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第二章 宿屋の経営改善
ご挨拶するようです
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なぜかプンプンしながらアレアが飛び出して行くと、入れ替わりにまたすぅっとリンが現れた。
お茶を淹れてくれたようなのだが、もちろんそれだけが目的ではないのだろう。
その証拠にほら、もう顔がにやけている。
「もうお父様に紹介されるとは…外堀が埋まっていくね」
「だからなんの外堀だよ!」
「アレア様は一人娘だからな…お父上に悪い虫だと思われたら、この街では生きていけないぞ」
「わ、わるい虫じゃないし…」
「じゃあ、いい虫か?うん?まぁ、せいぜい言動に気をつけることだな…フフフ…」
さんざん好き放題脅しつけると、またさささっとどこかへ消えてしまった。
人を虫呼ばわりして、本当に難儀なメイドである…。
とは言え文句を言う暇も無く居なくなったので、残された俺は手持ち無沙汰だ。
せっかくなので出されたお茶を堪能しながら待つことしばし。
なんだかんだで、リンの淹れたお茶は美味いんだよなぁ。
などとついついお茶にほだされかけているうちに、ようやくアレアが戻ってきてくれた。
なぜか少し緊張した面持ちである。
「お父様が今会ってもいいって。よかったわね」
「い、今?急すぎて心の準備が…」
会わせてもらえるのはありがたいが、リンにへんに脅されたせいもあって緊張してしまう。
「べつにとって食われるわけじゃないんだし。ほら、男らしくしゃきんとしなさいよ!」
なぜか喝を入れられ、アレアの後ろからのこのことついていく。
相変わらず馬鹿でかいし、あちこちに高そうなものがさりげなく置いてあって緊張する。
まさに迷路のような豪邸とはこのことだ。
ひたすらアレアの背中にくっついきながら、どこをどう歩いたかわからないうちに、ひときわ重厚な扉の前に立っていた。
うーん、本物の「書斎」というのはこういうもんなんだろうなぁ。
何というか…実に開けづらい。
まず深呼吸して…
「もう、じれったいわね」
もじもじしている俺の横からアレアが割って入るや否や、ガンガンと激しくノックする。
「…鍵はかかっておらん。はいりなさい」
中から、渋い中年男性の声がする。
心なしか、冷たいトーンのような…?
ひょっとして、ご機嫌斜めなんでしょうか…嫌だなぁ。
「ほら、いったいった!」
背中をドンと押され、よろめくようにして部屋に入ると、目前には意外にもシンプルな内装が広がっていた。
広さこそあるが、余計な調度品などは一切なく、重厚な机が真ん中に置かれているのが目立つぐらいだ。
言うなれば、「質実剛健」を体現したかのような空間だった。
そして、机の向こうになぜか仁王立ちになって腕組みをする髭面の漢が一人…。
およそ商人らしからぬ、むしろ武人と見紛うばかりの見事な体躯の向こうから、鋭い眼光がこちらを睨めつけていた。
「あ、あの~…お父さん、でしょうか?」
「貴様にお父さん呼ばれる筋合はないッ!」
ドスの利いた声に一喝され、正直ちびりそうになったが、なんとか踏みとどまる。
「し、失礼…アレア…さんのお父さん、ですね」
とっさの機転で「さん付け」したのは我ながら上出来だった。
アレア、とうっかり呼び捨てにでもしようものなら間違いなく殺されるだろう。
そんな確信があった。
「そうだが、そういう貴様は何者だ?」
「サコンといいます。アレアさんにはいろいろこの世界のことを教えていただいていまして…」
「いろいろ?」
「え、はい…」
「いろいろとは?」
そこ突っ込むところかな?と思うが、迫力満点過ぎて何も言い返せない。
「そ、それはこの世界の慣習ですとか、武器のことですとか…」
「ほぅ、うちのアレアが手取り足取り教えていると!」
「いや、そんなことは誰も言ってないんですが…」
「それで思い余って娘さんをくれってか!?」
「はい…?っていやいやいや!違います違いますって!そういう話じゃないです!」
なんか勢いに飲まれて、今「はい」って言っちゃいけないところで言っちゃった気がするけど、まだ間に合うよな!?
「ほぅ、うちの娘では不服かね?」
お茶を淹れてくれたようなのだが、もちろんそれだけが目的ではないのだろう。
その証拠にほら、もう顔がにやけている。
「もうお父様に紹介されるとは…外堀が埋まっていくね」
「だからなんの外堀だよ!」
「アレア様は一人娘だからな…お父上に悪い虫だと思われたら、この街では生きていけないぞ」
「わ、わるい虫じゃないし…」
「じゃあ、いい虫か?うん?まぁ、せいぜい言動に気をつけることだな…フフフ…」
さんざん好き放題脅しつけると、またさささっとどこかへ消えてしまった。
人を虫呼ばわりして、本当に難儀なメイドである…。
とは言え文句を言う暇も無く居なくなったので、残された俺は手持ち無沙汰だ。
せっかくなので出されたお茶を堪能しながら待つことしばし。
なんだかんだで、リンの淹れたお茶は美味いんだよなぁ。
などとついついお茶にほだされかけているうちに、ようやくアレアが戻ってきてくれた。
なぜか少し緊張した面持ちである。
「お父様が今会ってもいいって。よかったわね」
「い、今?急すぎて心の準備が…」
会わせてもらえるのはありがたいが、リンにへんに脅されたせいもあって緊張してしまう。
「べつにとって食われるわけじゃないんだし。ほら、男らしくしゃきんとしなさいよ!」
なぜか喝を入れられ、アレアの後ろからのこのことついていく。
相変わらず馬鹿でかいし、あちこちに高そうなものがさりげなく置いてあって緊張する。
まさに迷路のような豪邸とはこのことだ。
ひたすらアレアの背中にくっついきながら、どこをどう歩いたかわからないうちに、ひときわ重厚な扉の前に立っていた。
うーん、本物の「書斎」というのはこういうもんなんだろうなぁ。
何というか…実に開けづらい。
まず深呼吸して…
「もう、じれったいわね」
もじもじしている俺の横からアレアが割って入るや否や、ガンガンと激しくノックする。
「…鍵はかかっておらん。はいりなさい」
中から、渋い中年男性の声がする。
心なしか、冷たいトーンのような…?
ひょっとして、ご機嫌斜めなんでしょうか…嫌だなぁ。
「ほら、いったいった!」
背中をドンと押され、よろめくようにして部屋に入ると、目前には意外にもシンプルな内装が広がっていた。
広さこそあるが、余計な調度品などは一切なく、重厚な机が真ん中に置かれているのが目立つぐらいだ。
言うなれば、「質実剛健」を体現したかのような空間だった。
そして、机の向こうになぜか仁王立ちになって腕組みをする髭面の漢が一人…。
およそ商人らしからぬ、むしろ武人と見紛うばかりの見事な体躯の向こうから、鋭い眼光がこちらを睨めつけていた。
「あ、あの~…お父さん、でしょうか?」
「貴様にお父さん呼ばれる筋合はないッ!」
ドスの利いた声に一喝され、正直ちびりそうになったが、なんとか踏みとどまる。
「し、失礼…アレア…さんのお父さん、ですね」
とっさの機転で「さん付け」したのは我ながら上出来だった。
アレア、とうっかり呼び捨てにでもしようものなら間違いなく殺されるだろう。
そんな確信があった。
「そうだが、そういう貴様は何者だ?」
「サコンといいます。アレアさんにはいろいろこの世界のことを教えていただいていまして…」
「いろいろ?」
「え、はい…」
「いろいろとは?」
そこ突っ込むところかな?と思うが、迫力満点過ぎて何も言い返せない。
「そ、それはこの世界の慣習ですとか、武器のことですとか…」
「ほぅ、うちのアレアが手取り足取り教えていると!」
「いや、そんなことは誰も言ってないんですが…」
「それで思い余って娘さんをくれってか!?」
「はい…?っていやいやいや!違います違いますって!そういう話じゃないです!」
なんか勢いに飲まれて、今「はい」って言っちゃいけないところで言っちゃった気がするけど、まだ間に合うよな!?
「ほぅ、うちの娘では不服かね?」
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