひときわ鋭くなり、なんかまがまがしいオーラが身体を包み始めた気がする。
っていうか、これは何を言っても詰むじゃん…

「えーそれはそのぅ、不服などとは恐れ多いといいますか、まったくもって良きご友人でいさせて頂いておりまして…」

「なに?そうやって曖昧な態度ではぐらかし、いたいけな娘の心を弄んでいるのだな?」

どうすりゃいいんだよ…こんな娘大好きの変なオッサンだなんて予想していなかったぞ。
冷や汗が流れ、困り果てたところに突如救いの女神が舞い降りた。

「お父様、いい加減にしないと親子の縁を切るわよ?」

振り向くと、人を2、3人殺せそうな目つきで父親を睨んでいるアレアの姿があった。

「いやーゴホンゴホン、これはちょっとしたコミュニケーションというかだね、決して悪気があったわけではなく。な、サコンくん?」

アレア父の眼光が穏やかになったかと思うと、むしろ娘にペコペコしながら言い訳しはじめた。
な、って言われてもさっきまで本気でびびらされていた俺としてはなんとも言いようがない。
とは言え、娘にデレデレの様子を見ると結構いい人なのかもしれない…。
なんなんだろうこのギャップ。

「いくらなんでも悪ふざけが過ぎるわ…サコン、あんたもお行儀よく付き合ってんじゃないわよ!」

なぜか矛先がこちらに向き、俺も怒られることになってしまった。
理不尽や…。

「(ま、まぁ、わたしは別に、アンタがどうしてもというなら貰われてやってもいいっていうか…)」

 アレアがなんかボソボソ言ってるけどよく聞こえない。
 とりあえず本題に戻らなくては。
 
 「えー、その、改めまして、『ミストラル』の経営改善についてご助言頂けないかと思いまして」
 
 「その前に、私が名乗っていなかったな。アレアの父、ファサドという。娘と仲良くしてくれているようで、ありがとう」
 
 そう言ってたくましい腕を差し出してくる。
 え、かっこいいお父さんじゃん…最初からそういう感じで来てよ…。
 差し出された手を握ると、ファサドがニッと笑う。
 
 「いだああああああい?!」
 
 手が潰れるぐらいに強く握られ、思わず悲鳴を上げてしまった。
 めちゃめちゃ痛いっす…。
 
 「おっとすまんすまん、鍛えすぎたこの肉体が悪さをしてしまったようだ…つい握りすぎてしまってな」
 
 「絶対わざとですよね?」
 
 「そんなことはないぞ。娘につく悪い虫を捻り潰してやろうととか全然思ってないぞ」
 
 「悪い虫じゃないです…」
 
 「いい虫は死んだ虫だけだ」
 
 どこのインディアンだよ…とツッコミたくなるのをぐっとこらえ、再び話を本題に戻す努力をする。
 このおっさんにまともに付き合っていてはペースに巻き込まれるだけだ。
 何としても成果を引き出すためには、この手のタイプの人間に合わせてはいけない。
 
 「それでですね!ミストラルの経営改善のための投資が必要なんです。ぶっちゃけて言うと、お金を貸してくれるところを探しているんです」
 
 「ほぅ…具体的にどのような投資をするのかな?」
 
 ファサドの顔がビジネスマンのそれに変わり、値踏みするような視線になった。
 さすがは貴族にまでのし上がった豪商といったところか。
 話がビジネスのことになるとガラリと雰囲気が変わる。

ミストラルの現状と、巡礼客にターゲットを絞ること、花屋や神殿との提携、レストランのアウトソーシングなどについて簡単に説明する。
ファサドは時折深く頷きながらも、一言も口を挟まず最後まで真剣に聞いてくれた。
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